「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

まだまだ伸びる単眼カメラの性能、フリースペースや歩きスマホまで自動運転技術

2018年から単眼カメラの飛躍的な進化が始まる。カメラの性能向上によって、量産モデルのADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術の進化が一層進んでいく。

» 2018年01月11日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 2018年から単眼カメラの飛躍的な進化が始まる。大手サプライヤーが消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2018」(2018年1月9〜12日、米国ネバダ州ラスベガス)で新技術を披露した。

 Mobileye(モービルアイ)は、周辺車両の3次元認識や、歩道と車道の境界を検出する機能を2018年に実用化する。Continental(コンチネンタル)は歩行者の身体の向きや動作を機械学習によって識別し、自動ブレーキの高度化に貢献する。

 こうした単眼カメラの性能向上によって、量産モデルのADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術の進化が一層進む。

2018年に複数の新技術

モービルアイのアムノン・シャシュア氏(クリックして拡大)

 モービルアイは2018年に単眼カメラで複数の機能を実用化する。1月9日に開催した同社のプレスカンファレンスでCEOのアムノン・シャシュア氏が発表した。1つ目は物体の3次元認識で、車両の側面や正面を識別する。これにより、路地から出てくる車両や隣の車線の車両など横や斜めから見たクルマを認識できるようになる。2つ目は信号認識で、国ごとの信号機の表示の違いなどにも対応する。

 3つ目は歩道と車道の境界の検出だ。自動運転による走行が可能なフリースペースの認識に必要な技術だ。白線が識別しにくい状況向けに、分岐やカーブなど道路の大まかな構造の認識にも応用する。モノクロカメラの1チップのイメージプロセッサでの処理で実現可能だとしている。

フリースペースの検知(左)や道路の大まかな構造の認識(右)を行うイメージ(クリックして拡大) 出典:モービルアイ

 モービルアイは2017年に自動車メーカー27社の約70モデル向けに受注を勝ち取った。日産自動車やマツダ、ルノー、FCA(Fiat Chrysler Automobile)、ホンダ、BMW、Ford Motor、 PSA(プジョーシトロエン)などの他、16社の中国自動車メーカーから採用された。モービルアイの技術を使ったシステムとしては、General Motorsの「スーパークルーズ」や、日産自動車の「プロパイロット」、アウディの自動運転技術が市場投入されている。アウディの自動運転技術はMobileyeだけでなくNVIDIAなど複数の企業のチップを組み合わせている。

歩きスマホに気付く単眼カメラ

開発中の歩行者検知機能つきカメラを搭載した実験車両(クリックして拡大)

 コンチネンタルは、フルカラーの単眼カメラで捉えた歩行者の上半身と下半身、左右の腕や顔の動きから、歩行者がどのように動こうとしているかを判断する。

 どの方向に歩こうとしているか、車両の存在に気付いて立ち止まっている、クルマを停車させようと両腕を広げている、片手をあげている、歩きスマホをしている……といった動作の内容は機械学習で得たアルゴリズムによって識別するという。

歩行者の識別結果。カッパを着用していたり、身体の一部しか見えていなくても認識する。歩きスマホをしている人、ドライバーやシステムが注意する必要がない人にはそれぞれマークが表示される。この他にも、両腕を広げて止めようとしている人にもマークが表示された(クリックして拡大)

 これにより、環境に合わせてより洗練された自動ブレーキを実現できるとしている。例えば、歩行者が車両に気付いている場合には速度を落とす必要がないと判断したり、歩きスマホの人間がいる場合には特に注意を促したりすることが可能になる。市街地の自動運転やADASで、車両が周辺環境を理解する上で大きく役立つという。

 開発中のカメラは検知距離が250m程度としており、解像度は170万〜800万画素でスケーラブルとした。歩行者の識別以外にも対応するマルチファンクションカメラとして2020年に市場投入する。

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