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» 2017年04月21日 10時00分 UPDATE

3D設計推進者の眼(20):立ちはだかりし実践の壁とあふれ出す批判――3D設計推進者の憂鬱 (3/3)

[土橋美博/飯沼ゲージ製作所,MONOist]
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CAEへの重すぎる期待と辛らつな声

 CAEについては最近、こんな話を聞きました。

 社内の解析担当者に解析を依頼したところ、指示した通りに解析をしてもらって、解析の解を提示してくれたものの、設計者としてはその内容に納得がいかない。「どうしてでしょうか」の設計者の問いに対して、「言われた通りに行いました」との答え……。

 ミッドレンジのCAEからハイエンドのCAEへの運用を始めた企業でのお話です。

 私もCAEを立ち上げる際にはこんなことがありました。

 例えば設計者から、こんなことを言われました。

この○○モデルの構造解析をしてほしい。


この○○モデルの熱膨張を見てほしい。


流体による微小ワークの挙動を見てほしい。


 その中には、そう難しくなくできることもあれば、そうでないこともあります。設計者が詳細を理解していない要素に対して境界条件を与えるには、やはり設計者自身の経験値や、工学的知識による裏付けが必要になります。

 CAEの場合は、同一境界条件化でのモデル比較はうまくいきますが、これも完璧な答えとはいえません。

 また未知の定数を文献を調べて使用することもあります。解析担当としては、果たして、どこまでその答えに責任を持つのかというのが課題になります。

 私の場合、解析依頼があった際に、「できない」とは極力言いません。代替えの方法を用いてその答えを求めて、設計者に対して、モデルに対する助言を与えることもありました。可能であれば、最終的に実モデルでの比較検証まで出来れば良いのですが、製造納期そのものが短い装置で、その実証のための時間を確保することは容易ではありませんでした。とはいえ、深夜にでも時間を取ってでもやるべきだったのかもしれないと反省もしました。

 CAEの成果物は、最終的には設計に反映され、設計成果物になります。

 こんなことを言われたことがあります。

あなたがどんなにCAEを頑張ってみても、その成果は設計結果に表れることであって、あなたのCAEが評価されることはない。


 確かに、CAEも設計検証過程での話です。「黒子である」という人もいます。一方では、CAEによるアウトプットが前段の結果論だけの話であったり、代替えというような設計が十分に腑に落ちない内容だったりもします。

 さらに、もし解析担当が「出来ない」という回答をしようものなら、批判の矛先になりかねません。私も実際そうでした。

 批判の例としては、こんな感じです。

  • 出来ないことが多いよね
  • 実態と合わないんだけど
  • 解析結果と実測の評価をしたのか
  • ミッドレンジのCAEだから出来ないんじゃないの、ハイエンドにしてみたら
  • 学校の授業のような解説はいらないよ。どうすればいいか教えて
  • “仮想の”検証なんでしょ?

 CAEは高価なものです。これを「魔法の箱」だと思っている人は、設計者に限らず、社内にたくさんいます。


 3Dデータの運用範囲が広がれば広がるほど、ここまでお話ししたようなさまざまな問題が起こり、順調に進まないことに対して、推進者は悩みます。

 プロジェクトというものは、「モノが行うこと」ではなくて、「人が人と行うこと」です。ここまでお話しした内容も、人と関わる部分で発生していることが分かっていただけるのではないでしょうか。

 方々で3D推進のお話を聞くと、必ず「抵抗勢力」という言葉が必ず登場します。私自身は、抵抗勢力と呼ぶべき人たちがいるのかは、正直よく分かりません。しかしながら、プロジェクトを進める上では確かにいろいろなタイプの人が、いろいろな形でその影響を与えることがあります。次回はそんなお話から始めたいと思います。

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Profile

土橋美博(どばし・よしひろ)

1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置メーカーで設計・営業・3次元CAD推進を行う。現在、液晶パネル製造装置を主体に手掛ける株式会社飯沼ゲージ製作所で3次元CADを中心としたデジタルプロセスエンジニアリングの構築を推進する。ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)の代表リーダーも務める。



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