デジタルツインを実現するCAEの真価

統合進むCAE業界、各社がプラットフォームや設計者CAEをアピールDMS2017まとめ(1/4 ページ)

CAE業界におけるツール展開は、着々と専門家以外へと進みつつある。一方でIoT時代を見越した買収やプラットフォーム構築の動きも活発だ。DMS2017における展示から、その内容をレポートする。

» 2017年07月21日 13時00分 公開
[加藤まどみMONOist]

 「第28回 設計・製造ソリューション展(DMS2017)」が2017年6月21〜23日の3日間、東京ビッグサイトにおいて開催された。今回のCAE関連展示では解析や最適化の新製品が出展される一方、多くのブースで設計者CAEのアピールが行われていたのが印象的だった。

 またCAEベンダーの買収に伴い、ソフトウェア同士の連携も進められていた。さらにCAEを含めたPLM全体のアプリケーションを統合するプラットフォームも紹介されており、IoT時代を意識した動きが感じられた。

みずほ情報総研はダッソーの3Dエクスペリエンス・シミュレーションプラットフォームを紹介していた。導入の簡易なクラウド版もある。

 みずほ情報総研のブースでは、仏ダッソー・システムズの「3Dエクスペリエンス・プラットフォーム」を紹介していた。3Dエクスペリエンス・プラットフォームはWebブラウザの形式で同社のアプリケーションである3D CAD「CATIA」や有限要素法の構造解析「Abaqus」をはじめ、製造工程全体のソフトウェアを使用できるプラットフォームである。データは工程全体で一元化されており、例えば設計データの最新版が全体に反映されるため、設計者と解析者の間でデータの受け渡しにミスがなく効率的になる。

 なお、Abaqusの機能は通常版と全く同じだが、操作感は全く異なる。CADライクのため設計者には扱いやすくなった一方で、従来の製品を使っている人にとっては慣れるのに時間がかかるだろうという。

CAE統合の先にあるもの

 2016年から2017年にかけてはCAE業界周辺での再編や統合も目立った。総合電機メーカーの独シーメンスは、2016年1月に流体解析や最適化ツールを持つCD-adapcoを買収した。シーメンスは同年11月にEDAツールをもつ米メンター・グラフィックスも買収し、両社をシーメンスのPLM部門に統合している。また仏ダッソー・システムズは従来のシミュレーション強化の一環で、2016年には電磁場解析や流体解析を取得した。一方国内では、熱流体解析を開発するソフトウェアクレイドルが米エムエスシーソフトウェア(MSC)の傘下に入り、2017年に入ってMSCがスマートコネクテッドファクトリー戦略を掲げるスウェーデンのヘキサゴンにより買収された。

 CAEなどのベンダー買収やプラットフォーム構築の先にあるのは、デジタルツインの構築やインダストリー4.0といった製造業を変革する取り組みである。アンシスはゼネラル・エレクトリック(GE)と協力して、リアルタイムでエンジンの状況データを取得し、解析することで故障原因を迅速に割り出すデジタルツインの事例を公表している。なお現時点ではエンジンを丸ごとリアルタイムでシミュレーションするのではなく、必要な要素を取り出したモデルをあらかじめ構築している。

 CD-adapcoはDMS 2017の時点ではCD-adapco(シーメンスPLMソフトウェア)という名称で出展していたが、2017年7月よりシーメンスPLMソフトウェア・コンピューテイショナル・ダイナミックスという社名になった。買収に際しては、同社の流体解析ツールとともに、設計最適化ツール「HEEDS」の存在も大きいという。

STAR-CCM+において、ラグランジュ相の液滴を噴霧してオーバーセットメッシュを利用しノズルを移動させる。液滴がパネルに衝突するとVOF相の液膜となる。

 同社の流体解析「STAR-CCM+」の最近トピックの1つは、流体と構造の連成が従来の一方向から双方向で可能になったことだ。また最新バージョンでは、VOF(Volume of Fluid)法とラグランジュ法を状況によって切り替えられる機能が備わった。例えば液体が液滴の時は粒子だが、大量の液体の中に入るとVOF相に溶け込むような設定が可能だ。これにより、液滴に合わせて詳細なメッシュを切る必要がなくなる。

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