特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

製造業の2035年のあるべき姿をRRIが策定へ、業界横断の工業会連携もスマートファクトリー

ロボット革命イニシアティブ協議会の中で、IoTによる製造業の変化をテーマとする「IoTによる製造ビジネス変革WG(WG1)」は2017年度の方針を発表。新たに2035年の製造業の将来像を2017年度内に策定する他、製造業に関連する工業会との連携を強化する方針を示した。

» 2017年06月19日 13時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)の中で、IoT(モノのインターネット)による製造業の変化をテーマとするIoTによる製造ビジネス変革WG(WG1)は2017年6月19日、都内で2017年度の方針を発表した。

 ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)は、安倍政権の「日本再興戦略」の核となる「ロボット新戦略」を実践する団体として2015年5月に設立。3つのワーキンググループ(WG)活動が行われており、その1つがIoTによる製造ビジネス変革WGとなる※)。同WGには日本企業を中心に製造業やICTベンダーなどさまざまな企業が参加し、現在は151人の会員が参加。主にインダストリー4.0が対象としている製造業のIoT活用による変革をテーマとしていることが特徴である。

※)関連記事:政府主導の“インダストリー4.0”対抗基盤「IoTによる製造ビジネス変革WG」が始動

 2016年4月の日独共同声明および2017年3月の「ハノーバー宣言」などIoTにおける製造ビジネス変革に対しては、日本とドイツの協力強化が進んでいるが、この中で日本側の実質的な協力活動を運営する組織がRRI WG1だ※)

※)関連記事:日独で第4次産業革命に向けた「ハノーバー宣言」採択、9項目で協力へ

 日本とドイツの第4次産業革命に関する協力では、既に共同作成した分野別のホワイトペーパーを公開。さらに、IoTの事例をまとめるオンラインユースケースマッピングの日本、ドイツ、フランスでの共有など、RRI WG1の活動などをベースにしたさまざまな成果が出始めている※)

※)関連記事:IoTの成功事例203件が公開へ、ドイツのインダストリー4.0事例とも連携

photo RRIが公開したIoTユースケースマップ(クリックでWebサイトへ)出典:RRI

2017年度は将来を見据えた取り組みを強化

 RRI WG1の2017年度の取り組みとしては、主に「システムアプローチ」「工業会、協会、学会連携の強化」「体制強化」の3つのポイントを挙げる。

photo RRI インダストリアルIoT推進統括の水上潔氏

 RRI インダストリアルIoT推進統括の水上潔氏は「第4次産業革命では、IoTやCPS(サイバーフィジカルシステム)、SoS(システムオブシステムズ)などの新たなキーワードが生まれてきている。業務、企業間、価値の3つの変革が必要となる中、これを日本においても現実化するための取り組みを進めていく」と述べる。

 「システムアプローチ」については、2035年の製造業の将来像を構築し、そこからバックキャスト型のアプローチで必要な技術や規制緩和などを考えていく。そのための土台になる2035年の将来像と2025年の中間像を2017年度中に作成し、これらに必要となる要件などの議論が進められるようにする。国際標準化、産業セキュリティ、人材育成、研究開発などを対象とする。

 経済産業省では2017年3月に日本の産業が目指す姿を示すコンセプトとして「Connected Industries(つながる産業)」を発表しており※)、これらの日本版のコンセプトを世界に打ち出していく方針を示している。今回の「2035年の将来像」についてもこの「Connected Industries」の方向性などに合わせ、それを構成する産業の1つとしての製造業の理想像について探る。

※)関連記事:日本が描く産業の未来像「Connected Industries」、世界に発信へ

 水上氏は「将来からバックキャストし、現在からフォーキャストしその両側をつなぐような、実践的な計画を作り出していきたい。海外では既にビジョンを示す動きなども出ているが、日本独自の商習慣を盛り込んだ将来像を作り出したい。2017年度中に、国際標準化や産業セキュリティの領域では、日独連携の土台となるようなレポートの作成を目指したい」と水上氏は述べている。

 「工業会、協会、学会との連携強化」については、既に日本電機工業会(JEMA)や日本電気制御機器工業会(NECA)、日本機械工業連合会や日本工作機械工業会、日本ロボット工業会、電子情報技術産業協会(JEITA)、日本自動車工業会、日本自動車部品工業会、日本機械学会、日本商工会議所など、27団体とコンタクトを取っているという。水上氏は「既にコンタクトを進めている。IoTによるつながる世界を実現するためには、業界固有の世界だけでなく横断的な取り組みが必要になる。ドイツでは既に業界団体が横断して連携する形でさまざまな取り組みを進めている。日本でも同様の連携の形ができないか模索していく」と語る。

 「体制強化」については、新たにアクショングループ(AG)として産業セキュリティAGを立ち上げた他、「インテリジェンス・連携・広報」組織などを新設する。セキュリティについては既に2016年4月の日独共同声明以降、専門家による情報交換などが行われてきたが、常設の組織として新たに2017年7月からAGによる活動を開始する。新設する組織については、情報マーケティングチーム、調査研究チーム、工業会・協会・学会連携チーム、広報戦略・プロモーションチームの4つのチームを新設する。

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