特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2018年01月05日 11時30分 公開

MONOist 2018年展望:品質不正問題にどう立ち向かうのか、抜本的解決のカギはIoTと検査自動化 (1/2)

2017年の製造業を取り巻く動きの中で、最もネガティブな影響を与えたのが「品質不正」の問題だろう。「日本のモノづくり」のブランド力を著しく傷つけたとされるが、2018年はこの問題にどう対応するのかという点は、全ての製造業の命題である。人手不足が加速する中、解決につながる「仕組み」や「ツール」に注目が集まる1年となる。

[三島一孝,MONOist]

 2017年は製造業にとって、為替の変動幅もそれほどなく、大きなマイナス要因が少なかったため、全体的に「良い1年」となったといえるだろう。その中で黒いシミのようにネガティブな影響を与えたのが「品質不正」の問題である。

photo 自動車業界では2016年も三菱自動車の燃費不正問題が注目された

 2017年10月には日産自動車の無資格者による完成車の不正検査問題が発覚。SUBARU(スバル)でも同様の無資格者による検査が明るみに出た。自動車メーカーだけでなく素材メーカーでも品質データ改ざんなどの不正が続いた。神戸製鋼所で検査証明書のデータを不正書き換えしていたことが明らかになった後、三菱マテリアルや東レのグループ会社でも検査データを書き換える不正があったことが明らかになった(※)

(※)関連記事:「日本が誇るモノづくり力」は張り子の虎だったのか

 これらの立て続けに起きた品質不正の問題は、その多くが習慣化しており、組織的に行われていたものだった。「品質」を1つのブランド力としてきた「日本のモノづくり」全体の信頼性を毀損(きそん)するものとして、多くの製造業に衝撃を与えたが、2018年もさらに多くの品質不正の問題が明るみに出る可能性がある。

品質不正を招く悪い意味の“現場力”

 こうした品質不正の問題が生まれた背景には、幾つかの要因がある。そもそもの検査を要求していた規制そのものが時代に合わなくなって形骸化していることや、求められる品質が過剰すぎて多少要求を満たしていなくても問題ないことなどである。要するに業界の商習慣的な“なあなあ”の状況が、企業内、企業間、産官間で生まれていたということになる。

 これらに加えて指摘されているのがガバナンスの問題だ。特に現場と経営層間での意思疎通の齟齬(そご)の問題が、ガバナンスの低下を招き、最終的な品質不正問題にもつながっている。

 日本の製造業の強みは現場力とされており、現場が自主的な改善活動を次々に進めていくことが強みとなってきた。一方で現場側が自主的に進める改善内容は、経営側からするとブラックボックス化しており、その内容に管理が及んでいないケースが多い。逆にその内容に無理にガバナンスをきかせようとすると、現場の運営に影響を与え、競争力を弱めるというジレンマがあった。結果として、日本の製造業では、ブラックボックスの外側だけを管理するという折り合いを付け、運営を進めてきたという経緯がある。

 そのためブラックボックスの内部で行われた品質不正には気付かなかった。今回の数々の品質不正問題で経営陣の回答が二転三転しているのは意図的に隠蔽しようとしたというより「本当に何が起こっていたのか分からなかった」というのが本質に近いといえるだろう。こうした状況は日本のさまざまな企業で起きているが、問題なのは、製造業の多くはグローバルで多くの海外企業と競争をしているという点である。

グローバル競争で求められる品質の透明性

 海外、特に欧米では、製品開発の透明性と責任の明確化を強化する動きが強まっている。そのために必要なのはトレーサビリティーの強化である。従来もサプライチェーン管理の一環で企業間でのトレーサビリティー確保の動きは当然行われており、それを構成する要素の1つが製品の品質データだったわけである。ただ、そこに改ざんの余地があった。現在進みつつあるのは、改ざんの余地を限りなく低減するトレーサビリティーである。

 そもそも、日本の製造業の製品開発や製造の過程に透明性がないことについては、海外企業から指摘を受けてきた。日本企業としては、そこに競争力があるとしておりブラックボックス化するという戦略は過去は間違いではなかった。しかし、多くの製品でソフトウェアやITの要素が占める割合が増えてくる中、従来通りのブラックボックスでは、最終製品での問題が発生した場合の問題の切り分けが非常に難しくなる。

 こうした問題が、必要以上に影響を大きくしてしまったのが、タカタのエアバッグのリコール問題である。タカタ製のエアバックの不具合による死亡事故が発生した件について、2014年の報道後も「調査中」を貫き通し情報開示を行わなかった。最終的に2015年に不具合を認め、リコールを行ったわけだが、2017年には民事再生法の適用を受けるまでの状況に陥った。また、2010年のトヨタ自動車のプリウスのブレーキ問題などについても「情報開示」の遅れが問題を大きくしたという意味では同様の根を持つといえる。

 欧米ではこうした、日本企業の不透明性についての不信感が徐々に生まれてきており、日本企業に対してはより強く、透明性を確保し細部までにトレーサビリティーを求める動きが進む見込みだ。今回の品質不正の問題は、高まる「透明性」を求める動きと、日本が強みとしてきた「ブラックボックスとしての現場力」がぶつかり合う動きだといえる。ただ、企業の在り方として「透明性」が重要なのは全世界どこも変わりないことを考えれば、重要なのは「透明性を確保しつつ現場力を発揮するためにどうするか」という視点であるといえる。その重要なカギになるのが、IoTと検査の自動化である。

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