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» 2017年05月17日 10時00分 UPDATE

CAE事例:電動車いすベンチャーのWHILLで弾性体を用いた強度解析

パーソナルモビリティの新モデル「WHILL Model C」の開発で、弾性体データを取り込んだ強度解析を実施した。

[小林由美,MONOist]

 電動車いすベンチャーのWHILLは、2017年6月に販売開始予定のパーソナルモビリティの新モデル「WHILL Model C(ウィル モデル シー)」の開発において、弾性体データを取り込んだ高度な強度解析を実施した。

 Model Cは初号機「WHILL Model A」の販売価格99万5千円の半額以下である45万円で販売される。Model CはModel Aと比較して約55%の軽量化をかなえ、かつ簡単な操作で本体を3つに分解することが可能だ。3G通信モジュールも搭載して、ファームウェアアップデートを遠隔で実施できる。

WHILL Model C

 WHILLの開発において悪路走行を模擬する落下試験とドラム試験による耐久試験をする必要があった。製品の量産までに、これらの実験を何度も実施しなければならず、膨大な時間とコストを必要としていた。今回の開発では試作前から、段差を乗り越える、あるいは落下した際の衝撃などを考慮した強度解析をエムエスシーソフトウェア(MSC)の機構解析ソフト「Adams」を用いて実施した。

 車体のCADデータを大規模アセンブリーの形でMSCのCAEプラットフォームである「MSC Apex」に読み込んで、さらにそこから弾性体データ(MNFファイル)を出力してからAdamsに読み込んで強度解析を実施した。

 「車両の挙動とともに応力の発生部位を捉えることが可能で、車両モデルが出来上がったタイミングで一気に解析できる。各部品にどのように応力がかかっているかが一目で分かるため、試作前に図面・モデルの修正が可能だ。『試作してみたら想定外の部分が壊れた』というようなことが避けられ、試作コスト削減および不要な試験期間の短縮につながった」(WHILL)。

 Adamsでは剛体のデータで強度解析することが多く、弾性体での解析となるとより難易度が高くなる。WHILL社内のエンジニアでは対応しきれず、今回はMSCと契約して同社エンジニアのサポートを得た。「ここで得たシミュレーションの条件などのノウハウを用いて、自社内のエンジニアだけでも解析を行えることを目指して業務を推進している」(WHILL)。

 なおModel C以前の開発では今回とは別のツールを用いて簡単なソフトで数点の部品での静解析のみを実行していた。

 CAEやシミュレーションにおける今後の課題として、WHILLは次のように述べた。「実機での実験と、シミュレーション結果の相関性が合わず、コリレーションを取る作業が多く発生する。CAE(ソフトウェア)特有の課題というより、シミュレーション技術に共通した最大の課題だと考える」。

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