ソニーが20年ぶりの好業績、改革やり遂げた社長の平井氏は退任へ製造マネジメントニュース(2/2 ページ)

» 2018年02月05日 06時00分 公開
[三島一孝MONOist]
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過去最高を超えるタイミングで社長交代へ

 ソニーでは中期経営計画を3年ごとに回転させているが、2017年度は平井氏が社長に就任してから、2期目の中期経営計画最終年度となる。平井氏が社長を務めた6年間はコンシューマーエレクトロニクスを中心に、“構造改革のもぐらたたき”のような状況であった。その中で、ゲーム事業の再建やPC事業の売却、テレビ事業の分社化などで立て直しを進めた後、モバイルコミュニケーション事業の構造改革にも取り組み、着実に成果を残してきた。そして、これら数々の構造改革を経て、過去最高の業績を実現できる見通しが立ったことから社長交代を決意したという。

photo 退任のあいさつをする平井氏

 平井氏は「6年間ソニーの変革と収益力強化に取り組む中で、経営からどのタイミングで引くかということを常に考えてきた。その中で課題だったコンシューマーエレクトロニクス事業の構造改革に正面から取り組んで、安定収益事業に変革できた。そして、第2期中期経営計画で目標を上回る数値を達成し、新たな中期経営計画を立てるというこのタイミングが、社長交代にふさわしいと考えた」と述べている。

 その構造改革をCFOとして共に支えてきたのが新社長に就任する吉田氏である。平井氏は「吉田氏とは経営パートナーとしてソニーの変革に一緒に取り組んできた。さまざまなキャリアによる戦略や多様な領域への知見だけでなく、強固なリーダーシップを兼ね備えた人物だ」と吉田氏を評している。

 吉田氏はソニー入社後、財務・管理系の役職を経て、ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソネット)に出向。2001年には同社の社長に就任し経営を立て直した。その手腕が買われ2014年からCFOとして平井氏の変革を支えてきた。

 吉田氏は新社長の就任に際し「CFOとして平井氏とともにソニーを高収益企業に変えることに力を注いできた。その中で2017年度は20年ぶりに過去最高の業績を達成できる見込みとなっている。しかし、逆を言えば、過去20年間もの間、自分自身を超えられなかった企業であるということだ。20年前と現在では、世界におけるソニーの位置付けは全く異なる。その中で今後グローバル企業として競争力を発揮できるかどうかが今後にかかっている」と述べている。

 さらに「ソニーの強みは世界中で親しまれている『SONY』というブランドである。これは、これまでも、これからも最大の資産だと考えている」と強みについて語っている。

株主資本は20年前に遠く及ばない

 変革の多くを完了する中で、現在も残された課題という点については、平井氏は「最も懸念しているのは好業績で気が緩むということ。次の中期経営計画でも同様の好業績を維持していかなければならない。その中で危機感は必要だ」と考えを述べる。

 同様に吉田氏も社員の危機感を挙げるとともに「バランスシートの改善とグローバルでの競争力は課題だ」と述べる。吉田氏は「グローバルでの時価総額での上位企業を見ると20年前は資源の会社などが数多く入っていた。しかし今はほとんどがテクノロジー企業である。ソニーもその1つではあるが(そこと競争していくことに対して)危機感を持っている」と述べている。

photo ソニーの20年間の株主資本推移(クリックで拡大)出典:ソニー

 吉田氏を含む新経営陣による新たな中期経営計画については2017年度決算後に発表するとしている。

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