現場で見えないものを見る世界、スマート工場で生まれるAIによるブレークスルー製造業IoT

スマートファクトリーが注目を浴びる中、製造業の中でもIoTを活用したデータ取得を進める動きは広がりを見せている。しかし、集めた広範なデータを「活用する」フェーズで立ち止まるケースが多いのが現状だ。製造業においてデータ活用のもたらす価値とはどういうものなのだろうか。工場のデータ活用支援を多く手掛けるDATUM STUDIOに話を聞いた。

» 2017年11月13日 10時00分 公開
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スマート工場化を目指す製造業が直面するデータ分析の壁

 ドイツの「インダストリー4.0」や日本の「Connected Industries」などへの関心が高まる中、製造業におけるIoT活用は活発化している。特に加速しているのが生産領域でのスマート工場化への取り組みである。

 多くの製造業において、スマートファクトリーの理想像とされるのが、マスカスタマイゼーションである。マスカスタマイゼーションは、カスタム品の生産を大量生産(マスプロダクション)の効率で実現することを目指すもので、実現するためには注文状況などに合わせて自律的に変化する工場が必要だとされている。そのためには、工場内のあらゆる製造設備などが環境情報などを取得しながら、情報をやりとりし、その情報やデータを基に最適な判断を下すことが求められる。これらの理想像を目指し、日本の製造業でも最初の一歩として工場内に無数のセンサーを配置し生産に関するさまざまな情報の取得を始めている。

 ただ「この集めたデータをどう活用してよいのか分からない」と足踏みしている製造業が多いのが現状だ。確かに、工場内の各設備や装置、あるいは製造ラインの各所に取り付けたセンサーから多様なデータを収集し、リアルタイムに近い形でモニタリングすることは可能となった。各装置や製造ラインに発生した異常値を迅速に検出し、対処するといったことも行われている。これらを「見える化」として工場内のディスプレイ(アンドン)などに表示し、作業員に周知するだけでも改善につながるケースもあるだろう。ただ、その先を見据えたときに「データをどのように扱えばよいのか」という点で限界が生まれているのだ。

 こうしたデータ活用で行き詰まりを感じた製造業を支援しているのがDATUM STUDIOである。

データ分析の専門家が行う工場支援

 スマートファクトリーはもちろん、IoTなどによるデータ活用は、データを蓄積した後、これらを分析し、新たな知見やノウハウを生み出すというところまで進まないと価値は生まれない。データの「見える化」により、現場の作業員が経験とデータの変異を照らし合わせて価値を引き出せる場合も多いが、それ以上に価値を引き出すにはデータ分析の専門家の助けが必要となる。

 DATUM STUDIOは、データ分析コンサルティングやサポートを手掛ける「データ分析」に特化した専門企業である。2014年8月に設立したばかりのスタートアップだが、設立からのわずか4年目でコンサルティング実績はすでに100社を超え、毎年300%以上の売り上げ拡大を続けるなど、大幅な成長を続けている。

photo DATUM STUDIOの取締役 CAO(Chief Analytics Officer)である里洋平氏

 DATUM STUDIOの取締役 CAO(Chief Analytics Officer)である里洋平氏は「データを最大限に活用するための重要な要素として『そのビジネスに関する経験と専門知識』『統計解析や設計手法に関する深い理解と知識・経験』『データ処理に関するコーディング経験・知識』といった3つがある。特に注力しているのがAI(人工知能)を活用したアプローチで、IoTで集めた大量のデータを統計解析や機械学習により分析・モデル化することで、さまざまな事象の相関関係を解き明かしたり、将来を予測したりできます」とDATUM STUDIOの強みについて述べている。

 こうしたDATUM STUDIOの高度な分析力や提案力が高く評価され、ここ最近では製造業からのデータ分析ニーズが急速に高まっている。「特に製造業においては、生産設備の故障予知や予防保守、製品の異常検知、需給予測、歩留まりの最大化など、将来予測に関するコンサルティングの依頼が急増しています」と里氏は説明する。

 製造業のデータ活用のフェーズについて里氏は「1年ほど前までは工場内でセンサーを新たに取り付ける話なども多くありました。しかし今では、センサーからさまざまなデータを取得できる環境は既にできており、データが日々蓄積され続けているという工場が多くなっています。ただ、その集まったデータから有効な価値を引き出すところで戸惑っているようなケースが多いと見ています」と現状について述べる。

先入観を排除したデータ分析で製造現場に“気付き”を与える

 DATUM STUDIOでは、AI関連技術ともされる統計的機械学習の技術を主に活用してデータ分析を行う。統計的機械学習には「学習したデータ範囲の事象でしか結果を予測できない」や「アルゴリズムがブラックボックス化し人間に理解できない」などの制約があるが、DATUM STUDIOではこれらの障壁を低減する工夫をさまざまに取り入れていることが特徴である。

 同社の依頼は、蓄積したデータを受け取って分析する形で進む場合が多いが「状況にもよりますが、できる限り現場のヒアリングなども組み合わせて、データ分析の指針を決めていくようにしています。現場の違和感などを組み合わせて学習の方向性を定めることで、分析精度を高めることができます」と里氏は述べている。

