マルヤナギが“シンの”トヨタ生産方式で維持する高い品質と鮮度管理のヒミツ鈴村道場(7)(4/4 ページ)

» 2017年08月23日 11時00分 公開
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(4)効果

 マルヤナギにおける“シンの”トヨタ生産方式の導入効果は計り知れません。まず製品ストアを導入した結果、従来の手持ち在庫の3〜4割は死蔵在庫であることが判明しました。

 製品倉庫の在庫は、煮豆7日→2.5日、つくだ煮5日→1.2日に圧縮されました。外部倉庫への週2回の大量移送から毎日納品となり、在庫がなくなった分を補充する運用が定着しました。それによりお客さまへ納品する日付が新しくなったり、市場需要の日々の変化に追随したりできるようになりました。

 鮮度向上と廃棄ロスを減らす出荷期限の警告が当初はかなりありました。しかし今は、年末年始やゴールデンウイークといった長期連休以外ではほとんどありません。これほど鮮度が高く、廃棄ロスが少ないことは、食品製造を営んでいる企業ではまれなのではないかと思います。

図3 図3 導入効果

 現場の活気を表す改善提案は、大門工場だけでも年間5000件に上ります。正規社員、パート社員も含めて人員は約200人なので、1人当たりで月2件以上の提案件数です。社員の方からは「鈴村先生の指導により現場が声を上げると良い方向に変わっていくことが分かり、提案が増えた」と聞いており、うれしい限りです。インフルエンザで主力社員が1週間ほど出社できなくなるという有事の際にも、生産が粛々と続くほど安定しています。

 業務効率についても当時は同じようなことを管理するムダなチェック表がたくさん存在していました。チェック表を統一、不要な物を削減することにより、チェック表は半分以下に減りました。紙も減るし、社員の手間も減るし、非生産的な仕事から解放され、社員のモチベーションは上がるのでいいこと尽くしです。

5.まとめ

 マルヤナギにおける事例から“シンの”トヨタ生産方式を一般食品製造業に適用する場合のポイントをまとめると以下のようになります。

図4 図4 “シンの”トヨタ生産方式を一般食品製造業に適用する場合のポイント(クリックで拡大)

筆者紹介

エフ・ピー・エム研究所 所長
鈴村尚久(すずむら なおひさ)

1976年3月京都大学法学部卒業。1976年4月トヨタ自動車入社。退社後1999年8月にエフ・ピー・エム研究所を設立。トヨタ生産方式のコンサルタントとして、はくばく、ピップフジモト、パナソニック、マルヨシセンターなど多くの企業の生産改善を手掛ける。著書に『トヨタ生産方式の逆襲』(文春新書)。父・鈴村喜久男氏(故人)は「トヨタ生産方式」の生みの親である大野耐一氏の側近として知られる


筆者紹介

株式会社アムイ 代表取締役
山田 浩貢(やまだ ひろつぐ)

NTTデータ東海にて1990年代前半より製造業における生産管理パッケージシステムの企画開発・ユーザー適用および大手自動車部品メーカーを中心とした生産系業務改革、

原価企画・原価管理システム構築のプロジェクトマネージメントに従事。2013年に株式会社アムイを設立し大手から中堅中小製造業の業務改革、業務改善に伴うIT推進コンサルティングを手掛けている。「現場目線でのものづくり強化と経営効率向上にITを生かす」活動を展開中。


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