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» 2017年12月26日 10時00分 公開

MONOist IoT Forum 東京 講演レポート:AI活用は既に製造現場改革の現実解、簡単お試しで成果が得られる時代に

ビジネスに変革をもたらすといわれるAIだが、使いこなすためには巨大なコンピューティング環境と専門知識が要求された。マイクロソフトはこのハードルを下げ、製造業の高付加価値化を支えるためのソリューションの拡充を進めている。IoTが生み出す膨大なデータをいかにして分析し、製造現場で活用していくべきか――。「MONOist IoT Forum in 東京」に登壇した日本マイクロソフトの畠山大有氏がAIの実践的活用法を解説した。

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 顧客が求める価値が「モノ」から「サービス」にシフトしていく中で、日本の製造業も顧客を中心に「フィジカル(製造設備、原材料、プロダクト、予防保全など)」および「デジタル(スマートプロダクト、サービスエコシステム、コネクテッドコンシューマーなど)」を組み合わせた最適な形へと変化していく必要がある。こうした製造業の変化を価値に変える原動力となるのがデータだ。IoT(モノのインターネット)やクラウドコンピューティングにより、製造現場のさまざまなデータを簡単に収集できるようになり、収集した大量のデータを蓄積できるようになったからである。

 しかし、その大量のデータを「価値」に変換するためには、分析や知見の創出などが必要となる。そのカギとなるのがAI(人工知能)技術である。2017年12月4日に都内で開催された「MONOist IoT Forum in 東京」では、日本マイクロソフト コマーシャルソフトウェアエンジニアリング本部 Principal Software Development Engineer 畠山大有氏が登壇し「データからビジネス変革をもたらすMicrosoft AI and IoT Platform」をテーマに、製造現場におけるAI活用の価値と手法について紹介した。

AIを使いこなすために製造業に求められるもの

photo 日本マイクロソフト コマーシャルソフトウェアエンジニアリング本部 Principal Software Development Engineer 畠山大有氏

 従来のAI技術は、製造業を含めた一般企業が容易に手を出せるものではなかった。本格的な機械学習やディープラーニングを行うためには、その学習のソ−スとなるビッグデータを超えたマッシブデータと呼ばれる膨大なデータが必要であり、ひいてはそれらのデータを蓄積するストレージを用意しなければならない。さらに進化を続けるアルゴリズムに迅速に対応し、取り入れていく必要がある。そして何よりマッシブデータを最新アルゴリズムに基づいて処理するためには、膨大なコンピューティングのパワーが要求されていたためだ。

 環境面だけではない。日本の製造業がAIを活用する上で、畠山氏が「さらに足りないものがある」と指摘するのがデータ活用に関するリテラシーだ。

 畠山氏は「第4次産業革命の核心はデータを扱う力にあるといって過言ではありません。データを集め、理解し、解析できないと、付加価値は創出できません。自分たちがどんなデータを生み出すことができる企業になるのかを考え、そのための体制を築いていかなければなりません」と強調する。

 さらに「AIを活用する前提となっているのがBI(ビジネスインテリジェンス)だといえます。現状業務の可視化と分析がしっかりできていれば、次に何をすべきかという仮説が立てやすく、AIを導入する価値が出てきます。この両面を強化していく必要があります」と畠山氏は強調した。

いまや単純な機械学習に多大な労力は必要ない

 製造現場における改善活動など「標準値」を定めた現場におけるデータ活用については、日本の製造業は優れた知見を持っているといえる。しかし、現在第4次産業革命として求められているデータの範囲や分析で求められる範囲は、現場の範囲を大きく越えるものである。企業活動全体をまとめる形での体系的なデータ活用についてはそうした組織体制もないため、日本企業が苦手な領域だったといえる。

