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» 2017年03月08日 13時00分 UPDATE

デジタルモノづくり:重要なのは3Dプリンタよりシミュレーション、アシックスが語るデジタルモノづくり (1/2)

2017年2月15〜16日に開催された「Manufacturing Japan Summit」では、アシックス 執行役員 スポーツ工学研究 所長・フェローの西脇剛史氏が登壇。「人に優しいものづくり・ことづくりを目指して」をテーマに講演した。

[長町基,MONOist]

 日本の製造業の設計・開発、製造・生産技術担当役員、部門長らが参加した「Manufacturing Japan Summit(主催:マーカスエバンズ)」が2017年2月15〜16日、東京都内で開催された。その講演でアシックス 執行役員 スポーツ工学研究 所長・フェローの西脇剛史氏が登壇。「人に優しいものづくり・ことづくりを目指して」をテーマに、シューズにも広がるデジタルモノづくりの可能性とコトづくりについて語った。

ランニングシューズに求められる8つの機能

 アシックスは兵庫県神戸市中央区に本社を置く、大手スポーツ用品メーカー。従業員数(連結)は約7800人で2016年12月期の売上高は3991億円となっている。この日プレゼンテーションを実施した西脇氏はスポーツ工学研究所に所属し、モノづくりのコンセプトの立案などを担当している。

 西脇氏によると「さまざまな製品を設計する上で考えておく必要があるのは『使用者を障害から守ること』と『使用者のパフォーマンスを最大化させること』だ」という。しかし、この2つは相反する関係にあり、どちらを優先させるか、モノを作る上で重要なポイントとなる。今回のプレゼンテーションではシューズを取り上げて、この相反する条件をクリアして利用者が満足できる製品作りについての取り組みを披露した。

 競技シューズはランニングからサッカー、野球などさまざまなものがあるが、その中でも最も売り上げが大きいのがランニングシューズだ。そのランニングシューズには求められている機能が大きく8つある。それは「屈曲性」「軽量性」「緩衝性」「安定性」「通気性」「グリップ性」「フィット性」「耐久性」である。これらを定量的に評価する手法を確立しているところにアシックスの大きな強みがあるという。

photo アシックスのランニングシューズ「GT−2000 NEW YORK 5」 出典:アシックス

人にやさしいモノづくり

 シューズの製品設計を行う中で重要になるのが、ランニング時の足の挙動である。体重心軌跡(ガイダンスライン)と地面反力を見ると、ランニング時には片足に体重の3〜4倍の力がかかってくる。この力によりかかとが内側に倒れこむが「これを制御するのがシューズの役割となる」(西脇氏)。

photo アシックス 執行役員 スポーツ工学研究 所長・フェローの西脇剛史氏

 例えば、倒れこみの角度(接地タイプ)は個人差がある。アシックスでは、大きく倒れこむタイプは「オーヴァープロネーター」、普通のタイプを「プロネーター」ほとんど倒れこまないタイプを「アンダープロネーター」と3つに分けて展開しており「こうしたタイプ別の提案が本来必要である」と西脇氏は述べている。

 こうした背景のもとで、同社では人にやさしいモノづくりを進めている。その中で「私自身が最初に取り組んだのは最適化設計だ。相反する複数の要求機能を同時に満足させつつ、安全性を追求した形状に行き着いた」(西脇氏)。この設計フィロソフィー(IGS)で生産したシューズには、IGSのロゴマークを搭載しているという。

 この他、材料面ではソールには自社材料だけを使用。繊維で強化したフォーム材を用いて最軽量ミッドソールも開発している。また、素材についてもサトウキビやトウゴマを用いたバイオベース材料の開発も進めている。さらに、世界各地の店舗で足を測定するサービスを行っており、それらを商品作りに反映する取り組みも進める。環境配慮型生産も推進。従来は分けて組み立てていたミッドソールとアウターソールを一体化できるような材料開発を現在進めているという。

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