夫婦陶芸家と3Dプリンタが出会って生まれる、インスタ映えするカワイイ一皿伝統工芸×DMM.make=?(1)

「森の種陶工所」は森和良氏、森明子氏夫妻による陶芸家ユニット。Instagramの「器病」ユーザーからひそかに注目を集めるかわいい器作品は石こう型により作られている。見る人の目を引くユニークな形が作れる石こう型だが、作るのはとっても大変! 今回はDMM.make が3Dプリンタを使って陶芸家の型製作をお手伝い。3Dプリンタで型製作の時間を削減して、創造的な時間を増やす。

» 2017年11月13日 10時00分 公開
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 旅先の鮮やかな風景、ヘルシーでおいしそうな食事、カラフルでかわいい雑貨など、さまざまな人たちの日常の写真投稿でにぎわう、SNSの「Instagram(インスタグラム)」が今ブームだ。海外セレブや芸能人、スポーツ選手なども、ファンたちと交流しようと、日々、Instagramで写真投稿し、コミュニティーがホットに盛り上がっている。

 その中で生まれたのが、「インスタ映え」という言葉。文字通りの意味で「Instagramに投稿したときに映える」、要は「フォトジェニックである(写真映えする)」ということだ。おしゃれなカフェの食事や、色鮮やかに盛り付けたランチボックスなども、まさにインスタ映えするテーマだ。

 自宅で作る食事も、まるでカフェのメニューのようにスタイリッシュに盛り付けて演出し、Instagramに投稿して楽しむ人たちもいる。インスタ映えする盛り付けでは、どんな器を選ぶかも大事な要素になる。器選びの方に熱中し、「#器病」というハッシュタグができるほどのめりこむ人たちもいるという。器病をわずらうインスタグラマーの間では、陶芸作品の人気が高い。

 インスタ映えすること必至なユニークでかわいい陶芸作品の数々を生み出すのが、陶芸家である森和良氏、森明子氏夫妻によるユニット「森の種陶工所」だ。

森の種陶工所のギャラリー、エントランス:写真右上につり下がるパイプチャイムも陶工所による作品だ

写真左が森明子氏、右が森和良氏。森の種陶工所は夫婦の陶芸家ユニット

 森の種陶工所は、日常使いの器やアクセサリー製作、「家シリーズ」などの創作活動など幅広く展開する。森和良氏は会社勤めを辞めて渡米した後、陶芸の道を歩むことを決意。窯元での6年の修業期間を経て、2000年に「やきもの妙見工房」を開窯。2015年には森明子氏が工房の活動に加わって、「森の種陶工所」としての活動を開始。最近では、厳しいセレクションで知られる「クラフトフェアまつもと」(松本クラフト推進協会が主催)にも出展し、活動の幅をより広げている。

かわいらしい「家シリーズ」の展示:ろくろを使った作品

 同工房では、「陶芸」といえばまず思い浮かぶ、ろくろをまわして製作する作品の他、石こうや粘土の型を使った作品にも取り組んでいる。ろくろによる製作では正円状かつシンプルなものに限定されるが、型を使えばオーバルや花形などさまざまな異形作品も製作しやすくなる。器病なインスタグラマーたちが強く心を引かれるのは後者による作品のようだ。にぎやかな盛り付けが映える大皿も人気が高いという。

普段使いの器作品の販売:石こう型を使った作品

 石こうなどで製作した型に粘土のシートを押し付け、少しずつ粘土を型へたたき込みながら成形していく。成形したものは1〜2週間くらい乾燥させてから、窯へ入れて焼き上げる。

従来の製法による石こう型と、製作した器

森明子氏による、石こう型を用いた成形作業

 ろくろでの作品製作において、美しい形状を作るための勘所をつかむには、とにかく長い年数を重ねるしかない。一方、石こう型による作品は、型があることで作業がある程度平準化され、経験年数に関係なく美しい形状が作れ、「陶芸の経験が比較的浅い人でも取り組みやすいというメリットがある」と森和良氏(以下、森氏)は説明する。

 手作業での型製作では、左右対称の形状や、一定のパターンを伴った形状を作るとなると、とても単純な形状なのに、手間と時間が掛かってしまう。一方、3Dデータを用いる3Dプリンタの造形では難しくない作業だ。そこで、3Dプリンタで型の原型(下地)を作っておけば、型製作の負担は大幅に減り、細かい部分をデザインする作業に専念できる。

