2014年10月以降生産の日産車121万台がリコール、原因はルール軽視の姿勢製造マネジメントニュース

日産自動車は、完成検査に不備があり初回車検を迎えていない約121万台に再点検を実施すると発表した。リコールは今週中に国土交通省に届け出て、速やかに実施する。

» 2017年10月03日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
日産自動車の西川廣人氏

 日産自動車は2017年10月2日、横浜市の本社で会見を開き、完成検査に不備があり初回車検を迎えていない約121万台に再点検を実施すると発表した。リコールは今週中に国土交通省に届け出て、速やかに実施するとしている。

 リコール費用は現時点で250億円を見込む。対象となった車両に関し、日産自動車 社長の西川廣人氏は「検査自体は行われており、安全に使えないということではない。国土交通省との約束が守られていなかった」と説明した。原因の調査には「最低でも1カ月かける。誰がどこまで関わっていたかを含め、私の納得がいくまで調べる。これまでに他社に対して厳しく対応したように、社内にも厳しくあたっていく」(西川氏)。

国土交通省との「約束」とは

 車両製造の最後に1台ずつ実施する完成検査工程において、自動車メーカーごとの社内規定に基づき認定を受けた「完成検査員」が検査を実施するよう国土交通省は定めている。完成検査は「国に届け出て承認された方法で、委託を受けて行うもの。国の代わりに行う作業で、届け出た通りに実施しなければならない性格もある工程だ」(西川氏)。

 これに対し、日産自動車と日産車体の国内全工場で、認定を受けていない「補助検査員」が検査の一部を行っていた。工数不足ではなかったとし、「検査員の自覚が欠如していた」(日産自動車)というのが要因のようだ。

 補助検査員は、現場でのトレーニングなどを経て届け出ると完成検査員として認定を受けられる。認定プログラム制度やトレーニング環境自体は国土交通省も承認したものであり、機能していた。また、実際の完成検査に補助検査員が携わる場合には、完成検査員が監督するルールだった。完成検査の作業のシフトも、このルールに従っていたという。

 「実績を積んで補助検査員に実力があっても、届け出て完成検査員として登録しなければならない。作業の質が確保されていれば補助検査員でもいいということにはならない。決められた手順を守るのはモノづくりの基本だったはずだ」(西川氏)。

対象は初回車検前の車両のみ

 リコール対象となるのは2014年10月〜2017年9月に製造されて初回車検を迎えていない軽自動車以外の車両だ。自家用の乗用車は新車登録後3年で車検を受けなければならない。再点検の内容については、国土交通省と日産自動車で協議を進めて確定させる。

 完成検査の不備が始まった期間については現在も調査中としており、2014年10月以前にも完成検査が正規に行われていなかった可能性はあるが、初回車検を終えた車両はリコール対象に含まれない。西川氏は「リコール対象外の車両のユーザーに対してもきちんと説明していきたい」と話した。

 新車登録前の車両については、OEM(相手先ブランドによる生産)車両を含む3万4000台で完成検査が正規に行われておらず、全国の日産販売店のサービス工場(指定工場)で完成検査相当の点検を実施する。点検を終え次第、2017年10月3日から新車登録を再開する。2017年9月29日の時点では販売を一時停止する在庫の台数について6万台と発表していたが、これは多めに見積もった数字だった。

 電気自動車「リーフ」の新モデルは2017年10月2日に発売予定だった。納期について「影響はもちろんある。まずはお客さまの不安の解消と正常の業務体制に戻したい」(西川氏)という。

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