「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像
特集
» 2018年01月25日 14時00分 公開

MONOist 2018年展望:クルマが本当に「走るスマートフォン」になる日、カギはからっぽのECU (1/3)

つながるクルマに関連した技術や製品は、これまでにも多くあり、現在も開発が進められている。しかし、それだけでは「走るスマートフォン」にはならない。スマートフォン並みにクルマの自由度を高めるには何が必要か。

[齊藤由希,MONOist]
2011年の東京モーターショーでトヨタ自動車が披露したコンセプトカー「TOYOTA Fun-Vii」。「スマートフォンにタイヤを4つ付けたような自動車」というコンセプトで開発された(クリックして拡大)

 つながるクルマやコネクテッドカーを、「4つのタイヤがついたスマートフォン」「走るスマートフォン」と例えられることがある。

 スマートフォンが引き合いに出されるのは、使う人に合わせて自由にアプリを追加したり減らしたり、設定を変更したり、ソフトウェアのアップデートで性能を向上することなどを実現するためだ。車両の故障の要因を遠隔で診断したり、事前に故障を予測することも期待されている。

 そのために必要なのが無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)だが、既にTesla(テスラ)が量産モデルに採用しており、サプライヤー各社も技術をそろえる。また、車載情報機器の開発では、Androidや車載Linuxである「Automotive Grade Linux(AGL)」(※1)の採用も広がっている。

(※1)関連記事:トヨタ自動車が車載Linux「AGL」を車載情報機器に全面採用、「他社も続く」

 「電話やメッセージの送受信のような端末同士でのやりとり」という点では、車両と交通インフラ、歩行者が直接通信する「V2X」(※2)がある。自動車メーカーごと、あるいは地域ごとに、推進する通信技術は自動車向けに使用が認められた5.8GHz帯や700MHz帯、DSRC(狭域通信システム)、4G LTEに分かれている状況だ。今後普及する5Gへの対応も課題になっている。

(※2)関連記事:新たな競争を生み出す「移動のサービス化」、5GはV2X通信の課題を解決するか

 これから本格的に普及が進む段階のV2Xを例に出すまでもなく、カーナビゲーションシステムと携帯電話機を有線や無線で接続する機能や、Apple(アップル)の「CarPlay」やGoogle(グーグル)の「Android Auto」もコネクテッドカーの1つの形である。自動車メーカー各社が以前から展開してきたテレマティクスサービスや、事故発生時に自動的に消防や病院に通報する緊急通報システムも車外とつながる方法であることに間違いはない。

 しかし、もっと土台から変わらなければ、クルマの在り方はスマートフォンに遠く及ばない。

次のアーキテクチャ、そのまた次のアーキテクチャ

 現在の車両の多くは、機能ごとに最適なコストと性能のECU(電子制御ユニット)を割り当てた電気電子システム(E/E)のアーキテクチャだ。クルマの高機能化に伴って、ECUの搭載数はハイエンドモデルで100個以上まで増加し、車載ネットワークの通信も複雑になっている。

 これではOTAで機能を新たに追加し、アップグレードするのは難しい状態だ。NXP Semiconductors 副社長のRoss McOuat(ロス マコーエット)氏は、現在のハイエンドモデルは最新のコンピューティング性能の95%を使って成立していると分析する。E/Eアーキテクチャが複雑過ぎる上に、処理性能にも余裕がないということだ。

 それだけでなく、今後、運転支援の領域を超えて自動運転として車両の制御を高度にしていくには、パワートレインやシャシー、ボディー、車載情報機器のそれぞれが相互に連携することが不可欠だ。

E/Eアーキテクチャは、画像左の機能分散型から画像右のドメイン集約型へと移行している(クリックして拡大) 出典:NXP

 そこで、情報のやりとりを“交通整理”するセントラルゲートウェイを置き、機能を系統ごとにドメインとして集約してコントロールする次世代のE/Eアーキテクチャに切り替わっていく。これは車載セキュリティとしても有効な手段だ。既に多くの自動車メーカーがこの次世代のE/Eアーキテクチャに移行し始めており、軽自動車にもセントラルゲートウェイが採用された(※3)

(※3)関連記事:セントラルゲートウェイがスズキ「スペーシア」に、日立オートモティブが開発

 ただ、セントラルゲートウェイとドメインコントローラーを採用するだけでは、クルマはまだスマートフォンに近づかない。Volkswagen(VW)を始めとする大手の自動車メーカーは、さらにその次のE/Eアーキテクチャの青写真を描いている。

 「決して遠い未来ではなく、2020年頃にも市販モデルに搭載されるアーキテクチャだ」とContinental(コンチネンタル)子会社の開発ツールベンダー、Elektrobit(エレクトロビット)は説明する。そこでようやく、クルマは「走るスマートフォン」になれそうだ。

VWはドメイン集約型の次のE/Eアーキテクチャについて見据える(クリックして拡大) 出典:VW
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