IoT時代にどう立ち向かうか、自動検査の位置付けを変えたマインドセット検査自動化(1/2 ページ)

「検査装置は不具合を見つける装置ではなく、不具合を出さないためのものだ」――。基板実装ラインなどで使われる外観検査装置で好調を続けるサキコーポーレーションだが、成功の土台には「マインドセット」の取り方にあったという。サキコーポレーション社長の秋山咲恵氏の講演の内容をお届けする。

» 2017年03月23日 13時00分 公開
[長町基MONOist]

 調査会社のガートナー ジャパンは2017年3月16、17の両日、東京都内で「ガートナー エンタープライズ・アプリケーション戦略&アプリケーション・アーキテクチャ サミット2017」を開催。同サミット初日の基調講演には検査装置メーカー、サキコーポレーション社長の秋山咲恵氏が「デジタルビジネスを勝ち抜くためのマインドセット〜ものづくりにおけるグローバル競争の最前線で今起きる事〜」をテーマに登壇。秋山氏自身がこれまでのビジネスでの経験を踏まえたマインドセット(ものの見方。物事を判断したり行動したりする際に基準とする考え方)の重要性について紹介した。

2次元自動外観検査装置を開発

 サキコーポレーション(東京都品川区)は、1994年に創業したプリント基板実装工程向けのインライン自動外観検査装置メーカー。「新しい価値の創造への挑戦」という経営理念のもと、マシンビジョン技術を用いた電子部品実装工程向け自動外観検査装置の分野においてグローバル市場で実績を伸ばしている。

 プリント基板に搭載される電子部品や半導体を支える技術の進化は著しい。勝ち組企業は移り変わり、モノづくりもグローバル化が進むなど取り巻く環境が大きく変化している。さらに、ICT(情報通信技術)も近年、生産現場に浸透してきている。

 こうした業界内の激しい動きの中で、同社はまず2次元自動外観検査装置を開発した。2次元自動外観検査装置はデジタルカメラで検査したいものを撮影し、その画像をソフトウェアで解析するという仕組みだ。解析によってプリント基板のはんだ付けの状態が適切であるか、搭載されている部品が正確に取り付けられているかを、検査生産ラインの中でリアルタイムに判定・検査をする。こうした製品を自社開発してマーケットに投入し、各国の有力メーカーとの競争に挑んでいる。

photo サキコーポレーションの外観検査装置と検査結果の表示例

 電気製品には必ずプリント基板を実装した電子モジュールが搭載されている。同社の装置を活用する製品にはコンシューマー製品のように安価で大量に生産するものから、サーバや産業機械、医療装置、自動車、さらに航空機器、人工衛星などもある。それらの製品ではプリント基板のたった1つの不具合が、人命にもかかわることもあり得る。そのため高い品質基準が要求される。検査装置に求められる性能も多様であり、低価格で使いやすいものから高額だが高い性能を要求されるケースなどもある。

 こうした顧客の多様化した要求に対応し、サキコーポレーションでも新技術を搭載した製品を同社も投入してきた。2次元から、さらに精密で正確な検査を行うため3次元自動外観検査装置や3次元X線自動検査装置へと時代は移り変わっている。

 同社製品が導入されている生産現場でも電子部品の実装プロセスの生産性向上が図られてきた。ラインは自動化され、ロボットが多数稼働している。しかし、生産現場では、装置を微妙に調節する人間の手も必要である。こうした業務はベテランで、高いスキルや品質意識をもつ従業員が担当するケースが多い。

 しかし、これが海外の生産現場となると、同じ役目を担う従業員が頻繁に入れ替わり、経験を積むことができない。そのため、海外では分かりやすく簡単に操作できる装置が求められる。一方で、欧米の工場では、検査技術を理論的に100%正確であるかなどの裏付けを要求されることもある。秋山氏は「こうした多様な要求に対応して、業界内で生き残るには、常に新しいチャレンジをしていくという気持ちを持つ続けることが必要だ」と述べる。

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