ロータリー、Zoom-ZoomからSKYACTIVへ、世界シェア2%のマツダが選んだ道MF-Tokyo 2017 記念講演(2/2 ページ)

» 2017年07月31日 06時00分 公開
[長町基MONOist]
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始まったSKYACTIVテクノロジーの開発

SKYACTIVテクノロジーを全面的に採用したのは2012年発売の「CX-5」が最初だった。2017年2月にはフルモデルチェンジしている SKYACTIVテクノロジーを全面的に採用したのは2012年発売の「CX-5」が最初だった。2017年2月にはフルモデルチェンジしている(クリックして拡大) 出典:マツダ

 内燃機関の技術を磨く余地を当時はどう見ていたのか。「熱量のうち仕事として取り出しているのは30%にすぎなかった。まだ改善の余地がある」(菖蒲田氏)と考え、究極のエネルギー効率を求めて、「SKYACTIV ENGINE」の開発に取り組んだ。さらに、世界一の機能と走る喜びを共に実現するため、「クルマの基本性能を一から見直し、革新する」(菖蒲田氏)という取り組み「SKYACTIV テクノロジー」がエンジン以外でも展開された。

 加えて、クルマを文化として育てていくためにデザインも見直した。生命感あふれ、心ときめかせる動き「魂動(こどう)」をテーマに商品開発を進め、「CX-5」「アテンザ」「アクセラ」「デミオ」「ロードスター」などのモデルをラインアップしている。

新世代商品群に新たに加わる「CX-8」。2017年中に発売する3列シートSUVだ 新世代商品群に新たに加わる「CX-8」。2017年中に発売する3列シートSUVだ(クリックして拡大) 出典:マツダ

 マツダは「世界中の自動車メーカーが驚くような革新的な内燃機関を搭載したクルマを開発する」という目標の下でSKYACTIV テクノロジーを導入した。しかし「従来のモノづくりの延長では、実現は不可能であることから、モノづくりの方法にも革新を取り入れた」(菖蒲田氏)という。

 モノづくり革新では、商品競争力を高める多様性とボリューム効率を高める共通性というトレードオフを打破し、技術革新を伴うさまざまな商品を開発・生産しながら、単独車種に近いビジネス効率を目指した。

 これを実現するため「コモンアーキテクチャ構想」と「フレキシブル生産構想」の2つの活動を始めた。2006年の時点から2011〜2015年に発売するモデルを想定し、全てのモデルに展開できる構造や工程を一括で企画した。この間、新製品を発売できなかったが、ターゲットとする時期を見据えた製品開発に取り組んだという。

 コモンアーキテクチャ構想は、エンジンを例にとると排気量が異なっても固定して考える部分を共通の構造にするもの。フレキシブル生産構想は、高効率に商品力の高い製品を提供するため、トランスファーマシンに頼らず工程集約や設備のフレキシブル化を進める取り組みだ。

これからのマツダのモノづくり革新

 マツダにおけるモノづくり革新の今後の取り組みについては、「これまでは生産・開発という2つを軸に取り組んできたが、今後は調達・物流・品質を加えた5軸でモノづくりの革新を進めていく。開発と生産、調達まで一気通貫にしたモデルを事前に検証してプロセスを構築し、現物を作る前に狙いの商品性能やコストを実現できていることを確認しながら、同時にグローバルの拠点でモノづくりを展開していけるようにする」(菖蒲田氏)。

 デジタル技術による高品質化と効率化の推進「MDI(Mazda Digital Innovation)」もマツダが長年続けている取り組みの1つだ。1996年からMDIのフェーズ1としてCAD/CAM/CAE技術を駆使した商品開発プロセスの革新に取り組んできた。

 今後はMDIのフェーズ2としてモノづくりのプロセスをサプライチェーンのプロセスや顧客体験のプロセスへと機能統合ができる製品開発を進めていく。

 人づくりについても、技術系の新入社員は開発部門を一度経験して生産技術部門へ戻ってくるなど、担当領域以外の周辺領域にも精通した知識や人間関係を身に付けるように取り組みも行っている。

 今後も目指す姿はブレずにより効率の高い内燃機関を開発し、その上で電動化技術を向上、厳しくなるCO2削減目標を達成していく。

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