幅8mmの光学ユニットによるスライド式静脈認証技術を開発組み込み開発ニュース

富士通研究所は、幅8mmの光学ユニットによるスライド式静脈認証技術を世界で初めて開発した。小型化しながら従来の認証精度を維持しており、狭額縁化が進む小型モバイル端末のフレーム部に搭載できるようになった。

» 2017年01月27日 08時00分 公開
[MONOist]

 富士通研究所は2017年1月10日、幅8mmの光学ユニットによるスライド式静脈認証技術を世界で初めて開発したと発表した。認証には手のひらの静脈を用いる。同研究所では、2017年度中の実用化を目指し、引き続き光学ユニットと照合アルゴリズムの開発を進める。

 手のひら静脈認証の光学ユニットは、照明部と撮像部から構成される。今回、光の回析現象を応用した複合光学素子を開発し、1つのLED光源から均一の明るさで四角い領域を照らせるようになった。これによりLEDの個数を抑え、照明部と撮像部の配列を一列に見直すことで光学ユニットの幅を狭めることができた。

 認証の入力操作は、モバイル端末のタッチパネルに表示されるガイドに従って手をスライドさせる。スライド中に光学ユニットを通過する手のひらを連続で撮影し、同時に座標情報も記録する。座標情報から照合に適した画像を選択し、新たに開発したアルゴリズムで分割して読み取った静脈パターンを照合する仕組みだ。認証精度は他人受け入れ率が0.001%、本人拒否率は0.01%(リトライ1回)だった。

 これらの技術により、手のひら静脈認証の光学ユニット幅を8mmまで抑えた。また、小型化しつつも従来の認証精度を維持しており、狭額縁化が進む小型モバイル端末のフレーム部に搭載できるようになった。

 近年、モバイル端末の認証機能は、セキュリティと操作性の両方の向上が課題となっていた。しかし静脈認証技術で用いる光学ユニットは、手のひら全体に均一の明るさで光を照射するため、撮影部の周囲を取り囲むように照明部を配置する必要があり、それが小型化を妨げていた。また、撮影部を小型化すると手のひらの静脈パターンの読み取り範囲が狭くなり、登録時と照合時で読み取り範囲に大きなずれが生じ、認証されにくくなるという課題があった。

photo 試作した光学ユニット(左:写真枠内、右:原理図)
photo 操作方法および処理の流れ

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