 さらにブラックボックス化せずに現場に統計的機械学習の勘所を伝達するために効果的に活用しているのが、ディシジョンツリー(決定木)のモデルである。多様な事象(データ)間の相関関係を、人間にとって判別しやすいグラフィカルな形で表現する。

 例えば、ある製造業から依頼を受けた故障予測分析のケースでは、製造ラインの要所に配置したセンサーから収集した三相電流、三相電圧、電機温度、同軸度、減衰力などのデータに対して、72時間前、48時間前、24時間前という時系列でモニタリングし、データマイニングを実施。「24時間前のB相電流がある説明変数X3を下回った場合、故障種類Aの発生率が89%に高まる」といったフローを示した。

photo 図1 故障予測分析の決定木モデル(クリックで拡大)出典:DATUM STUDIO
photo 図2 故障予測分析の概念図(クリックで拡大)出典:DATUM STUDIO

 これらのデータ分析により「先入観を排除したデータ分析を行うことで、これまで熟練工の頭の中にしかなかった勘や暗黙知を裏付けたり、誰も気付いていなかった新たな知見を発見できたりする場合があります。現場で見えなかった新たな相関が見えることもあります」と里氏は語る。

スマート工場のデータ分析にはハイブリッドクラウドが最適

 こうしたデータ分析を進めていくことで重要になるのが、これらを支えるデータ基盤である。オンプレミスで運用しているデータベースには容量の限界があるため、データを間引いたり、平均値をとって丸めたりして保存していく企業も少なくない。しかし「精度の高いデータマイニングや機械学習を行うためには正常系も異常系もデータを蓄積し続けることが重要です」と里氏は説く。

 これらの課題に対し、積極的な支援を進めているのがマイクロソフトである。マイクロソフトでは以前から工場内のデータベースとして「SQL Server」の導入などで数多くの実績を持つ。さらに最近ではクラウド基盤「Azure」を強化する方針で、エッジからクラウドまでシームレスなデータ基盤の構築に力を注いでいる。

photo 日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 データ&AIプラットフォームマーケティング部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの岡本剛和氏

 日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 データ&AIプラットフォームマーケティング部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの岡本剛和氏は「マイクロソフトは長年にわたりオンプレミスにおいて現場で使えるソリューションを培ってきました。そこにクラウドを融合することで、かつてないスケーラビリティを得ることができます。膨大なデータをコスト効率よく長期保管する他、データソースに基づいて機械学習モデルを作成する際にもクラウドならではの豊富なコンピューティングパワーを活用することが可能となるのです」とクラウドの価値について述べる。

 ただ、マイクロソフトでは全てをクラウドに振り切っているわけではなく、オンプレミスやエッジ領域での強化も進め、最適なデータ保有基盤を選択できることが他のベンダーにない強みとなっている。

 岡本氏は「クラウドだけでIoTシステムの全てが完結するわけではありません。オンプレミスでデータを運用する最大のメリットは遅延の低さにあります。特に秘匿性の高いデータを基にしたリアルタイム性の高いデータ分析はオンプレミスで実装・運用することになるでしょう。先ごろ発表したAzure IoT EdgeやデータベースのSQL Server 2017など、オンプレミスやエッジ環境での強化も進めています。もちろんこれらはAzureとの連携も可能であり、ハイブリッド環境でシームレスに稼働するソリューションをワンストップで提供できます」とマイクロソフトの強みを強調している。

 里氏も「いくらデータ分析をクラウドで行いたくても、工場などではデータを工場外に持ち出せないケースも多くあります。一方で、機械学習のさまざまなアプリケーションを活用し、学習を進めるにはクラウドでのスケーラブルな環境の方が向いています。こうしたオンプレミスとクラウドの両方においてデータを最適な形で活用できる環境というのはマイクロソフト以外に選択肢はなく、スマート工場などには最適なデータ基盤だといえます」と述べている。

AIがもたらす理想の製造現場の在り方

 こうしたデータ活用基盤とAIなどによる分析などが実現した後に訪れる理想の製造現場の姿とはどういうものなのだろうか。

 里氏は「ハイブリッドのデータ基盤の元でAIをはじめとする高度なデータ分析を実践することで、さまざまな製造プロセスの自動化を実現できます。そして、そこで手の空いた現場の人材を、よりクリエイティブな業務に配置することが可能となるのです」と述べる。

 AIやロボットなどは人の雇用を奪うという話もあるが、里氏はこの話を全面的に否定する。

 「周知の通り、機械学習など現在のAI技術は、与えられた情報を元にしないと知見を導き出せません。そのため思いもよらない新たな価値などは、AIに生み出すことは不可能なのです。工場などで考えた場合、生産工程の抜本的な改善や新たな手法の開発などはAIには行えないということです。そういう意味では既存の工程改善などはAIなど機械に任せ、そういう新たな価値や方向性などを定めるような作業に、より多く人間の力を使うべきなのです」(里氏)

 機械に任せられることは機械に任せ、人は人が持ち得る価値を発揮する工場。これこそがDATUM STUDIOとマイクロソフトが提案するスマートファクトリーの理想の姿なのだ。

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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2017年12月14日