ニュース
» 2018年02月02日 06時00分 公開

イノベーションのレシピ:シリコンバレーで新規事業を始めたいときに勘違いしてはいけないこと (1/2)

経済産業省と、米国シリコンバレー在住の4人の日本人による有志活動「シリコンバレー D-Lab」は、日系の大手企業向けにシリコンバレーでの新規事業開発に関するセミナーを実施した。

[齊藤由希,MONOist]
シリコンバレーでの新規事業開発に関するセミナーを経済産業省で実施した(クリックして拡大)

 新規事業が立ち上がらない理由は企業自身にある――。経済産業省と、米国シリコンバレー在住の4人の日本人による有志活動「シリコンバレー D-Lab」は2018年1月30日、日系の大手企業向けにシリコンバレーでの新規事業開発に関するセミナーを経済産業省で実施した。

 シリコンバレー D-Labは、日系企業の新規事業開発の一助となるようシリコンバレーの動向を発信していくプロジェクトだ。メンバーは、Panasonic Automotive Systems Company of Americaで車載事業の先行開発にあたる森俊彦氏、日本貿易振興機構(JETRO)サンフランシスコ 次長の下田裕和氏、在サンフランシスコ総領事館 領事の井上友貴氏、デロイトトーマツベンチャーサポート シリコンバレー事務所マネージングディレクターの木村将之氏の4人だ。

 2017年から現地でのワークショップや日本でのセミナーを実施している。今回は、大手企業における新規事業の開発の進め方のヒントを発信することをテーマにセミナーを開催した。

日系企業はシリコンバレーから再び撤退してしまうのか

パナソニックの森俊彦氏

 「シリコンバレーへの進出」「スタートアップ、ベンチャー企業との連携」「オープンイノベーションの促進」とった取り組みが、ブームのように加速している。ソフトウェアを武器に新しいサービスや製品を生み出す海外企業の拠点が、シリコンバレーに集中しているのは言うまでもない。

 そうした企業の動向をいち早くつかみ、ソフトウェア技術やIT分野に通じた人材を活用する目的で、米国内外の企業がシリコンバレーに拠点を構えている。失敗を前提にチャレンジし続ける文化や、挑戦を支える資金が投資家からもたらされやすい環境も、シリコンバレーに企業が集まる理由だろう。

 シリコンバレー D-Labが懸念するのは、現在の日系企業の取り組みがこれまでのシリコンバレーブームの繰り返しとなることだ。例えば、1990年代末〜2000年代初期のインターネットバブル(ドットコムバブル)で起こったシリコンバレーブームでは、バブル崩壊とともに多くの日系企業はシリコンバレーから撤退した。

 現在進行中のブームでも、新規事業開発の成果が出ないことを理由に撤退する企業が増えてもおかしくない……という課題を踏まえて、セミナーでは新規事業開発のポイントを重点的に訴えた。

ソフトウェアは重要だが、「ToI」になってはいけない

 登壇したパナソニックの森氏は、新規事業という言葉が指すビジネスについて、携帯電話機(フィーチャーフォンとスマートフォン)を例に説明した。フィーチャーフォンの市場において、通信カバーエリアの拡大や、高齢者向けの操作が簡単な製品の投入、液晶の高精細化や電池の長寿命化、大画面化といった「改良」は既存事業の範囲内にある。半導体や材料など技術のロードマップの延長で改良や市場開拓を進めて行くことができた。

新規事業と既存事業の違い(クリックして拡大) 出典:経済産業省

 こうしたフィーチャーフォンの市場に対し、新規事業となるのがスマートフォンだ。PCやカメラ、電話がポケットに入るというコンセプトや、iOSやAndroidのプラットフォーム、アプリの自由な選択によるカスタマイズは、新しい顧客や市場を生み出した。また、製品やサービスの競争軸も変化した。このように、新規事業とは従来の製品、サービスとは地続きではない、非連続な技術やビジネスモデルによって市場の優位性が変わっていくという。

 また、付加価値の源泉はハードウェアではなく、サービスやアプリケーション、データサーバ、ネットワークインフラ、データ解析や通信技術といったソフトウェアがカバーする範囲に移行していることをあらためて説明した。Apple(アップル)やGoogle(グーグル)、Amazon(アマゾン)、Uber(ウーバー)といった企業が新規事業で成功を収めたのも、ソフトウェアを活用できたことが大きな要因となっている。

付加価値の源泉はハードウェア以外のところに(クリックして拡大) 出典:経済産業省

 森氏は、製造業がIoT(モノのインターネット)ではなく「ToI(ハードウェアから考えたインターネット)」に陥りがちな傾向があることにも言及。自社のハードウェアを販売するためのソフトウェア開発ではなく、対価を払うに値するサービスを実現するために最適なハードウェアを開発することが必要だと強調した。ハードウェアを売るためのソフトウェアでは、対価を払うべき価値は生まれない。

「ToI」になってはいけない(クリックして拡大) 出典:経済産業省
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.