トヨタが産学連携を加速、運転手の心筋梗塞や運転中のコミュニケーションなど研究自動運転技術

トヨタ自動車は、米国の研究拠点である先進安全技術研究センター(Collaborative Safety Research Center, CSRC)で開始した11件の研究プロジェクトを公表した。

» 2017年08月04日 07時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 トヨタ自動車は2017年8月2日、米国の研究拠点である先進安全技術研究センター(Collaborative Safety Research Center, CSRC)において、新しい5カ年プログラム「CSRCネクスト」の技術研究を開始したと発表した。北米の8つの研究機関と協力し、11件の研究プロジェクトを進める。3500万ドル(約38億円)の規模で、自動運転やコネクテッドカーの先進技術の安全性について研究していく。

 CSRCネクストでは、先進技術が交通安全に与える影響や、人間とクルマの相互の関係について重点的に取り組む。具体的なテーマとしては、自動ブレーキなど予防安全技術と衝突安全技術の統合、人間の感覚に合った先進技術の開発、ドライバーの状態を推定するための生体センシング、実環境に即した運転データを研究できるアルゴリズムやツールの開発を挙げている。

 CSRCは2011年に設立し、23の大学と協力して44の研究プロジェクトを進めてきた。発表した論文は200件以上。CSRCネクストでは、TRI(Toyota Research Institute)やTCNA(Toyota Connected North America)による研究を引き続き支援していく。

 CSRCネクストで実施する研究プロジェクトとパートナーは以下の通り。

プロジェクト名 内容 研究パートナー
緊急回避操作時の人間の動作と筋肉の動き テストコース上で障害物を急ハンドルや急ブレーキで避ける際の、乗員の挙動や筋肉活動を定量化 フィラデルフィア小児病院
予防安全・衝突安全技術の統合的安全性評価 将来の総合安全システムの導入後に残る安全に関する課題を見積もる バージニア工科大学
衝突回避操作時の乗員姿勢の動的変化 テストコースで自動ブレーキや衝突回避操作を行い、乗員の姿勢の変化について研究する ミシガン大学 交通研究所
車載緊急病状検知システム開発に向けた研究 ノイズの影響を受けずに心筋梗塞や心筋虚血の発症を検知・予測する技術の開発を行う。患者から収集した心電図データを機械学習で解析する ミシガン大学 救命救急研究センター
アダプティブ・ヘッドライト・システムのメリット評価 事故被害者を低減するため、人間の反応特性や予想される効果を定量化する。シミュレーターを活用 アイオワ大学 高度運転シミュレーター
自動運転と手動運転の移行について 自動運転と人間による運転を切り替える時のドライバーの公道に関する有益なデータを分析する
路外逸脱テスト手法の開発 路外逸脱時の渓谷や支援システムについて、テストコースでの性能評価シナリオと評価手法を開発 インディアナ大学・パーデュー大学インディアナポリス校、交通予防安全研究所
ドライバー間のコミュニケーション分析 ドライバーが歩行者や他の車両とどのようにコミュニケーションしているか、コンピュータビジョン技術を利用して明らかにする マサチューセッツ工科大学 エイジラボ
周辺環境認識技術および評価指標 車両や歩行者、自転車、道路標識、建物、縁石などを認識する技術を機械学習を応用して開発
ドライバー間のコミュニケーション理論 交差点でドライバー同士が行うコミュニケーションについて、理論的・数学的な枠組みを開発、提供する ウィスコンシン大学
実環境における人間中心の自動運転:全体認識とパフォーマンス指標 自動運転と手動運転の移行に関し、コンピュータ予測モデルを開発する。予測モデルには、人間の動的・知覚的行動に関する要因と、交通シナリオや交通環境に由来する要因を含む カリフォルニア大学 サンディエゴ校

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