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» 2017年04月21日 10時00分 UPDATE

3D設計推進者の眼(20):立ちはだかりし実践の壁とあふれ出す批判――3D設計推進者の憂鬱 (2/3)

[土橋美博/飯沼ゲージ製作所,MONOist]

PDMで大騒ぎ

 ある企業の方からは、こんな悩みを打ち明けられました。

 「PDM(Product Management System)による3D CADデータ管理システムの構築を進める中、会社の運用ルールの検討を進めていたところ、現状のデータ管理における潜在的な問題が出てきてしまった。PDMの構築を進めようとしている担当者だけでは、どうにもこうにもならなくなってしまった」

 聞いた話では、その問題が部門間を超える広範囲におよび、かつ慣習的に行われてきたデータ管理の方法が、PDMシステムと適合できない部分があるといった、難しい問題とのこと。この問題はPDMに取り組んだことで明らかになったわけですが、簡単に済むことではなさそうです。

 このような経験は私にもありました。2010年ごろのお話です。

 PDMの構築検討を進める担当は、設計部門であったり、情報システム部門であったりします。私の場合は設計に近いところで進めていたのですが、「こうありたい姿」という推進者が俯瞰的に考える目標と、「こう使いたい」という実際に業務をする設計者が考える現実には、乖離(かいり)が生じることがあります。そして、この話は、設計に関することだけではなく、他部門との話にも通じます。

 うまくいかない理由としては、以下のようなことを言われます。

PDMシステムの持つ承認システムなんていちいち使うことはできないよ。


でも、そんなことだから検図が不十分なのかも。


流用設計をするなら、関連付けするよりもコピーフォルダを作ってしまった方が楽!


勝手にデータを変更して、派生データを作成するのは楽だろうけど、共通部品の改訂管理はどうするの? データは増え続けるばかり。データマネジメントなんてできないよ。

データを理解できるのはそのデータを作成した人だけだよね?


実は資材部門で3D CADを用いてアセンブリー情報を見ていた。PDMライセンスがほしい!


そんな話初めて聞いたよ! ヒアリングでも言っていなかったのに。予算が合わないよ(泣)


 部品表番号の機械的な付け方に関する設計の言い分と資材の言い分としては、以下です。

BOMだけで出図を管理していたので、PDM運用で決められた内容で、図面番号が変わると、改訂番号が付いただけで、新規図面として扱われてしまうので困る。設計部門はリビジョン管理と図面のひも付きをどうするか決めていた。


 私の現場の場合は、広範囲での問題ではないものの、外注加工先を含めた話であり、かつ用意周到に進めたはずでした。そして、いざ運用となった段階で、このような問題が発覚したのです。

 その上、このように言われてしまいます。

だから推進者の考えていることなんて!


もともとの仕組みの方が良かったんじゃないの?


 データ移行時などは、ローカルマシンにデータが多く保存され運用されていた実態が発覚して、新たなPDMシステムにデータ保存をしようとすれば、「!」マークが出続けて、データに関するバージョンエラーは出続けて、システムは止まって……、など大騒ぎです。

あー! イライラ!


 設計からは、「何とかしろ!!」の声が飛んできます。今思い返しても、とても苦い経験です。

 当時は、まだ優良なデータ移行ツールもなかったせいもあるのですが、個人レベルでの慣習的な運用までを把握しきれてはいなかったし、設計現場がそれを許していたこと自体も問題で、とにかくいろいろと理解不足だったのでしょう。苦い経験をした身としても、その轍(わだち)を他の人には踏ませたくありません。

 ベンダーからはベンダー独自の悩みの話を聞きます。

 PDMシステムというものは、企業の基幹システムにつなげることが多くあります。開発・設計・製造を行う企業にとって、扱う最小単位とは部品になります。そして製造物は部品の集まりです。上位システムに対しても、これらの情報にさまざまな付加情報、例えば、原価、納期、調達先、部品番号から生成した品番などが付けられていきます。

 このようなつながりを持つシステムの場合、上位の基幹システムが優勢になることもあります。そのシステムの都合でPDMシステムが決められそうになることもあるようです。

 それについては、「設計や成果物の特徴について、設計現場がどう考えているのかを明確にして、PDM導入について情報システム部門にきちんと理解してもらう必要があると思う」と私は答えました。

 余談ですが、PDMに関しては、私の所属するCADユーザーグループでもここ最近議論が盛り上がりつつあります。いずれ近いうちに座談会が開催されることでしょう。

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