特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
連載
» 2017年03月31日 11時00分 UPDATE

IoT観測所(31):古くて新しい「LTE Cat.1」が「NB-IoT」と「Cat.M1」の穴を埋める (1/2)

3GPPが策定する、IoT(モノのインターネット)向けLTE関連規格の1つに「LTE Cat.1」がある。2008年に仕様が確定した古い規格ではあるが、「NB-IoT」こと「LTE Cat.NB1」や「LTE Cat.M1」ではカバーできないような用途に適している。

[大原雄介,MONOist]

 前回はちょっと飛び入りで「Amazon Alexa」をご紹介したが、今回は元に戻してIoT(モノのインターネット)向けのLTE関連規格でもう1つ「LTE Cat.1(以下、Cat.1)」について説明したい。

 Cat.1は、正式には「LTE Use Equipment 1」という名称で制定された仕様である。実はこのCat.1は、3GPP Release 8の中で仕様が策定されており、仕様がフリーズされたのは2008年のことである。要するに、随分古い規格な訳だ。

 もっとも、このRelease 8と続くRelease 9でほぼLTEの規格をカバーした形であり、その意味ではちょうど現在主流の規格が網羅されているというべきなので、その意味では必ずしも古いとはいえないのだが。

 さて、そのRelease 8で策定されたCat.1はどんな仕様かというと、言ってみればLTEの中で一番シンプルな構成となる。ラフではあるが、表1がRelease 8/9で定められたCat.1〜Cat.5の仕様の違いをまとめたものだ。利用する帯域は18MHzで全く同じ。変調方式は、Cat.5のみUplink/Downlink共にQSPK/16QAM/64QAMだが、その他は全てUplinkがQSPK/16QAM、DownlinkがQSPK/16QAM/64QAMになっている。

LTEカテゴリー 周波数帯域 変調方式 L2バッファーサイズ MIMO Downlinkのピーク性能 Uplinkのピーク性能
1 18MHz Uplink:QPSK/16QAM、Downlink:QPSK/16QAM/64QAM 150KB なし 10Mbps 5Mbps
2 700KB 2×2 50Mbps 25Mbps
3 1400KB 100Mbps 50Mbps
4 1900KB 150Mbps 50Mbps
5 QPSK/16QAM/64QAM 3500KB 4×4 300Mbps 75Mbps
表1 3GPP Release 8/9で定められたLTE Cat.1〜Cat.5の仕様比較

 Layer-2の総バッファーサイズは、転送速度の違いを反映してCat.1が一番少ない150KB、逆にCat.5では3.5MBにも達しているが、これはまぁ仕方ないところだろう。MIMOは、Cat.1はサポートなし。Cat.2〜Cat.4は2×2が必須、Cat.5は4×4が必須になっている。こうした構成の違いもあり、転送速度に関してはCat.1がピークで10M/5Mbpsと一番遅く、Cat.5の300M/75Mbpsには遠く及ばない程度でしかない。

 こうした性能の低さもあってか、例えば国内で最初にLTEのサービスを「Xi(クロッシ)」という名称で開始したNTTドコモはLTE Cat.3をベースにしており、Cat.1/Cat.2はスルーされた形だ。これに先んじて、3GGP Release 7までで策定されたHSPA+をベースとしたサービスが既に国内で展開されていたから、いまさらCat.1のサービスを始めても性能面でのメリットは無い、という判断だったのだろう。

 さて、コンシューマー向けのサービス、特にスマートフォンを利用してのインターネットブラウジングとか、動画/音楽/その他コンテンツの配信とかにとって、10Mbpsという転送速度はかなり低めである。10Mbpsはあくまでピーク性能だから、実効性能はもう少し落ちる(条件が良くても5M〜6Mbps程度)だろう。この程度では、リッチなコンテンツの利用はかなり難しい。

 ただし3GPPのメンバー企業は、最初からCat.1をユーザー向けというよりはM2M(Machine to Machine)向けを考慮していた節がある。要するにCat.3以上が普及すれば、基地局はそのまま改変しないままでCat.1が利用できるし、モデムの価格も量産効果によって値段が下がると見込まれる。さらには、通信料金も時間が経てば十分低価格にできると見込んでいたのだろう。その意味では、Cat.1は最初からM2M向けを考えており、後は時期が来るのを待っていれば良い、という判断だったように思われる。

 ただ、その時期が来るのは予想外に遅かった。これは日本だけの話ではなくワールドワイドでという事になるが、先行してLTEが導入された国では、続いてLTE Advancedの導入が始まっており、まずはCA(Carrier Aggregation)の導入による帯域の拡大、次いでLTE Advancedの本格導入といった形で進んでいる。一方、LTEの導入が遅れた地域は、普及はまだこれからといった状況だったりする。

 ちょっと古いデータだが、OpenSignalによる2016年11月の調査状況では、韓国や日本のように普及率が90%を超えた国がある一方で、スリランカやレバノンのように40%台の国もある。欧州の主要国を見てみると、ドイツが57.12%、イタリアが54.16%、フランスが49.44%といったあたりで、思ったほどに普及が進んでいない現状がある。こうした状態では、量産効果というのが案外に発揮しにくいことになる。

 おそらく、こうした普及の遅れというか導入期間の長期化の結果として、M2M向けのCat.1の導入時期が後ろにずれ込んだのは間違いない。こうした傾向が見えてきた2010年代初頭に、この状況が招いたM2M向け製品投入の遅れを気にしてか、強引に低価格なM2M向けのソリューションを策定する必要があると判断された結果として、3GPP Release 12で標準化されたのが、「LTE Cat.0(LTE User Equipment Category 0)」である。

関連キーワード

LTE(Long Term Evolution) | IoT | 3GPP | M2M | IoT観測所 | NB-IoT


       1|2 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.