特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

画像認識とソフトウェアPLCを軸に躍進するリンクス、ASEANに進出へ製造業IoT

技術商社のリンクスは、シンガポールのウルトラビジョンを買収し、新たに日本国内だけではなく東南アジア市場に進出する。同社が強みを持つ画像認識およびソフトウェアPLCなどによりASEAN地域のスマートファクトリー化推進を支援する。

» 2017年07月06日 13時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 技術商社のリンクスは2017年7月5日、新たな事業戦略を発表。シンガポールのUltravision(ウルトラビジョン)を買収し、新たに日本国内だけではなく東南アジア市場に進出することを明らかにした。

日本でできないモノを日本に持ち込む戦略

photo リンクス代表取締役の村上慶氏

 リンクス代表取締役の村上慶氏は同社の戦略について「取り扱い製品の条件として、日本でできない世界をリードするハイテク製品を1社独占で代理店契約を結び、国内に展開することを条件として、取引先を選定している」と述べる。実際にリンクスでは、MVTec Softwareの画像処理ソフトウェア「HALCON」や、Baslerの工業用デジタルカメラなど、工業用画像処理分野で高いシェアを持つ最先端製品の国内展開を行っている。

 ドイツのインダストリー4.0などにより産業用IoT(IIoT)やスマートファクトリー化に注目が集まっているが、リンクスでは産業用IoTの動きを4つの領域に分けて、取り組みを進めていく。

 まず、画像処理ソフトウェア「HALCON」などを核に、リンクスがさまざまな工場への導入を進めてきた「画像関連技術」をコアコンピタンス領域と位置付け、継続的に強化を進めていく。さらに、今後大きく伸びるとされる「ソフトウェアPLC」をビルドアップ領域とした。まだ技術的にも完成されていないチャレンジング領域としては、クラウドPLCやSCADAを位置付ける。ここまでは将来的にはリンクスがカバーしていく領域とする。さらに上位のERPやMES、AIなどのIT企業がカバーしてきたような領域については「直接は取り組まずに協業によりカバーする方針だ」(村上氏)としている。

photo リンクスが目指す産業用IoTのビジョン(クリックで拡大)出典:リンクス

成長が期待されるソフトウェアPLC

 これらの戦略のもと、今後の成長の大きなカギを握るのが「ソフトウェアPLC」である。リンクスでは、グローバルで大きなシェアを握るドイツの3S-Smart Software SolutionsのソフトウェアPLC「CODESYS」の国内展開を進めている。

 スマートファクトリー化などの流れの中、工場内にもオープン化やネットワーク化が求められるようになってきている。国内の工場や製造装置ではハードウェアとしてのPLCを活用する場合が多いが、これらのオープン化などの流れの中、産業用PCを置きその上で各種機能をソフトウェアとして実行するような動きが広がりを見せてきた。その流れに乗りグローバルで大きく成長ししているソフトウェアPLCが「CODESYS」だ。

 村上氏は「国内の製造現場は、メーカー固有のガラパゴス化した通信規格により最適システムの構築が困難になっている他、プログラミング言語の国際標準と離れてガラパゴス化していることで開発コストの増大につながっており、競争面で難しい状況がある。スマートファクトリー化を実現するためには接続が必要になり、そのためには標準への対応が必須である。『CODESYS』はソフトウェアPLCの領域では市場のトップリーダーであり、連携を実現する基盤に成り得る」と強みについて語っている。

photo リンクスが考える工場における標準化の動き(クリックで拡大)出典:リンクス

日本からアジアへ、将来は工場外に飛び出す

 産業用IoTへの取り組みを進める中で今後は新たなフィールドへの拡大を推進する方針だ。1つが日本国外への進出である。新たにシンガポールの技術商社であるウルトラビジョンを2017年3月に買収し、東南アジアでの取り組みを開始する。2017年9月からは社名もリンクスシンガポールに変更する。

 ウルトラビジョンは、リンクスが日本国内で総代理店契約を締結しているMVTec Software、Silicon Software、LMI Technologiesなどの画像関連製品を東南アジアで展開しており、リンクスと共通製品を共同で展開できるという強みを持つ。村上氏は「日本企業の東南アジア工場などへの導入などを進めていく他、現地ローカル企業への導入も広げていく。今後は新たな技術を持ち込む場合も日本と東南アジア地域をセットで契約していく方針だ」と述べている。

 さらに2020年には、工場外の世界への進出も狙うという。「産業用IoTにおいて、さまざまなオートメーション技術が、工場外でも利用されるようになる。物流や小売など、多くの領域でのチャンスが生まれると考えている。その動きに合わせて2020年には工場向け以外の製品群を展開していきたい」と村上氏は将来のビジョンについて語っている。

photo リンクスの事業ビジョン。アジアへの進出と工場外への進出を視野に入れる(クリックで拡大)出典:リンクス

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.