人とくるまのテクノロジー展2017

2025年に自動車事業の売上高を3倍に、走るコンセプトカーで提案強化材料技術(1/2 ページ)

旭化成は、自社の自動車向けの素材を多用したコンセプトカー「AKXY(アクシー)」を披露した。タイヤ材料や塗料、内装部品、センサーなど27種類の製品を1台に盛り込み、自動車メーカーなど取引先に向けて製品ラインアップの認知度を高める狙いがある。

» 2017年05月18日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
同社の樹脂材料を多用したコンセプトカー「AKXY(アクシー)」 同社の樹脂材料を多用したコンセプトカー「AKXY(アクシー)」(クリックして拡大)

 旭化成は2017年5月17日、東京都内で会見を開き、同社の樹脂材料を多用したコンセプトカー「AKXY(アクシー)」(※1)を披露した。タイヤ材料や塗料、内装部品、センサーなど27種類の製品を1台に盛り込み、自動車メーカーなど取引先に向けて製品ラインアップの認知度を高める狙いがある。

 コンセプトカーは電気自動車(EV)で、実際に走行することも可能だ。EVベンチャーのGLMがシャシーとパワートレインを提供し、車両デザインも担当した。

 旭化成は2025年までに自動車向けで3000億円の売り上げを目指している(リチウムイオン電池のセパレーターは除く)。2016年比3倍の売り上げに向けて、走るコンセプトカーを生かして提案力を磨く。

3人乗りのSUV型電気自動車。ガルウイング(クリックして拡大)

(※1)「Asahi Kasei × You(旭化成とお客さま)」の頭文字をとって「AKXY」

走るコンセプトカーでアピールしたい

 コンセプトカーのアクシーは2015年からGLMと共同開発を進めてきた。自動車メーカーなど取引先の購買部門だけでなく、先行開発を担当する技術者にも乗ってもらいたいという。「走行できるコンセプトカーを通してより具体的に自動車で当社の製品を使うことをイメージしてもらえれば」(旭化成 オートモーティブ事業推進室 室長の宇高道尊氏)。

 外形寸法は全長4685×全幅1813×全高1562mmで、駆動用モーターの出力は225kW。乗車定員は3人。車両ナンバーは取得していないので公道は走行できない。コンセプトカーは同社の富士工場(静岡県富士市)で保管し、来訪者が希望すれば敷地内で運転できるようにする。

タイヤ向け素材がグローバルナンバーワン タイヤ向け素材がグローバルナンバーワン(クリックして拡大)

 コンセプトカーに搭載した製品のうち、3分の2は既に量産実績がある。「世界トップのポジション」(旭化成)であるリチウムイオン電池のセパレーターの他、タイヤ向けの溶液重合型スチレンブタジエンゴム「タフデン(S-SBR)」も売り上げが伸びている。タフデンはタイヤの転がり抵抗の低減とグリップ性能の両立を助けるもので、「ここ1〜2年はグローバルナンバーワンだと認識している。市場の成長率以上の伸びを見せている」(旭化成 常務執行役員の吉田浩氏)。

音声認識やバイタルセンシングも保有技術の1つ 音声認識やバイタルセンシングも保有技術の1つ(クリックして拡大)

 「われわれがやっていることをあまり知られていない」(吉田氏)というのがセンサーだ。コンセプトカーには曇り止めセンサーや非接触の脈波センサー、音声認識システム、CO2センサーなどを搭載している。曇り止めセンサーは、ガラスの温度や車内の室温や湿度から窓が曇り始める露点温度を検知する。空調の制御を最適化することで電動車両の電力消費や燃費を改善する。

 今回のコンセプトカーの骨格や外板は金属を使用しているが、骨格部品や外板の樹脂化は旭化成として注力していく分野。「鉄からアルミニウムへと金属材料を採用して軽量化する取り組みがあるが、アルミニウムより軽いものとなると樹脂だ。われわれは炭素繊維を持っていないが、セルロースナノファイバーやガラス繊維とエンジニアリングプラスチックを手掛けている。樹脂と繊維の両方を持つ強みを生かして複合材料を提案していく」(宇高氏)。

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