「標準時間」とは何か?(中編)よくわかる「標準時間」のはなし(4)(1/3 ページ)

日々の作業管理を行う際の重要なよりどころとなる「標準時間(ST;Standard Time)」を解説する本連載。第4回では「標準の早さ」について解説する。

» 2018年01月16日 10時00分 公開

 前回の『「標準時間」とは何か?(前編)』の内容で、標準時間(ST:Standard Time)の概要についてご理解いただけたと思います。標準時間を設定する際の重要なポイントに、「標準の早さ」と「余裕時間」があります。このうち、今回は「標準の早さ」について説明していきたいと思います。

 前回での説明では、「標準の早さ」は、“作業者の身体に対して有害な影響を受けることなく、1日中、作業を継続でき、それを毎日維持していくことができる最高の作業ペースを基準とします。どの程度の早さを標準とするのかは、その作業環境や作業条件などによって決定づけられます。”と概略の説明をしました。

 標準時間の定義の中に、「標準の早さ」で作業を行うということを説明しましたが、いったい、この標準の早さとはどのようなことなのでしょうか。とても重要なことですので、今回、さらに詳しく説明させて頂きます。

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1.作業の種類と適正な早さ

 作業速度に関する1つの実験例として、次のような「作業速度の実験」を試しに行ってみてください。まず、鉛筆で20cmの間隔で縦線二本を3組引いてください。長さは、左右ともに15cmくらいでいいでしょう。次に縦線の間に、フリーハンドで横線を約1cm間隔で、次に説明するように、各組み毎に書く速度を変えながら10本程度の線をできるだけ平行に引いていきます。

 あなたの考える感覚でいいので、まず、1組目は“A=普通の早さで書く”、2組目は“B=できるだけ速く書く”、最後に、3組目は“C=できるだけ遅く書く”というように、書く速度を変えながら書いてみて、それぞれの組みの結果を比較してみましょう。Bの“できるだけ速く書く”の結果を見てみると、次のようにならなかったでしょうか。

  1. 始点、終点に「ズレ」ができやすい
  2. 終点には、「カギ形状」がでやすい
  3. 線が全体に湾曲してしまう
  4. 平行や間隔が不ぞろいになってしまう
  5. 太さが次第に太くなる傾向にある

 また、Cの“できるだけ遅く書く”の結果を見ると線が細かく振れていたり、上記の1.〜5.のようなBに類似した欠点が出ていないでしょうか。

 この実験結果から、作業には、その作業品質を満足させるための適正な速度があるということが、理解して頂けると思います。

 また、別の事例として、「図1 歩行、走行速度とエネルギーの関係」は、人が歩行した場合と走った場合のエネルギー消費量を示したものです。この図からも分かるように、図中の“M点”以上に速く動く場合には、歩行よりも、ゆっくりと“駆け足”をした方がエネルギーの消費量が少ないということが分かります。

図1 図1 歩行、走行速度とエネルギーの関係(クリックで拡大)

 さらに、「図2 歩行速度とエネルギー消費の関係」は、人が荷物を持たない場合と荷物を持って歩く場合のエネルギーの消費量の違いを示したものです。この図から、それぞれの荷物に対して、図中の〔A〕の範囲では歩行に時間を要する割には消費量が増え、〔B〕の範囲では、速く歩き過ぎて筋肉の活動が激しくなり消費量が増えていて、“○”印の点が最も経済的な速度であることが分かります。

 以上の3つの事例からも分かるように、あらゆる作業に、それぞれの作業に適した「適正な早さ」というものが存在することを理解することができます。

図2 図2 歩行速度とエネルギー消費の関係(クリックで拡大)

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