AIを活用し、速度や燃料消費量などの船舶性能を推定する技術を実証製造ITニュース

富士通研究所は、AIを活用して船の速度や燃料消費量など船舶性能を推定する技術の実証を行い、船舶性能を誤差1.5%以下で予測することに成功した。2018年中に富士通からサービス提供を目指す。

» 2017年11月22日 09時00分 公開
[MONOist]

 富士通研究所は2017年11月1日、商船三井、宇部興産海運と共同で、船の速度や燃料消費量など船舶性能の推定技術の実証を行い、さまざまな気象・海象条件での実用性を確認したと発表した。AI(人工知能)を活用し、船舶性能を正確に推定して燃費を削減する航路を予測する技術で、富士通では位置情報を活用したクラウドサービス「FUJITSU Mobility Solution SPATIOWL」のメニューの1つとして搭載し、2018年中のサービス提供を目指す。

 実証に用いられた推定技術は、富士通研究所が東京海洋大学と共同で開発した。富士通のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を活用した高次元統計解析技術により、高い推定精度を実現している。今回、富士通研究所では、実運用中の商船三井の外航船、宇部興産海運の内航船が集めた風向、風速、主機回転数、燃料消費量などの運航データを用いて、高次元統計解析技術に基づく船速、燃料消費量の予測を行い、実測値との誤差を検証した。

 検証では、運航データ全体からランダムに全体の9割分のサンプルデータを選択して学習用データとして利用し、残りを予測用データとして利用して平均絶対誤差率を算出。これを10回繰り返し、平均を実測値との推定誤差の結果とした。なお、船速の誤差評価を行う際は、船速以外のデータと船速データとの関係を学習し、その学習結果と船速以外のデータから船速を予測した。燃料消費量の誤差評価も同様に行った。

 技術実証の結果、船速の推定誤差は外航船で1.4%、内航船で1.1%。燃料消費量の推定誤差は外航船で0.8%、内航船で0.2%となり、推定誤差1.5%以下で船舶の性能を予測できることを確認した。

 同技術を用いて船舶の実海域性能を正確に把握することで、航路上の気象・海象条件に応じて燃費や所要時間の面で最適な航路を知るウェザールーティングを高精度化し、燃費削減効果の向上を図れる。

 この推定技術については、東京海洋大学の小型練習船で収集した近海での運航データを用いた検証により、船舶性能を高精度に推定できることを確認していた。今回、同技術の実用化に向け、よりさまざまな気象・海象条件のもとで、実海域を実際の商船が運航したデータを用いて推定精度の検証を行ったものだ。

photo ウェザールーティングのイメージ図 出典:富士通研究所
photo 高次元統計解析技術を適用した主機回転数・風速に対する予測船速の例 出典:富士通研究所

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