 こうした背景の中、日本の製造業が最新のAIやデータ活用技術を採用するためにはどういう手段があるのだろうか。

 こうした課題解決のためにマイクロソフトが整備を進めているのが「Microsoft AI Platform」である。拡張を特徴とするエンタープライズグレードのインフラ、データサイエンティストのためのオープンプラットフォーム、開発者用ツールおよびサービスの3階層からなるものだ。

photo マイクロソフトのAI基盤「Microsoft AI Platform」の構成(クリックで拡大)出典:日本マイクロソフト

 その中から特に畠山氏が価値を訴えるのが「Pre-built AI」と呼ばれるサービスである。その名の通りマイクロソフト側で事前に用意されたAI機能で、「ビジョン(視覚)」「ランゲージ(言語)」「スピーチ(音声)」「サーチ(検索)」「ナレッジ(知識)」の5分野で、既に30以上のコグニティブ(認知)サービスを提供している。「AIに関する専門知識がなくても、REST APIで呼び出して簡単に利用することができます」と畠山氏は説明する。

 例として行ったのが「Computer vision」というサービスのデモンストレーションである。電車がホームに入ってくるシーンを撮影した写真を読み込ませたところ、そこに写っているのが何であるのかをAIが自動的に認識し、正確に「電車(99%)」「ホーム(99%)」と判定したメタデータをタグ付けして返してきた。加えて「People waiting at train station」という説明文まで付加されている。

 もちろんマイクロソフトが用意した学習モデルではなく、自社データに基づく学習モデルで認識させたいケースもあるだろう。このニーズに応えるべく用意しているのが「Custom Vision Service」「Custom Speech Service」といったカスタムサービスだ。例えばCustom Vision Serviceに製造ラインを流れる製品や中間品の写真をアップロードし、学習させることで「良品」「不良品」を自動的に判定させることが可能となる。

 特筆すべきは、従来の機械学習やディープラーニングで行っていたような膨大なデータを長期間にわたって投入し、チューニングを重ねるといったトレーニングは不要であることだ。わずか40〜50枚程度の写真をグループ分けして学習させれば、新しい写真を投入した際に80〜90%の確度で判別できるようになるという。「単純な識別を行う機械学習を実現するために、もはや大変な労力を費やす必要はありません」と畠山氏は強調した。

photo MicrosoftのCognitive Services(クリックで拡大)出典:日本マイクロソフト

何を大量に自動処理させたいのか

 さらに畠山氏が強調するのが「AIで単純にモノを認識できるというだけでは意味がありません。人間でもできることをAIにやらせていては意味がないのです。その先を考えることが重要です」ということだ。

 ここで紹介したのが、米国のあるレタス農家の事例だ。レタスを収穫するコンバインにカメラを取り付け、撮影した画像から「レタスか、それ以外か」を判定するモデルをAIで作って搭載した。たったこれだけのことで絶大の成果を上げることができたという。その農家はレタスと雑草を一緒に収穫したくないという課題を抱えており、雑草をなくすために多大なコストをかけて大量の農薬を使っていた。AIにより収穫時の自動判別が可能となったことで、農薬の使用量を大幅に抑えてコストを削減するとともに、環境にも身体にも優しいオーガニック野菜として自分たちのレタスの商品価値を高めることができたのだ。

 AIといえども現時点の技術レベルは万能ではなく、最初から複雑な問題で100%の結果を求めてもたいてい失敗に終わる。AIは森羅万象の全てを理解しているわけではなく、返す答えも完全ではないからだ。逆に、この農家のようにほんの小さなステップが非常に大きな成果を生むことがある。「いま苦労している作業の中で、何を大量にかつ自動的に処理したいのかを、まず考えていただきたい。そこをAIに代替させることで大きな成果を得られるのです」と畠山氏はAIの活用方法について強調した。

photo レタス農家の事例(クリックで拡大)出典:日本マイクロソフト

AIの学習モデルと実行エンジンを工場内の“エッジ”に展開

 小さい成功を築いた後に、さらに高度な分析やAI活用を行いたいニーズも生まれてくる。そのための製品としてマイクロソフトが大幅な強化を図ったのが「SQL Server 2017」である。「SQL Server 2017」は、WindowsのみならずLinuxやDocker Containerにも対応し、AIの実行エンジンを組み込んだ業界初のリレーショナルデータベースに生まれ変わった。具体的には「PythonやRで記述したプログラムをストアドプロシージャとしてデータベース内で実行する他、機械学習アルゴリズムを実装したMicrosoft MLライブラリを組み込んでいます」と畠山氏は説明する。

