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» 2017年10月25日 10時00分 公開

いまさら聞けないHILS入門(12):HILSによる故障診断機能のテスト(その2) (1/3)

車載システムの開発に不可欠なものとなっているHILSについて解説する本連載。今回は、スロットルポジションセンサーと回転センサーの故障に関するテストについて紹介します。

[高尾英次郎,MONOist]

 前回に引き続きHILSを使ってECUのテストを行います。今回は、スロットルポジションセンサーと回転センサーの故障に関するテストについて紹介します。

スロットルポジションセンサー故障

 スロットルポジションを検出するスロットルポジションセンサー(以下、SPセンサー)の最も単純なものは、図1に示すような摺動接点式の可変抵抗器ですが、故障としては表1のようなものが考えられます。

図1 図1 SPセンサー(摺動接点式可変抵抗器)(クリックで拡大)
No. 故障項目 故障状態
正常 スロットル開度に応じて図1(b)の電圧を出力する
(1) 故障 電源回路断線 常時GND接続状態(0V)となる
(2) GND回路断線 常時センサー電源電圧(5V)となる
(3) 信号回路断線 入力端子が絶縁状態、入力電圧不定となる
(4) 摺動接点の接触不良 断続的な抵抗増加により不規則な電圧低下を発生
表1 SPセンサーの故障

 SPセンサーのHILSインタフェースは、連載第3回の図7の様にD-Aコンバーターを使用します。正常状態のセンサー回路の出力特性は、一例として正常電圧範囲を0.5Vから4.5Vとする図1(b)の様な特性とします。

 この特性により、電源回路断線時の0VやGND回路断線の5Vを正常状態から簡単に識別することが出来ます。

HILSインタフェースでSPセンサー故障を実現する

電源回路断線、GND回路断線

 (1)「電源回路断線」故障時には、エンジンプラントモデルの状態に関係なく0Vを出力し、一方(2)「GND回路断線」故障時には5Vを出力することにより、故障状態を再現することができます。

信号回路断線

 (3)「信号回路断線」については、連載第11回の図1(b)と同様に実際の断線状態を作り出すことが必要で、A-Dコンバーターの出力側にさらに有接点リレーを追加する必要があります。しかし、リレーを追加する方法はHILSインタフェースを複雑化します。

 実用的なテスト方法は、断線時のECU入力端子電圧の変化を測定記録し、同じ電圧変化をA-Dコンバーターで作り出す方法で代用します。電圧は、多くの場合0Vになります。実際の断線と完全に同じとはいえませんが、疑似的な断線状態とすることができます。

摺動接点の接触不良

 摺動接点を持つポジションセンサーは、長期間使用すると摩耗により接触面が劣化して(4)「接触不良」となるリスクがあります。接触不良とは、通常の接点よりも接触抵抗が若干増加する状態から、接触抵抗が大きく増加してほとんど断線の状態まで、いろいろな状態を含んでいます。

 この現象は、D-Aコンバーター出力電圧を図1(b)の電圧から、断続的にノイズ状の電圧低下を発生することによって再現できます。いろいろな接触不良状態には、いろいろな電圧低下のパターンにより対応します。どのようなパターンをテストするかは、ECUの故障検出ロジックを考慮します。

 故障判定ロジックの一例として、ECUがスロットル位置を停止させている時にセンサーの電圧が0.5V×0.01秒以上低下することが10分間に3回以上発生したら、警告を発する故障検出ロジックを考えます。このロジックに対して、電圧、時間、頻度などのパラメーターを変えて図2の(1)、(2)、(3)のテスト波形を作成しテストを行います。

図2 図2 SPセンサーのテスト波形(1)〜(3)(クリックで拡大)

 接触不良は抵抗膜の特定の場所で接点摺動中に発生することが多いので、スロットル動作に伴ってセンサー電圧が変化する中で電圧低下を起こす必要があります。この状態をテストするには、図3の様に正常に動作するプラントモデルに電圧低下モデルを組み合わせる必要があります。

図3 図3 SPセンサーのテスト波形(4)

 このような電圧変化をHILSで発生するには、例えば図4のような仕組みの故障発生方法が考えられます。故障波形をあらかじめファイルに登録しておきUI画面の「故障波形UI」で波形番号(1)を選択します。

 テスト開始前にプラントモデルを作動させて、SPセンサーは、正常値を出力させます。テスト波形(1)〜(3)の場合は、エンジン回転数と負荷を一定の状態で作動させSPセンサーの電圧をテスト電圧に合わせます。テスト波形(4)の場合は、エンジン負荷を変化させる中でエンジンプラントを作動させてSPセンサー出力を変化させます。

 テスト開始のタイミングで「故障発生スイッチ」を押し、SPセンサー電圧とテスト電圧を合成します。故障波形が終了したら通常のSPセンサー出力に戻るようにします。

 これらのテストによって、制御に顕著な変化が生じる前に、故障を検出して警報を表示し不具合を未然に防止できるなら、テスト結果は合格と言えるでしょう。

図4 図4 SPセンサーの故障発生方法(クリックで拡大)

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