特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2017年09月27日 11時30分 公開

製造業×IoT キーマンインタビュー:オムロンが描くスマート工場の将来像と3つの独自性 (2/3)

[三島一孝,MONOist]

「i-Automation」を推進するオムロンの強み

MONOist インダストリー4.0やスマートファクトリーを推進する中でのオムロンの強みやユニークネスはどこにあると考えますか。

宮永氏 主に3つのポイントがあると考えている。1つ目はオムロンの取り組み領域である。オムロンでは製造現場の情報を高度で分かりやすく表現しており、ERP(Enterprise Resources Planning)システムなどで管理する企業レベルの経営情報などを高度1000mと位置付け、工場レベルのMES(Manufacturing Execution System)などを高度100m、PLCや産業用PCレベルを高度10m、そして製造現場のセンサーやI/Oなどの高度を1mだと位置付けている。

 この中でオムロンが対象とするのは「10m(PLCや産業用PC)以下」の領域である。それ以上の領域については、パートナーと組みながら進めていく方針だ。強みとする領域とオープンにする領域を切り分けて、最適な形で顧客企業に価値を提供するという考えだ。

 2つ目は制御機器のカバー範囲の広さである。先述した「標高10m以下」の領域において、20万種にも及ぶ制御機器を展開している。さらに、制御機器の主要機能である「Input(入力)」「Logic(制御)」「Output(出力)」「Safety(安全)」などをほぼ全てカバーする製品群を保有する。

 さらに、製造現場の機器群で不足している領域については、ここ3年間でM&A(買収・合併)を進めてきた。2015年にはモーション制御機器を展開するデルタ タウ データ システムズ(Delta Tau Data Systems)と、ロボットを展開するアデプト テクノロジー(Adept Technology)を買収した他、2017年には産業用カメラを展開するセンテックを買収し、製品ポートフォリオの拡充を図ってきた。これらの取り組みで製造現場のほぼ全ての領域で製品群をそろえられるようになった。これだけ豊富な機器群を抱えるのは世界を見てもオムロン以外にないと考えている。

 3つ目が、ノウハウやソフトウェアなどを組み合わせたソリューションとして提供できる点である。もともと「センシング&コントロール+Think」において「Think」を加えたのは、ソフトウェアによりノウハウやソリューションを展開するところに新たな価値があると考えたためだ。

 これらを実現するために設置しているのが「オートメーションセンター(ATC)」である。ATCはオムロンの制御機器を用途別のソリューションとして実証実験を推進。汎用性の高い動作などについて関連のノウハウなどをソフトウェアとして開発し、機器と合わせてソフトウェアを提供することで、製造現場での高度なライン構築に貢献する役割を担う。従来は全世界に2カ所だったが、現在は世界8カ所に拡大している。製造現場ノウハウを抽出したソフトウェア資産は一朝一夕でできるものではなく、ATCのメンバーが製造現場に半年くらい張り付いて組み上げていく必要があるが、こうしたソフトウェア資産についても3年間で数倍に拡大してきた。

photo オートメーションセンター内の展示。製造ラインの機能や工程ごとのソリューションを開発し紹介している

 これらの3つの強みが急速に形になってきたのがこの3年間だったといえる。製造現場の機械周辺の情報化を加速させることができるのがオムロンの役割だと考えている。その中で、オートメーションに必要なハードウェアをM&Aで集め、ソフトウェア資産を現場で積み上げ、さらにこれらを結ぶ「i-Automation」というコンセプトを打ち出してきた。インダストリー4.0に刺激を受けながら、オムロン独自のカタチを作ってきた3年間だったといえる。

新たに展開するIoTサービス基盤「i-BELT」

MONOist 新たに立ち上げたIoTサービス基盤「i-BELT」についてはどういう位置付けとなりますか。

宮永氏 「i-BELT」は、が2017年4月に発表したAI搭載マシンオートメーションコントローラー(※3)を軸とし、制御機器からのデータなどを簡単に収集・分析し、活用するためのIoTサービス基盤で2017年10月から展開を開始する。基本的な仕組みとしては、AI搭載マシンオートメーションコントローラーを基軸に、製造現場内で情報のサイクルを実現するという仕組みだ。

 AI搭載マシンオートメーションコントローラーで現場のバラバラなフォーマットのデータを整理し、それをサーバなどデータ蓄積基盤に送って「見える化・分析」を実現し、さらに分析して得た結果をアルゴリズム(制御モデル)として生成。それをAI搭載マシンオートメーションコントローラーに戻し、同コントローラーで現場機器を最適に制御するという仕組みである。これにより、オムロンの制御のノウハウを新たなビジネスモデルへと結び付けることができるようになる。

(※3)関連記事:オムロンが立ち上げるのは“標高10m以下”の最もエッジ寄りなIoT基盤

photo 「i-BELT」の全体イメージ 出典:オムロン

MONOist 現状では「i-BELT」はオムロンのAI搭載マシンオートメーションコントローラーが基軸になっていますが、オムロンの制御ノウハウやソフトウェアだけを切り出してビジネス化する可能性もあるのですか。

宮永氏 現状ではできないが、将来的には検討していく。ハードウェアにソフトウェアを組み込んで、それを不可分のものとして販売するのではなくて、ソフトウェアのみを販売するという可能性は十分あり得る。現状ではオムロンのハードウェアにしか対応していないが、将来的にデータやソフトウェアの流通性が生まれてくれば検討を進めていく。その際には、ハードウェアベンダーなどにも賛同をいただく必要は出てくるが、オムロンの制御ノウハウに価値を見いだしてもらえるのであれば、可能性はあると考えている。

 製造業の仕組みが大きく変わろうという中で、限られた市場で競合するという関係性は今後大きく変わっていくと考えている。競合という存在がなくなっていく状態だ。その中で、自分たちの強みやコアコンピタンスを意識しつつ、顧客視点で新たな価値を生み出せるのであれば、協力できるところは協力していく。

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