「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

「CES 2017」は自動運転車と人工知能のユートピアだったCES 2017レポート(2/4 ページ)

» 2017年02月07日 11時00分 公開

自動運転車を制御するためのAI

 自動運転車とは切っても切れない、そして今後の自動運転車の方向性を左右する可能性さえあるものが自動運転車に搭載されるAIだ。自動運転領域において活用される「AI」は大きく分けて2つある。1つは、クルマの認知、判断、操作に関わるAI、そしてもう1つは、HMI(ヒューマン・マシン・インタフェース)としてのAIだ。

 クルマの認知、判断、操作に関わるAIについては粛々と研究開発が進められているが、実用レベルに達するまでにはまだ非常に長い道のりが必要となりそうだ。トヨタ自動車のプレスカンファレンス内でTRI(Toyota Research Institute)のギル・プラット(Gill A. Pratt)氏の発言が、その事実を如実に表している。

 プラット氏によれば、レベル5の完全自動運転とは、「どのような交通状態や天候であっても、場所や時間を選ばず完全に自動運転を実現する」というもので、達成までに「何年もの機械学習、何マイルものシミュレーションや実走行による試験が必要となる」として「自動車業界やIT業界のどの企業も、このレベルの真のレベル5達成までにはまだまだ長い道のりだ」と指摘する。

 2016年9月、米国運輸省の国家道路交通安全局(NHTSA)が、自動運転化レベルの定義を4段階から5段階に変えたことは記憶に新しい(米国自動車技術会(SAE)の定義を採用した)。その結果、完全自動運転車の定義も細分化されたことから、世間で「完全自動運転車」だと思われていたものの実現は遠のいたといえるかもしれない。

 一方で、5段階のうち4段階目にある「レベル4」は、レベル5とほぼ近しいことを「特定条件の限定エリア」のみで実現するものと定義されており、実用化までの道のりはレベル5と比較すると大幅に短縮されるとしている。前述のプラット氏によれば、このレベル4であれば、2020年の実現も可能ということだ。

トヨタ自動車のプレスカンファレンスに登壇したTRIのギル・プラット氏 トヨタ自動車のプレスカンファレンスに登壇したTRIのギル・プラット氏。5段階のうち4段階目にある「レベル4」は2020年の実現も可能だという

 ここのところ、自動運転シャトルバスが注目を集めているのも、レベル4を具現化するものだからといえるだろう。環境や渋滞への対策、高齢者や過疎地域における移動手段の確保といった社会的意義が期待できる自動運転シャトルバスは、世界各国で実証実験あるいは限定地域での商用利用が既に始まっている。

 CESに先駆けて開催された関係者限定のカンファレンス「GO-NV Summit」において、米国ローカルモーターズ(Local Motors)のCEOである、ジョン・ロジャース(John “Jay” Rogers)氏が登壇し、同社の自動運転シャトルバス「Olli」を2017年末までにラスベガスのダウンタウンやストリップ通り、大学のキャンパスなどで走行させる計画を明らかにした。

 ちなみにOlliの車体は3Dプリンタで作られており、車内にはIBMの人工知能である「Watson」が搭載され、接客や観光案内などを行ってくれるという。既にワシントンD.Cやドイツなどで6台が運行しているとのことだ。

 2017年のCESから設置された屋外施設「Gold Lot」は、駐車場を自動運転車の走行エリアにしたものだが、そこにもコミュニティーバスが披露されていた。フランスのナビア(Navya)が開発した自動運転シャトルバスだ。2015年にスイスのシオンで世界初の自動運転公共交通機関として運用を開始しており、現在ではフランスのリヨンやドバイなどでも走行している。今後はフランスの他の地域やカタールなどにも展開するということだ。

ナビアの自動運転シャトルバス「CES 2017」の展示 ナビアの自動運転シャトルバス(左)と「CES 2017」の展示(右)(クリックで拡大)

 ナビアのシャトルバスは、初めて通る道路については、エンジニアがジョイスティック形状のステアリングで手動運転をする必要があるが、2回目以降はルートを学習した車載AIが自動運転をするというものである。2017年3月には、この自動運転シャトルバスが2台日本に上陸するそうだが、提携先や実証実験場所などについては明かしてもらえなかった。3月のナビアの報道発表を楽しみにしたい。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.