特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2017年08月04日 11時00分 UPDATE

MONOist IoT Forum 名古屋(後編):人も共に成長する工場へ、ジェイテクトが描く「IoE」4つのステップ (1/2)

MONOistを含むITmediaの産業向け5メディアは、セミナー「MONOist IoT Forum in 名古屋 〜先進企業の事例からひもとく製造業『第4次産業革命』の今〜」を開催した。後編では、ジェイテクトの特別講演とその他の講演内容をお届けする。

[三島一孝,MONOist]

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 MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの産業向け5メディアは2017年7月20日、名古屋市でセミナー「MONOist IoT Forum in 名古屋 〜先進企業の事例からひもとく製造業『第4次産業革命』の今〜」を開催した。

 本稿の前編では、コニカミノルタ 執行役 産業光学システム事業本部長 兼 BIC(ビジネスイノベーションセンター)担当 市村雄二氏の講演内容を紹介したが、後編ではジェイテクト 工作機械・メカトロ事業本部 IoE推進室 技監 青能敏雄氏の特別講演とその他の講演内容についてお伝えする。

トヨタ生産方式とともに成長してきたから訴える「IoE」

 ジェイテクトは2006年に光洋精工と豊田工機が合併して誕生した「歴史ある若い会社」(青能氏)である。ステアリングや軸受、工作機械などを展開する他、トヨタ自動車のラインビルダーとして、トヨタ生産方式をトヨタ自動車とともに発展させてきた歴史がある。トヨタ生産方式といえば、「自働化」や「ジャストインタイム(JIT)」などが有名だが、これらの概念を発展させる制御機器としてジェイテクトが1970年代に開発したのがPLC(Programmable Logic Controller)の「TOYOPUC」シリーズだ。

photo ジェイテクト 工作機械・メカトロ事業本部 IoE推進室 技監 青能敏雄氏

 同社では2018年3月期(2017年度)から「真の総合生産ラインビルダー」を目指す姿と位置付け、モノづくりの全てのフェーズで価値を提供していく方針を示す。青能氏は「TPSに根付いたライン作りやタイムリーな生産財提供などにより、顧客と一緒により良い工程やライン作りを目指す」と述べている。

 これらを背景とし、ジェイテクトが目指しているのが、モノだけでなく人もつなげる「IoE(Internet of Everything)」である。青能氏は「ジェイテクトが目指しているのが人が主役のスマートファクトリーである。データを活用するのは現場力で、人の発想が重要だ。IoTによるデータ活用で、設備が進化し、モノづくりが進化するとともに人も成長する工場としていく。人と設備の協調を重要視しているため、IoTではなくあえて『IoE』として強調している」とスマート工場に対する考えを述べる。

 具体的にはIoT導入には以下の4つのステップがあるとする。

  1. モノをつなげる(つなげる)
  2. 情報をつなげる(見える化する)
  3. 改善をする(情報を収集、解析し、価値を創出)
  4. 範囲を広げる(データを共有化する)

 ジェイテクトではこれらの4つのステップに合わせたソリューションを用意しており、自社工場での実践を進めているという。まず、スマート工場やIoT化を実現するのに、大きな障壁となっているのが、そもそもの「モノをつなげる」という部分だ。工場内で稼働する機器は基本的には「つながる」ことを前提として作られたわけではないため、特に古い設備ではデータを取得できるようにするのに苦労する。そこでジェイテクトでは新旧設備に後付けで設置するだけで簡単に「つながる」環境を構築できるPLC「TOYOPUC-Plus」を開発した。「工場内で『つながる』環境を作るためには、できる限り既存の回路などの変更を最小化する必要がある。そういうニーズを考えた場合、後付けでさまざまな規格に対応して異種環境を吸収可能な仕組みが必要になる」と青能氏は「TOYOPUC-Plus」開発の狙いについて述べる。

 見える化ソリューションでは「TOYOPUC-Hawkeye」を用意する他、改善に向けては、気付きを生み出すエッジ解析モジュール「TOYOPUC-AAA」を用意。「TOYOPUC-AAA」は、生産設備に接続しデータ収集や蓄積、解析を行うことができるオープンプラットフォームモジュールで2017年春からジェイテクトの工作機械全てに標準搭載したという。さらにデータを共有する仕組みとしてはジェイテクトのプライベートクラウドを活用し、遠隔監視や保全などを実現する「JTEKT Remote Care」などを用意している。

 青能氏は「スマートファクトリー化の具体的な取り組みを考えるときに『何のために、何を解決してIoTをやるのか、何を目指す工場にするのか』というのがまず重要になる。現場とITを融合し、現場の困り事をITで解決するという流れが重要だ」とスマートファクトリー化を推進するポイントを述べる。

3つのIoEと自社実践

 具体的なスマート工場化の目的として、ジェイテクトでは3つの目的を挙げる。「製品品質の兆候管理ができる『品質のIoE』、寿命や異常の兆候管理ができる『保全のIoE』、人も含めた生産性の向上が実現できる『生産のIoE』の3つがポイントだ。これをジェイテクトでは『3つのIoE』と呼んでいる」(青能氏)。

 これらの取り組みを自社工場でも実践している。品質のIoEとしての取り組みでは、IoT活用により研削盤の機能向上を図る取り組みを進めている。「研削盤の大きな課題としては研削焼けがある。研削焼けが起きるとワークが変質してしまう。ただ検査したワークは使用できなくなるため、全数検査が難しく抜き取り検査でしか対応できない。しかし抜き取りであれば、研削焼けが発生しているのに気付かず生産を続けてしまい、発覚した時にはロット全てを破棄する必要性が出てしまう。こうした異常発生をIoEによるデータ取得により要因解析で発見する技術を開発した」と青能氏は成果について述べる。この研削焼けの予測技術は「TOYOPUC-AAA」にアドオンして2017年7月から発売したという。

 一方で「生産のIoE」については、「人生産性」の向上にIoEを活用して取り組んだ。軸受工場である香川工場では、11の生産ラインが稼働しているが、ラインに人を張り付ける形では生産性向上に限界があった。そこで、ライン担当制を廃止し全員が全てのラインを担当できるようにした。しかし、それでは「アンドン」で設備の稼働状況は分かるが人の稼働状況や充足状況が分からなかった。そこで人の稼働状況を把握できるようにラインの中央にホームポジションを設け、そこで稼働状況を確認するとともに作業指示を受けられる仕組みを作った。これにより処置回数や稼働率なども改善する結果となったという※)

※)関連記事:ジェイテクト香川工場が挑むIoT活用、生産効率はどこまで高められるのか

 青能氏は「人の能力を加味したホームポジション性で、作業者ごとのマップを作ることで設備の生産性だけでなく、人の成長を促進し、生産性も向上することがゴールとなる。人の成長を実現するIoEとしていく。データはモノや人から発信されるがほとんどが現場起点で生まれている。使いきれてないデータを使えれば、設備も人も飛躍的に成長できる」と述べた。

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