 製造現場でのAI活用を考えてみると、今まではさまざまな装置やセンサーから収集したIoTデータを専用サーバにいったん蓄積し、分析を行うたびに機械学習エンジンを実装したアプリケーションに新しいデータを移すといった作業が必要となっていた。そのため、何度もデータ移動を繰り返して処理しているケースが少なくない。データ量が膨大になるだけに時間がかかり、正しくコピーできたかどうか確認も必要になる。ならば最初からデータも機械学習のエンジンも同じ場所に集めておけばよいというのが「SQL Server 2017」の進化のポイントである。

 「SQLのスキルをもったDBA(データベース管理者)がデータの加工や変換、アクセス制御などを担当することで、セキュリティを厳重に保護することができます。また、データサイエンティストも同じ“器”に直接アクセスして学習モデルを実行できるようにすることで無駄がなくなり、操作ミスも減ります」と畠山氏は強調した。

 同じデータベース上にデータと分析処理が同居することにパフォーマンス低下を危惧するかもしれないが、この点も心配はなさそうだ。「SQL Server 2017」は分析処理が高速であるカラムストア型のデータ構造をサポートする他、マルチスレッドや並列処理、インメモリ処理、さらにはGPUの使用にも対応。機械学習やディープラーニングの実行にも十分に耐えるスケーラブルなパフォーマンスを発揮するのである。

photo 「SQL Server」に機械学習機能を搭載した意味(クリックで拡大)出典:日本マイクロソフト

 併せて畠山氏が紹介したのが、クラウド上で学習モデルを作成する「Azure Machine Learning Services」である。トレーニングを終えた学習モデルは、そのままAzureで実行できるのはもちろん、オンプレミスの「SQL Server 2017」、さらには「Azure IoT Edge」と呼ばれるエッジ側でAzureアプリケーションを使用できるサービスを通じてローカル側の組み込み機器にまで展開することが可能だ。

 「マイクロソフトが目指すのはクラウドとエッジコンピューティングの最適な組み合わせによるシームレスなデータ活用です。クラウド上でトレーニング・評価を行い、その学習モデルをエッジ側に展開する。それによってエッジコンピューティングはさらに進化します。工場内のデータが発生した場所のできるだけ近くで学習モデルを実行し、リアルタイムの異常検知や予測を行えるようにしたいと考えています。現時点ではゲートウェイにとどまっていますが、今後は個々のデバイスへの展開まで見据えています」と畠山氏は語った。

photo Azure IoT Edgeが描く未来像(クリックで拡大)出典:日本マイクロソフト

 リアルタイムなレスポンスが求められる現場、あるいは厳重なセキュリティ保護などが求められる現場など、製造業がIoTの導入を進めていく上で、今後こうしたエッジコンピューティングの基盤に実装されたAIの活用が不可欠になる。マイクロソフトはそのニーズを先取りしたソリューションの選択肢をさらに拡充していくのだ。

 畠山氏は「AI活用のハードルは現在大きく下がりつつあり、製造現場においても既にAI活用で大きな成果を得ている事例は数多く生まれてきています。さらにいえば、小さい取り組みから始めても、より高度な領域に進める拡張性なども確保されており、データが価値の源泉となる将来像を見据えても、より早く取り組むべき状況になってきたといえます。レタス農家の事例で示したように使いどころを考えると製造現場で活用できるところは多く存在します。まずは、小さいところからでもすぐに始めてみるべきです」とAI活用を後押しする。

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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2018年1月25日