自動運転バスの課題、バス停にぴたり横付け停車する「正着制御」に挑む自動運転技術(1/2 ページ)

SBドライブと先進モビリティは、沖縄県南城市で、公共バスへの適用を想定した自動運転バスの実証実験を開始した。今回の実証実験で特に重要な項目として挙げたのは、バス停にぴたりと横付けして停車させる「正着制御」である。

» 2017年04月12日 06時00分 公開
[沖縄特派員MONOist]

 ソフトバンクのグループ会社であるSBドライブと、東京大学発のベンチャーである先進モビリティで構成する「沖縄自動運転コンソーシアム」は、沖縄県南部の南城(なんじょう)市で、公共バスへの適用を想定した自動運転バスの実証実験を開始した。

自動運転の実験車両は、日野自動車の小型バス「リエッセ」を改造したもの。沖縄県南部の南城市の「あざまサンサンビーチ」近くに設定されたコースを最高時速30kmで走行した。先進モビリティが自動運転技術の開発を担当し、SBドライブが遠隔運行管理システムの構築を進めている 自動運転の実験車両は、日野自動車の小型バス「リエッセ」を改造したもの。沖縄県南部の南城市の「あざまサンサンビーチ」近くに設定されたコースを最高時速30kmで走行した。先進モビリティが自動運転技術の開発を担当し、SBドライブが遠隔運行管理システムの構築を進めている(クリックして拡大)

 今回の実証実験の舞台になった南城市は、那覇空港から車で40分ほどの場所にある農業と漁業の町。交通量が少ないことに加え、同市が公共交通の在り方に課題を抱えていることが、実証実験の場所として選ばれた理由だという。沖縄自動運転コンソーシアムは、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の1つである「自動走行システム」部門からバス自動運転実証実験を受託、今回の実証実験を実施した。

2017年3月30日に報道機関向けの試乗会が開催された。写真左から、SBドライブ代表取締役社長CEOの佐治友基氏、先進モビリティ代表取締役社長の青木啓二氏、同社技術部主任の安藤孝幸氏 2017年3月30日に報道機関向けの試乗会が開催された。写真左から、SBドライブ代表取締役社長CEOの佐治友基氏、先進モビリティ代表取締役社長の青木啓二氏、同社技術部主任の安藤孝幸氏(クリックして拡大)

 第1弾の実施期間は2017年3月20日〜4月2日の2週間。「あざまサンサンビーチ」近くの一般車両も通行する往復2.4kmの公道を使い、直進走行や駐車場での転回(Uターン)、バス停への停車、路肩に停められている車両の回避といった基本的な運転内容を検証した。最高速度は時速30kmに設定している。「公道を利用した公共バス向けの自動運転の実証実験は国内初」(SBドライブ 代表取締役社長兼CEOの佐治友基氏)という。

 2017年6月には沖縄県内の離島で、今回と同等の技術レベルの自動運転バスを一般利用者に使ってもらうモニター調査を実施する。さらに2017〜2018年度にかけて、交通量が比較的多い公道環境で、より高度な技術実証を実施する計画だ。

検証で重視したのは、バス特有の停め方

 第1弾となる今回の実証実験では、「走る(アクセル制御)」「曲がる(ステアリング制御)」「止まる(ブレーキ制御)」という運転動作の3項目のうち、アクセルとステアリングの制御を自動化し、ブレーキについてはドライバーが操作した。このため、SAE(米国自動車技術会)が定義する運転の自動化レベルでは「レベル2」に相当する。先進モビリティが自動運転技術の開発を、SBドライブが遠隔運行管理システムの構築を担当している。

今回の実験ではアクセル制御とステアリング操作を自動化。ブレーキ制御についてはドライバーが担当した 今回の実験ではアクセル制御とステアリング操作を自動化。ブレーキ制御についてはドライバーが担当した(クリックして拡大)

 車両開発を担当した先進ドライブが、今回の実証実験で特に重要な項目として挙げたのは、バス停にぴたりと横付けして停車させる「正着制御」である。公共バスが一般的な乗用車と大きく異なる点は、車両の大きさもさることながら、バス停に定期的に停車することにある。体の不自由な人や高齢者の利用を考えると、バス停から離れることなく高い精度で停車し、スムーズに乗り降りしてもらうことが、自動運転バスの使い勝手を大きく左右するとの考えだ。

 自動運転の仕組みはこうだ。実験車両には、GPSで測位した約5cm間隔の軌跡データが走行ルートとしてあらかじめ設定してある。運転中には、刻々と変化するバスの位置情報を高精度GPS(Real Time Kinematic GPS)で測位し、あらかじめ設定してある走行ルートからずれた場合には、それを補正するようにステアリングを制御する。

 ここで、バス停の近くに車両が到着すると、ドライバーの方向指示器の操作をトリガーに「正着制御モード」に切り替わる。正着制御モードでのセンシングで主要な役割を担うのが、対象物の形状や距離を測るライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging)である。

自動運転バスではライダーが重要な役割を担う。車両前方中央部に設置された合計4つのライダー。Velodyne製の全方位ライダー「VLP16」の下に、日本信号製の「アンフィニソレイユ FX10」が3つ取り付けられている。黒い枠のように見える部分にはミリ波レーダーがある(左)。車両内部で、ライダーでセンシングした周囲の様子を表示している(右)(クリックして拡大)
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