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» 2017年12月15日 09時00分 公開

地方発!次世代イノベーション×MONOist転職:陸海空ロボットの厳しい使用環境を再現――福島ロボットテストフィールド(福島県)

「次世代の地域創生」をテーマに、自治体の取り組みや産学連携事例などを紹介する連載の第6回。福島県で建設が進んでいる、ロボットのさまざまな使用環境を再現して試験・訓練ができる施設「福島ロボットテストフィールド」を紹介する。

[MONOist]

イノベーションの概要

 現在福島県では、「福島ロボットテストフィールド」の建設が進んでいる。県北東部、海岸沿いの南相馬市にある復興工業団地内、東西約1000m、南北約500mのという広大な敷地で、2018年度からの順次開所の予定だ。施設の概要などが記載されたパンフレットによると、完成すれば「物流やインフラ点検、大規模災害などに活用が期待される(中略)陸・海・空のフィールドロボットを主対象に、実際の使用が想定される環境を再現しながら、研究開発、実証試験、性能評価、操縦訓練を行うことができる、世界に類を見ない一大研究開発拠点」となる。

福島ロボットテストフィールド全景 福島ロボットテストフィールド全景

 同フィールドには、「無人航空機エリア」、「水中・水上ロボットエリア」、「インフラ点検・災害対応エリア」、「開発基盤エリア」が作られる。その具体的な内容を知ると、福島ロボットテストフィールドへの期待と、役割の大きさが理解できる。

 無人航空機エリアには、「滑走路・滑走路付属格納庫」、「広域飛行区域・通信塔」、夜間飛行、物件投下などを実施できる航空法適用外の「緩衝ネット付飛行場」、「ヘリポート」、「連続稼働耐久試験棟」、強風、突風への耐性試験もできる「風洞棟」が作られる。通常の飛行だけでなく、衝突回避、不時着、落下などの試験や、約13km南の浪江町に作られる滑走路との間で長距離飛行も行うことができる。

 水中・水上ロボットエリアは、水中のインフラ点検や災害対応の実証試験ができる国内唯一の施設。水害で冠水した市街地を再現する「水没市街地フィールド」、ダム・河川・港湾などを再現する「屋内水槽試験棟」が整備される。

 インフラ点検・災害対応エリアもまた、国内唯一の試験場。「試験用橋梁(きょうりょう)」、「試験用トンネル」、「試験用プラント」、市街地を再現し、車両やがれき、点検対象物などを設置して試験や訓練ができる「市街地フィールド」、災害時の道路遮断や土砂崩落を再現する「がれき・土砂崩落フィールド」が作られる。

 開発基盤エリアでは、各試験の準備、加工・計測のほか、風、雨、防水、防じん、霧、水圧、温湿度、振動、電波に対する試験を実施可能。研究者の活動拠点、大規模会議や展示会の会場ともなる。

イノベーションの地域性〜福島といえば……

 福島県の産業別の従事者人口(2015年)は、第一次、第二次、第三次産業の順に、6.5%、29.4%、60.2%。全国の3.8%、23.6%、67.2%と比べると、第一次、第二次産業に従事する人の割合は高いが、1995年と比較してみると、第一次産業は約4ポイント、第二次産業は約7ポイント減少し、第三次産業従事者の比率が高くなっている。

 地理的には、阿武隈高地と奥羽山脈によって、海側から浜通り、中通り、会津の3つの地方に分けられる。気候もそれぞれ異なり、浜通りは年間平均気温が13度程度で、雪はほとんど降らないのに対し、会津は11度程度で雪深い。そのため生産される農作物も異なるし、歴史的な背景にも違いがある。福島県観光復興推進委員会が運営する観光情報サイトでは、「豊かな大自然と会津藩士ゆかりの名所旧跡が点在する『会津地方』、美しい花々とみずみずしい果実がいっぱいの『中通り』、太平洋に面し、雄大な景観を眺める『浜通り』」と紹介している。

奥会津の大内宿 奥会津の大内宿

 福島ロボットテストフィールドができるのは浜通り。東日本大震災や原発事故によって失われたものは計り知れないが、最先端の取り組みに挑戦する姿からは底力が感じられる。

ここに注目!編集部の視点

 福島ロボットテストフィールドは、「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」の一環。イノベーション・コースト構想は、「浜通り地域などの産業基盤の再構築を目指し、廃炉やロボット技術に関する研究開発拠点の整備を始め、再生可能エネルギーや次世代エネルギー技術の積極導入、先端技術を活用した農林水産業の再生、さらには、未来を担う人材育成、研究者や来訪者に向けた生活環境の確保や必要なインフラなどさまざまな環境整備を進める国家プロジェクト」(福島県のWebサイトから引用)だ。世界中が日本を注目する2020年の東京五輪開催時には、力強い復興の姿を発信し、地域再生のモデルとなることを目指している。

 ロボット関連では、福島ロボットテストフィールドに先立ち、福島県、経済産業省・内閣府共同で、2015年から「福島浜通りロボット実証区域」事業を実施しており、ロボット・ドローンに関連した事業に取り組む企業や大学、研究機関などに対し、浜通り地域の橋梁(きょうりょう)、トンネル、ダム・河川、山野などを実証試験や操縦訓練の場として提供している。今年1月、経済産業省とNEDO、福島県、南相馬市、自律制御システム研究所が、世界初となる、完全自律制御による回転翼ドローンの長距離荷物配送の実証試験を行ったほか、2017年11月時点で、90件以上、のべ350日以上も利用されている。

 災害や点検といった観点での専用フィールドを作るという取り組みが、大災害を経験した福島で進む意義は大きい。人が立ち入れない、あるいは危険を伴う場所、むしろ人よりロボットの方が適していることなど、ドローンも含めたロボットの活用が福島ロボットテストフィールドによって加速するのは明らか。福島県では、ロボット産業を集積させ「ふくしまロボットバレー」の形成を目指している。

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