有機ELで4つ目の表示デバイス、テレビ生産が変わること変わらないことメイドインジャパンの現場力(10)(4/5 ページ)

» 2017年06月07日 13時00分 公開
[三島一孝MONOist]

メイドインジャパンに残された「人」の価値

 薄型テレビは、グローバル競争の中で日系メーカーが軒並み苦戦し、多くの企業が縮小を重ねてきた。その一因として、薄型テレビ化により、テレビ生産における生産工程の付加価値が減り、製造における現場力を特徴としていた日系メーカーの強みが失われたことがあるともいわれている。実際に有機ELテレビの生産ラインを見ても、基本的には他の薄型テレビと変わらず、表示デバイスと実装基板に製品の競争力の大部分が集約されている。

photo パナソニック アプライアンス社 テレビ事業部 モノづくり革新センター 所長の阪東弘三氏

 ただ、パナソニックではあくまでもテレビ生産で継続的に価値を示していけると訴える。阪東氏は「少子高齢化などで人材不足が叫ばれる中で当然自動化は進めていく。実際に有機ELテレビの組み立て生産においても双腕の協働ロボットを活用し、人とロボットの協調生産に取り組んでいる。ただ、あくまでも生産の主役は人であり、機械やロボット、ITなどの先進技術を組み合わせて、進化させていくという思想だ。常に人の手や人の目を通すことで、感性としての価値を実現できる」と、あくまでも人が主役の生産現場であることを強調する。

 有機ELテレビの組み立て生産ラインでも、機械と人の目による二重のチェック体制となっていることが特徴となっている。ホワイトバランスの検査や表示検査なども基本的には測定ソフトウェアによる確認を行った後に、人間の感性として正しいかどうかを人手入れてチェックする形だ。「自動化は進めていくが、最終的に利用するのは人間である。特に高付加価値製品である有機ELテレビはそれにふさわしい品質かどうかを人手で行う必要がある」(阪東氏)としている。

photo 有機ELテレビの組み立て生産ラインに導入されたカワダロボティクスの「NEXTAGE」。テレビ下部のリモコンの受光部などの領域の組み立てを人と協力して行っている。ただ現状は「試験運用の段階。生産効率をどうすれば高まるか検討を進めている」と担当者は述べている(クリックで拡大)

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