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» 2017年01月18日 11時00分 UPDATE

いまさら聞けないHILS入門(7):HILSとプラントモデル(その3) (1/4)

車載システムの開発に不可欠なものとなっているHILSについて解説する本連載。今回はエンジンの負荷となる発電機のプラントモデルを検討するとともに、これまで2回にわたって説明してきたエンジンのプラントモデルと組み合わせることを考えます。

[高尾英次郎,MONOist]

 前々回前回の2回にわたってエンジン側のプラントモデルを考えましたが、エンジンプラントモデルだけではECUをテストすることはできません。エンジンの負荷となる発電機のプラントモデルが必要です。両者を組み合わせてシステムを完結させることによってテストが可能となります。

発電機の仕様と機能

 ここまで発電機については細かく定義していませんでしたので、あらためてエンジンECUのテスト用HILSのプラントモデルの一部として、発電機の要件を考えてみます。発電機の仕様を表1にまとめました。

50Hz出力時 60Hz出力時
電圧(実効値) 100V 100V
周波数(単相交流) 50Hz 60Hz
回転数 3000rpm 3600rpm
発電機出力 10kW 10kW
表1 発電機の仕様(注:電圧は特に断らない限り実効値とします)

 発電機モデルを考える前提は、前々回の連載第5回の「図2 発電機システムのプラントモデルのイメージ」における発電機の機能です。

 同図は、エンジンに注目していたので、発電機部分を1つのブロックで簡単に表現していましたが、発電機部分に注目して詳細を追加すると図1のようなイメージとなります。

図1 図1 発電機部分の詳細プラントモデルイメージ(クリックで拡大)

発電機プラントモデルに求められる機能

 発電機は、モーターと同様に直流発電機、同期発電機、誘導発電機などいろいろな形式があります。形式ごとに、設計によりさらに多くの種類に分けられます。発電機の基本的な機能は、一定電圧、一定周波数で必要とされる電流をゼロから定格電流まで出力することです。発電機のECUをテストする場合には、電流制御に対応する動作を回転角1度単位で実現する必要があり、電気、磁気、力学に基づく詳細な物理モデルを適用し、容量成分や誘導成分を含む負荷に対して適切に動作する必要があります。

 一方、本HILSで必要とするのは、発電機を駆動するエンジンのECUをテストするためのプラントモデルです。その中で発電機のプラントモデルは、エンジンの機械的な負荷として、力学的な機能を満足すれば十分で、電気的、磁気的に厳密に作動する必要はありません。

図2 図2 発電機出力電圧(クリックで拡大)

 そこで本HILSでは、単純な抵抗を負荷とし、出力電流に応じてトルクを吸収する発電機プラントモデルを考えることにします。

  • 発電機は、機械的入力(動力)を電気出力(電力)に変換し、出力は、入力から機械的損失と電気的損失を減じた値となる
  • 機械的損失は、回転部の摩擦、回転に伴う空力抵抗などからなり、おおむね回転数の2乗に比例して増加する
  • 電気的損失は、ローターやステーターを流れる電流による損失で、おおむね発電機内部を流れる電流の2乗に比例する
  • 出力端子電圧は、回転数に比例して増加するものする。定格回転数の3000rpm、3600rpmでは、図1の破線部分に示す発電機側の制御により、自動的に100Vに制御されるものとする(図2参照)
  • 発電機回転数は、エンジンと一体で回転するのでエンジンECUにより制御される。50Hz時は3000rpm、60Hz時は3600rpmとする。
  • 発電機回転部分は、慣性モーメントを持つ
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