 今回はDMM.comによるモノづくりのためのプラットフォーム「DMM.make」のスタッフたちが、森夫妻の作品作りを3Dプリンタで支援した。

アナログとデジタルが出会って生まれるもの

 3Dプリンタで造形するにあたってはデザインの3Dモデル化が必要だ。森氏による手描きイラストを基にDMM.makeのスタッフが3Dモデルを製作した。今回製作したのは、シンプルなオーバル状の皿だ。形状は比較的単純だが、長手方向で300mmほどとサイズが大きめなため、従来製法での型製作は非常に時間と手間がかかる。

 今回製作する形状は、陶芸家が手作業で作る際には手がかかる形状であっても、3Dモデルを製作する側にとっては単純なデータだ。秋葉原が拠点のDMM.makeと、大阪にいる森氏と電子メールをやりとりしながら、進捗をフィードバックして打ち合わせを進めていく。「もっと深くして」など森氏からの修正リクエストをDMM.makeのモデラ―が細やかに対応し、デザインでOKが出た段階で造形へ進む。一度形状ができてしまえば、微修正が自在なのも3Dデータの利点だ。

森氏のデザインを基に起こした3Dデータ

 3Dプリンタには石こうで造形できる装置がある。しかし同じ石こうであっても、3Dプリンタ用の素材で本当に問題がないのかが懸念事項であり、かつ森氏の希望するサイズでそのまま石こう型を作るとコストが高くついてしまう。型費用を現実的な額に抑えるため、DMM.makeが「石こう型を作成するための型」を3Dプリントする方法を提案。同社が、森氏が普段使用している石こう材料を購入し、光造形で製作した型で石こう型を作成する流れとなった。

光造形による型

3Dプリンタ型で製作した石こう型

 3Dプリンタの型はコストダウンするため4分割して製作。石こうでの成形時、型のつなぎ目の筋が若干出てしまうが、離型後に軽くやすりを掛けるなどの手作業で簡単に除去できる程度だ。使用感は普段使用している石こう型と何ら変わりなく、良好に離型できたということだ。

3Dプリンタ型で作った石こう型(左上)を用いて、粘土で成形した皿(右)

ここからもっと広がる! かわいい器の世界

 今回の取り組みで、型製作について大幅な手数削減となったという。また今回のデータを基にしてDMM.makeにメール1本で依頼をすることで、器のサイズを大きくしたり、小さくしたり、浅くしたり、深くしたりが自在になる。手作業の修正だと、これらは作り直すしかない。森夫妻が、一度作成した石こう型に手作業でデザインを施すこともできる。1つのデータがあるだけでも、作品のバリエーションが大きく広がっていくだろう。

 3Dプリンタは造形サイズが大きくなればなるほどコストが掛かり、作れる大きさも装置ごとに限界がある。逆に、さまざまな形をした小さなものを一度に作るのがとても得意だ。森氏は、今回の取り組みを通して知った3Dプリンタの特性から、小さな器のセットや、部品を組み合わせるタイプの器のアイデアが浮かんだ。

DMM.makeによる型から作った小物作品「焼き上がりの形には満足しています」(森氏)

 森の種陶工所では、2017年11月11〜12日に堺市で開催するクラフトフェア「灯しびとの集い」や、2018年以降に予定している大手百貨店などでの展示に合わせて作品準備を進めている。3Dプリンタの型を利用した作品も展示する予定だ。これから森の種陶工所の森夫婦が生み出す、ユニークでかわいい作品の数々に要注目だ。

 一部の作業に3Dプリンタによるデジタル技術を用いて陶芸家の負担や時間を減らし、その分で陶芸家がユニークな形状にチャレンジする余力ができる。

 また一部の作業がデジタルになったからといって、アナログの良さが失われるわけではない。3Dプリンタで元になる型を作る以外は、従来工法と変わりなく、実際に自分の思い描く形になるよう、微妙なアールを付けるなど陶芸家が手作業で仕上げていく。同じ型で作られた器であっても、作るタイミングや陶芸家によって、形や味わいが変わり、工業製品のように同じものはできることはない。陶芸家の創造力をさらに刺激し、陶芸作品の世界が、よりクリエイティブに輝いていくことだろう。

DMM.makeが、伝統工芸を3Dプリンタで支援します!

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(写真左から)DMM.com .make事業部 3Dプリント部門の部長/プロデューサー 川岸孝輔氏と同 3Dプリント企画のマネージャー 村上亜香子氏、森氏の現地打ち合わせ風景

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