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» 2017年09月11日 06時00分 公開

エコカー技術:内燃機関が生き残るために、広島で研究進む「次世代燃料」 (1/4)

広島大学で開催された「ひろしま自動車産学官連携推進会議」、通称「ひろ自連」のシンポジウムを聴講した。ひろ自連は、広島地域の自動車産業を発展させていくための協働を目的に、広島の自動車産業と環境関連の政府関係法人、大学などの共同研究プロジェクトとして2017年2月に設立された。シンポジウムを開催するのはこれが初めてのことだ。

[高根英幸,MONOist]

 エンジンの将来が危うくなりつつある。英国やフランスが2040年までにエンジン車の販売を規制する方針を示し、拡大が見込まれる新興国市場の代表である中国やインドも、政府主導で電気自動車(EV)の普及を後押しする計画だ。エンジンはこのまま前世紀の遺物になっていくのか。

 ただ、EVに使用する電気火力発電で賄うとCO2が排出されてしまうため、EVを普及させることだけがCO2排出量削減に効くとはいえない。また、現時点で最も高性能なリチウムイオンバッテリーをもってしても、エネルギー密度はガソリンなどの液体燃料の40分の1にとどまるという見立てもある。

 広島地域の自動車産業を発展させていくための協働を目的に産官学が共同研究を進める「ひろ自連」(ひろしま自動車産学官連携推進会議)は、バイオ燃料とエンジン改良によってCO2排出量を減らしていくことが、現実的な日本の歩むべき方向性だと考え、次世代燃料の研究開発にいそしんでいる。

 ひろ自連として初開催となる「自動車用次世代液体燃料シンポジウム」(2017年6月14日、広島大学)や、広島大学とマツダが取り組む共同研究の現場の取材を通して、次世代燃料と内燃機関の生き残りの可能性を考えた。

「部品点数の多いエンジンの部品産業を存続させたい」

資源エネルギー庁 資源・燃料部政策課の安原清英氏。学生時代には学生フォーミュラにドライバーとして参戦していた、クルマ好きでもある

 シンポジウムの講演は「日本の長期エネルギー需給見通しと運輸部門における燃料多様化について」と題した、資源エネルギー庁 資源・燃料部政策課の安原清英氏による解説から始まった。

 それによると、日本のCO2総排出量における運輸部門の割合は、2016年で産業や業務などに次いで高い17.2%を占めている。その理由として、化石燃料を使用していることを挙げた。ただし、乗用車に関しては燃費性能の向上ぶりが目覚ましく、広島のみならず日本の産業競争力を維持していくためにも、モーターよりも部品点数の多いエンジンの部品産業を持続させていくことが必要だという。

 この他にも自動車におけるCO2削減政策の一例として、ガソリンにバイオエタノールを添加することによるCO2削減効果、またエタノール分の燃料税免税(これは当然のような気もするが)などの施策を紹介した。

 安原氏は、海外では燃料がレシプロエンジンよりもシンプルな、ジェットエンジンの航空機向けにバイオ燃料の導入が進んでいることを例に挙げて、国内のバイオジェット燃料の導入計画のロードマップを示した。

 実際の導入については、海外からの納入時にバイオジェット燃料を給油して飛行してくることにより一部実現しているが、国内での給油は2020年の東京オリンピックが目標という程度で、国産バイオ燃料生産への取り組みについても、まだ研究段階であり実用化は相当先である印象を受けた。

液体燃料の強み

早稲田大学研究院 次世代自動車研究機構 特任研究教授の大聖泰弘氏。エンジンの最先端技術を解説し、次世代燃料との合わせ技で、内燃機関の可能性を語った

 早稲田大学研究院 次世代自動車研究機構 特任研究教授の大聖泰弘氏は、エンジン研究の第一人者として「エンジンは燃焼技術、制御や機構による損失低減、運動部の軽量化、潤滑性能向上による摩擦損失低減などにより、熱効率50%を目指せる」と語った。

 大聖氏は、燃費性能を向上させるとともに、やはりバイオ燃料を利用することでCO2削減を目指すのが、理想的な対策であると述べた。EVに対しては「現時点で最も高性能なリチウムイオンバッテリーでも、エネルギー密度がガソリンなどの液体燃料の40分の1にとどまる状態では、何度もブレークスルーを果たさなければ限定的な利用にとどまる」(大聖氏)という見方を示した。

 さらには、日本が今後どういう社会を望むかという点が、自動車の動力の在り方に大きく影響するという。先進国として一定の成長率を望むのか、それとも成長は諦めて牧歌的な生活へと向かうのかによって、目指す姿は異なるというのが大聖氏の意見だった。

ひろ自連でエネルギー専門部会長を務めるマツダ 執行役員の工藤秀俊氏。近い将来の自動車保有台数の増大予測から、エンジン車が過半数を占める比率を考慮すると、バイオ燃料の導入が必須と解説

 続いて壇上に立ったのは、ひろ自連 エネルギー専門部会長を務めるマツダ 執行役員の工藤秀俊氏である。工藤氏はひろ自連の活動報告を行い、「Well to WheelでのCO2削減に向けた取り組みと自動車用液体燃料の将来像」を語った。

 これまでクルマのCO2排出量を測る時、走行時の排出量にばかり焦点が集まり、EVが非常にクリーンな印象を持たれがちだった。実際にはEVの電力も化石燃料から得ている場合が多く、Well(油井)からWheel(走行)までの総排出量で判断すべきだと工藤氏は主張する。さらに「車両のリサイクルまで含めたLCA(ライフサイクルアセスメント)で測るべきだ。そしてCO2排出量削減策として有効な手段は、やはり微細藻類由来のバイオ燃料の導入である」(工藤氏)と語った。

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