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» 2017年03月29日 10時00分 UPDATE

ママさん設計者とやさしく学ぶ「機械材料の基本と試作」(1):ヒトと同じで個性それぞれ、材料だって適材適所! (1/2)

ママさん設計者と一緒に、設計実務でよく用いられる機械材料の基本と、試作の際に押さえておきたい選定ポイントと注意点を学んでいきましょう。今回は「試作とは何か」から話を始めつつ、いろいろな機械材料があることを紹介していきます。

[藤崎 淳子/Materiai工房テクノフレキス,MONOist]

 皆さん、こんにちは! Material工房・テクノフレキスの藤崎です。これまで「ママさん設計者」としてさまざまなテーマで記事を書いてまいりましたが、今回は、「試作に必要な材料知識の基本を学ぼう」というテーマで書かせていただくことになりました。

 「材料知識!? それってナントカ学とかナントカ理論とか、難しい話?」だなんて身構えないでくださいね。ナントカ学とかナントカ理論というやつは、学ぼうとする意欲さえあれば、知識を深めるために後からいくらでも補完すればいいのです。

 大事なのは、「私はこういう理由でこの材料を選びました」という、根拠を明確にするセンスを身に付けることなのです。最初から特定の材料について深く掘り下げて、ムダに頭を痛める必要は全くありません。

 本連載では、機械材料ごとの性質を知り材料と仲良しになり、根拠を持った材料選定ができるようになることを目標に、いつものように“やさしく”お勉強していこうと思います。

試作にはどんな意味があるの?

 まず、「試作」にはどんな意味があるのかを考えてみましょう。

 思い浮かんだイメージが実際の製品になって消費者の手に渡るまでには、その過程で出てくる障害や危険性などの改善項目を一つ一つつぶして、量産品質の向上につなぐ作業が必要です。これが試作の役目です。

 そして試作にもいくつかの段階があって、材料のことはあんまり考えなくていい試作と、根拠のある材料選びが必要な試作があります。

試作のいろいろ

 前者は「機能試作」といって、イメージを形にする第一歩として主に「目的の機能を果たせるか」の確認をするための試作です。だからカッコイイとかカッコ悪いなどというのは二の次で、「想定通りに動作して機能を果たせるか」を確かめられればいいんです。もし一回の機能試作で思ったような効果が確認できなければ、部品を手直ししたり追加で用意する必要が出てきます。そのため機能試作という作業は、ありあわせの材料でとにかく低コストに作る工夫が必要です。

 機能試作と並んで、「デザイン試作」も行われます。

 この試作では主に、考えたデザインの中に必要な機能がもれなく収まるかどうかを確認します。基本的には機能試作と同じようにありあわせの材料でも構わないのですが、デザインした部品の材質が製品の効果を左右するような場合は、デザイン試作の段階から製品の目的に合わせた材質を検討して選択することもあります。

 後者の、根拠ある材料選びが必要な試作が、俗に「量産試作」と呼ばれるものです。

 この段階では、製品そのものや各部品の耐久性のテストをも行う都合上、最終製品を意識した本格的な部品を製作するために材料選定の根拠が必要なのです。「量産試作」と聞いたらちょっとだけ不安を覚えるかもしれませんが、大丈夫です。

 見栄えの良い外観と、安全性と高品質のトータルバランスを追求するのが量産試作なので、初回で設計通りの効果が出てもそれ以外の要素に納得がいかなければ何度も試作を繰り返します。だからこの試作はやたらと時間がかかります。その中でコストダウンや耐久性向上、軽量化などを理由にした材質変更もよくある話ですから、そんなときにパパっと機転が効く程度に機械材料の基本をつかんでおきましょう。

機械材料のいろいろ

 試作と材料選定の関係性は、大体お分かりいただけたでしょうか。それでは続いて機械材料のお話に入りましょう。

 ひとくちに「機械材料」と言っても金属、非金属ともろもろあります。金属も大きく分けて「鉄鋼」と「非鉄金属」がありますし、その鉄鋼も非鉄金属も一種類どころではありません。金属以外の材料でよく知られるものでは、「プラスチック」「セラミックス」を筆頭に「ガラス」や「ゴム」なんかもあります。もっと言うと「木材」「石」「土」だって材料ですから、これらを頭に入れるために「どれだけ勉強すればいいのか!」って話ですよね。

 どうして世の中にこうもたくさんの材料が存在するのでしょう。それは、文明の進化に連れて、モノを作る時に必要な材料が1つや2つでは用が足りなくなって、材料も一緒に進化してきたからです。

 鉄鋼を例にとっても、まず炭素鋼、合金鋼、鋳鉄に大きく分けられて、そこからさらに細かく品種が分かれます。炭素鋼とはその名の通り、成分に炭素が混じった鉄鋼です。その炭素の量が増えたり減ったりすることで材料の性質が変わるので、メーカーではJISの規定に基づいて炭素量が少しずつ違う鉄鋼を作って在庫しているのです。こうしておくことで「この部品にはやわらかめの鉄を使いたい」とか「ここは硬い鉄を使いたい」という個別の要求に合った材料が調達できるわけです。

 ちなみに「炭素量が多い品種ほど硬くて強い」ので、鉄鋼のイメージの1つとして頭に入れておいてくださいね。

 鉄鋼に限らずどの材料にもこうした「特性」というものがあって、その特性のために仕事に向き不向きがあります。つまりさっきの「この部品にはやわらかめの鉄を使いたい」とか「ここは硬い鉄を使いたい」のくだりですね。

 材料の特性とは、人間でいう「性格」や「体質」と同じものと考えてください。

 例えば、イケメンなのに実は超絶な人見知りで口下手な人に「あなたイケメンだから今日からホールで接客係やってください。明るく元気に笑顔でね!」と言ったら、恐れをなして速攻で逃げてしまうかもしれません。

 仕事だけではなく、加工方法にも向き不向きがあります。陽に当たるとすぐ焼けて水ぶくれしてしまう体質の人を、長時間直射日光にさらしておいたら大変なことになりますよね。

 材料には流通している形状に制限があったりして、例えばブロック状の部品を作りたいのに使いたい材料が棒状でしか手に入らないといったことがあります。そういうときには、似たような性格・性質を持つ板状の材料を探し直すか、加工方法を工夫して棒状の材料からブロック状の部品を削り出すといった工夫をすることになります。

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