合成した膜タンパク質の薬物感受性の記録に成功医療技術ニュース

東北大学は、半導体微細加工技術と、細胞を使わずに膜タンパク質を合成する無細胞合成技術とを融合することで、ヒトの心筋に存在するhERGチャネルと呼ばれる膜タンパク質の薬物感受性を記録することに成功した。

» 2018年01月19日 15時00分 公開
[MONOist]

 東北大学は2017年12月25日、半導体微細加工技術と、細胞を使わずに膜タンパク質を合成する無細胞合成技術とを融合することで、ヒトの心筋に存在するhERGチャネルと呼ばれる膜タンパク質の薬物感受性を記録することに成功したと発表した。同大学電気通信研究所の平野愛弓教授らと、東北福祉大学、埼玉大学との合同研究によるもの。

 東北大学の研究グループは創薬スクリーニングのための基盤技術の構築を目指し、脂質二分子膜を人工的に形成し、そこにイオンチャネルタンパク質を埋め込む技術の開発に取り組んできた。今回、半導体微細加工技術を活用して高精度な保持体作製プロセスを構築し、耐久性に優れた脂質二分子膜の高確率形成を可能にした。

 一方、埼玉大学の研究グループは、小麦胚芽の抽出液を用いることで、さまざまな薬との副作用的な反応が問題となっている心筋のhERGチャネルタンパク質を、大量に無細胞合成することに成功した。

 これらの研究成果を組み合わせ、合成したhERGチャネルタンパク質を安定化脂質二分子膜中に埋め込み、その薬物反応性を1分子レベルで記録することに成功。hERGチャネルは、その遺伝子型と薬物副作用との関連性が示唆されており、今後は個別化医療を指向して薬物を選別していく研究が加速すると期待される。

 人体を構成する細胞は脂質二分子膜で覆われ、種々の膜タンパク質が埋め込まれている。その一種であるイオンチャネルタンパク質に作用する薬剤が予期せずイオンチャネルタンパク質を抑制してしまう場合、重篤な副作用を引き起こす。そこで、薬剤による効果と副作用とを効率よく調べるためのスクリーニング系の開発が望まれていた。

photo 半導体チップに形成された脂質二分子膜に無細胞合成チャネルが埋め込まれた様子 出典:東北大学

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