モデル審査をしない史上初のETロボコン!? 新設の「ガレッジニア部門」とはETロボコン2017(2/3 ページ)

» 2017年02月24日 14時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

「作って動かす」以外は緩めのルール

 ガレッジニア部門のルールはかなりシンプルだ。センサー、アクチュエータをそれぞれ1つ以上使い、ソフトウェアで制御する。完成品の部品表を提出し、その総コストが10万円以内であればよい。試作に掛ったコストは含まない。

 ハードウェアについての条件も緩めだ。デベロッパー部門で使用している「LEGO MINDSTORMS EV3(EV3)」を使っても使わなくてもいい。EV3の価格は約5万2000円なので、EV3を使って残りの金額で他の部品を追加してもいいし、EV3を使わずに10万円分の部品を購入してもいいわけだ。

「ガレッジニア部門」のルール「LEGO MINDSTORMS EV3」を使っても使わなくてもいい 「ガレッジニア部門」のルール(左)。部品表を作ることと、10万円以内という制限がある程度だ。「LEGO MINDSTORMS EV3」を使っても使わなくてもいい(右)(クリックで拡大) 出典:ETロボコン実行委員会
技術先行型のイメージ問題解決型のイメージ 「ガレッジニア部門」の企画開発テーマ。2)の技術先行型(左)と、3)の問題解決型のイメージ(右)(クリックで拡大) 出典:ETロボコン実行委員会

 企画開発テーマは1)自由、2)技術先行型(面白いと思って作ったもの、ネタありき)、3)問題解決型(困っている人を助けるモノ、システム)の3種類。「テクノロジーをベースに『オモシロイ』『スゴイ』『考えさせる』『ナルホド』『使ってみたい』『ワクワクするもの』を作ってほしい」(小林氏)という。

 審査方法もデベロッパー部門と異なる。応募作品に関するアピールシートと部品表、応募作品の動きを見せる動画から、外部審査員と一般審査員が審査を行う。デベロッパー部門のように地区大会は行わない。優秀作品は、チャンピオンシップ大会の会場で作品の企画のプレゼンテーションと、実際に動かしてのデモンストレーションを行い、特別審査員による審査で最優秀賞を決定する。

「ガレッジニア部門の審査方法 「ガレッジニア部門の審査方法(クリックで拡大) 出典:ETロボコン実行委員会

 つまり、ガレッジニア部門では、デベロッパー部門で必ず行うモデル審査を行わない。「ETロボコン史上初、モデル審査の対象外の部門」(小林氏)になる。

 なお、ガレッジニア部門への参加でも、デベロッパー部門と同様に技術教育を受けられる。動画審査の前には、デベロッパー部門の地区大会会場でデモンストレーションを試して、審査員からのアドバイスを得られる機会も用意するという。

 さらにガレッジニア部門の参加費は、デベロッパー部門の半額になっている。大学2年生以下であれば、税込み1万800円で参加できる上に、5400円かかる技術教育1人分の費用も含まれている。小林氏は「この機会にぜひガレッジニア部門に参加してほしい」と意気込む。参加チーム数の目標は「デベロッパーズ部門350に対して、ガレッジニア部門は30〜50」(同氏)とした。

「くやしいことだが日本のエンジニアにビジネスを作るのは無理」

 ガレッジニア部門は、2016年まであった「イノベーター部門」や「アーキテクト部門」に替わるものだ。モデル審査をなくすなど大幅に変更を加えた背景には、イノベーター部門の参加チームが9チームと大幅に減少した事実がある。小林氏によれば「どの領域の育成を目的としているかが分かりにくく、テーマ選定も難しい。作るものが大掛かりになりがちでもあった」という理由があったようだ。

2016年の「イノベーター部門」参加チーム減少の原因分析 2016年の「イノベーター部門」参加チーム減少の原因分析(クリックで拡大) 出典:ETロボコン実行委員会
ETロボコン実行委員会の星光行氏 ETロボコン実行委員会の星光行氏

 ETロボコン実行委員会 本部実行委員長の星光行氏は「走行コースをいかに早く走るか、ゲームをどうやってクリアするかなど、課題解決型のデベロッパーズ部門は着実に成果が出ている。だがこれだけで新しいものを作れるのか。そこで、エンジニアからビジネスを創出してほしいという意図をもって設けたのが、イノベーター部門であり、アーキテクト部門だった。しかし参加チームがどんどん減る現状を鑑みると、くやしいことだが日本のエンジニアにビジネスを作るのは無理なのかもしれない。そこで、ビジネスうんぬんはいいから作りたいものを作ってもらおう、というのがガレッジニア部門を設けた理由だ」と述べている。

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