HILSによる故障診断機能のテスト(その3)いまさら聞けないHILS入門(13)(3/3 ページ)

» 2017年12月26日 10時00分 公開
[高尾英次郎MONOist]
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HILSでスロットルモーターの断線故障を実現する

 スロットルモーター回転子のコイル断線状態をテストするためには、例えば、図6のユーザーインタフェースを使って、コイルボタン②を選択の上断線スイッチを押します。HILSロジックは、これを受けて疑似負荷回路の抵抗値設定を変更するとともに、スロットルアクチュエーターモデルで故障時のモータートルクに変更することにより、故障状態を実現します。

図6 図6 スロットルモーター断線故障テストのUI(クリックで拡大)

 インジェクター故障テストと同様に、このテストでも、ECUがモーター断線を検出することによって制御を変化させて、結果としてシステム全体の挙動変化する様子を観測・測定し、制御設計要件に適合しているか否かを検証することが、テストのポイントとなります。

 このようにアクチュエーターが故障して、プラントの挙動に影響する現象をHILSで実現することは、簡単ではありません。ECUの故障検出機能が単純な断線、ショートの検出に限られている中では、HILSのプラントモデルに故障モードを織り込むことは、多くはありませんでした。

 しかし、機能安全の検証などで故障状態のテストを行うことが必要となる場合があります。そのようなテストの多くは、実機では実現不可能だったり、危険が伴うためにテストを実行できないことが考えられます。一方HILSであれば、運転中のエンジン内部部品を故障させることや、エンジンが破損してしまうような超高回転を発生させることも実現できます。ただしそのためには、HILS設計の段階から再現するべき故障現象を分析し、疑似負荷回路やプラントモデルを検討して適切な仕掛けを織り込まなければならない、ということをお分かりいただけたと思います。


 今回をもって本連載を終了します。ご愛読ありがとうございました。

(連載完)

筆者プロフィール

高尾 英次郎(たかお えいじろう) 「HILSとTestの案内人」

1950年生まれ。岐阜大学機械工学科卒業。三菱重工で大型船のエンジン・推進装置などの修繕業務を担当の後、三菱自動車(現三菱ふそうトラック・バス)に転籍。エンジンの燃費向上・排出ガス低減研究、車両の燃費向上研究を10年余および電子実験、電子設計などを20年余担当。ITKエンジニアリングジャパンを経て、現在はHILSとHILS Testにフォーカスしたコンサルティングを行っている。

HILSとの関わりは、バス用の機械式自動トランスミッション開発中に、ECUのソフト検証用として1990年にMS-DOS PCを使ってHILSをゼロから自主開発して以来のもの。


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