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» 2017年09月04日 06時00分 公開

和田憲一郎の電動化新時代!(25):日系自動車メーカーの戦力逐次投入は何をもたらすのか (1/3)

フランスや英国で2040年までにガソリンエンジン車・ディーゼルエンジン車の販売を禁止する方針を政府が示した。欧州自動車メーカーは反対する様子もなく、既に織り込み済みに見える。一方、日系自動車メーカーは当面1〜2車種の電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)を投入する様子見の戦略だ。あえて後手とするのは望ましいのか。

[和田憲一郎(日本電動化研究所 代表取締役),MONOist]

 2040年までにフランスや英国がガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車の販売を禁止するという報道がなされてから、メディアがセンセーショナルに騒ぎ立てることもあり、一気に電気自動車(EV)の報道がにぎやかになった。一方、筆者は影響の大きい欧州自動車メーカーがどう対応するかを興味を持ってみていたが、何ら反対のコメントを出す様子もない。

 ということは、本件はフランス政府が公表する前に、自国の自動車メーカーに事前打診し、了解を得ていたと考えるべきであろう。平たく言えば、政府発表を前提として、自動車メーカーは事業戦略を見直し、既に動き始めていたのではないだろうか。隣国でかつ影響が大きいドイツ自動車メーカーも同様であろう。つまり、欧州では既に織り込み済みだったように思われる。

 一方、日系自動車メーカーは、Renault(ルノー)からの情報源がある日産自動車と三菱自動車以外はかなり驚いたであろうが、対応としては平静を保っている。トヨタ自動車はマツダとの資本提携、そしてEVを共同開発するという報道があったものの、開発の内容について具体性は示されておらず、今回の件と直接のつながりは不明である。このように欧州発で大変革が起ころうとしている中、必ずしも早く動くことが優れた手だとはいえない。しかし、あえて後手とすることが望ましいのだろうか。現在の状況を鑑み、日系自動車メーカーはどうあるべきなのか筆者なりに将来のシナリオを考えてみた。

各自動車メーカーは事業戦略の見直しへ

 間違いなくいえるのは、この報道の事前察知を受けて、欧州自動車メーカーは、各社の事業戦略見直しを行ったということであろう。ドイツ自動車メーカーは、これまでもディーゼル不正の影響を回避し、新たなゲームチェンジャーの方向としてEV・PHEVにシフトすることは表明してきたが、これをより一層加速したと見ることができる。それは、最大の市場である中国の車種ラインアップにも影響を及ぼす。また、フランス自動車メーカーのルノー、PSAグループ(プジョー、シトロエンン)とも一気にEVシフトを進め、車種の拡充を図っているものと思われる。

 さらにフランスおよび英国政府の発表は、これまで2025年にガソリン車の販売禁止を議会に提言していたノルウェーやオランダの政策を後押しし、おそらく2〜3年以内に欧州委員会による規則(Regulation)、もしくは自国で裁量を決定できる指令(Directive)として打ち出されるのではないだろうか。つまり、2040年というターゲットに対して、欧州委員会による規制は5〜10年前倒しされる可能性がある。

中国は一段と前のめりに

 一方、既に国家単位でEVシフトを鮮明に打ち出したのは中国である。中国の新エネ車(EV・PHEV)に関する方針は極めて明確である。第13次5ヵ年計画(2016〜2020年)では、2020年に200万台の新エネ車の生産、販売を掲げている。2017年上半期も対前年比20%アップ以上で推移しており、おそらく2017年度は前年の50万7000台を超え、65〜70万台まで伸びるのであろう。

 また既報の通り、米国のZEV規制にならったNEV規制を2020年から2018年に前倒しで導入予定である。実施時期見直しの議論もあるが、各自動車メーカーに対して新エネ車を増加させるようアメとムチを与えようとしている。また、新興EVメーカーは、ライセンス供与を20社程度に絞り、ライセンス認可された企業には優遇措置を、また認可されない企業は締め出すことで、粗悪な新エネ車が市場に出回らないよう規制を厳しくしている。

 将来を想定すると、先般発表された「自動車産業中長期発展計画」では、2025年に新エネ車700万台を目標に掲げており、第14次5ヵ年計画(2021〜2025年)が定まる2020年には、政策として明らかとなるであろう。このように、明確な国家戦略に基づき、各自動車メーカーも一気加勢に新エネ車普及にまい進しているのが現在の中国である。

図1 2017年7月の新エネ車販売トップに立つBYD「宋DM」(PHEV)(クリックして拡大) 出典:BYD

 一方、最も懸念されるのが日本である。報道では、トヨタ自動車はPHEVとEVを中国や他地域に1〜2車種投入予定であり、ホンダも急きょ開発したEVの1車種を中国向けに、そして他地域にはPHEVも開発中と聞く。SUBARU(スバル)は既に2018年にPHEVをリリース予定、EVは2021年といわれている。マツダはEVを2019年に投入するとしているが、トヨタ自動車との共同開発の話もあり、かなり遅れるのではないか。

 しかしである。主要な日系自動車メーカーは、当面1〜2車種程度のEVもしくはPHEVを開発するのみで、ドイツ自動車メーカーが、VWグループで約30車種、ダイムラーで約10車種のEV・PHEVを集中して開発しているのとは比較にもならない。

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