特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
連載
» 2018年02月05日 11時00分 公開

いまさら聞けない第4次産業革命(20):第4次産業革命であらためて強調したい「モノの価値」 (1/3)

製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説していきます。第20回となる今回は、データの価値が訴えられる第4次産業革命において、あらためて強調したい「モノの価値」について解説します。

[三島一孝,MONOist]

本連載の趣旨

 本連載は、「いまさら聞けない第4次産業革命」とし、第4次産業革命で製造業が受ける影響や、捉える方向性などについて、分かりやすくご紹介していきたいと考えています。ただ、単純に解説していくだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じて、ご紹介します。

※)本連載では「第4次産業革命」と「インダストリー4.0」を、意味として使い分けて表記するつもりです。ドイツ連邦政府が進めるインダストリー4.0はもともと第4次産業革命という意味があります。ただ、本稿では「第4次産業革命」は一般用語として「IoT(モノのインターネット)による製造業の革新」を意味する言葉として使います。一方で「インダストリー4.0」はドイツでの取り組みを指すものとします。


本連載の登場人物

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矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)

自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長兼IoTビジネス推進室室長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、話が始まる。多少優柔不断。印出研究所に入り浸っている。


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印出 鳥代(いんだす とりよ)

ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。第4次産業革命についてのさまざまな疑問に答えてくれる。サバサバした性格。


*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。

前回のあらすじ

第19回:「第4次産業革命で「部品メーカー」に与えられる3つの選択肢

あらすじ背景

 従業員200人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「新聞で読んだけど、君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われます。しかし、「第4次産業革命」といわれても「それが何なのか」や「どう自分たちの業務に関係するのか」がさっぱり分かりません。そこで、矢面氏は第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに伺うことにしました。


 さて前回は、第4次産業革命の中で「どういう方向性で取り組みを広げればよいのか分からない」とする声が部品メーカーに多いことから、考えられる3つの選択肢について紹介しました。

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そもそも部品メーカーがIoTで新しいビジネスとか生み出せるんですか。


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おやおや、いろいろ忘れているんじゃない? 以前「製造業のサービス化」の話をしたことがあったわね。これを当てはめてみるというのが1つでしょう。


 部品メーカーが採り得る1つ目の選択肢は、「モノ」から「コト」へのサービス化を進展させ、新たな商流を生み出すサービスビジネスを構築するということでしたね。既にGEやロールスロイスなどが取り組む航空機エンジンなどでは、部品メーカーとして航空機メーカーにエンジンを納入するのではなく、センシングしたデータによりエンジンが出力した分だけ対価を払うという「パワーバイジアワー(Power By The Hour)」という契約への切り替えが進んでいます。さらに、このデータを解析することで燃費改善提案などをエアラインに新たに提案し商流を飛び越えたビジネスを展開しています。

 2つ目の選択肢は、その手前に位置付けられる取り組みで、データ活用を視野に入れて「データを取りやすい部品を作る」ということでした。

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第4次産業革命時代にふさわしい部品の姿とは何かを考えて、それに合わせた機能を組み込んでいくことね。


 第4次産業革命において「データを収集する」部分の多くは「モノ」が担います。すなわち、部品メーカーであっても自社製品により、稼働状況や周辺環境のデータを取得する「センシング技術」とデータを送る「通信技術」をどう組み込めるのかという点は、検討すべきだといえるわけです。自社製品をどうやってIoT製品化し、データをその後のサービスに生かすかという視点が必要となります。

 「第4次産業革命にふさわしい部品」を考えた場合、後工程にふさわしい部品に関連する「データセット」を合わせて提供するということも新たな展開としてはあり得るという話でした。

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自社でデータの運用をしなくても、自社製品に関わるデータやアルゴリズムを合わせて提供することで、従来とは違うビジネスを展開できる時代が来ると思うわ。


 そして、3つ目の選択肢は「何もしない」ということです。

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モノ単体としての競争力が維持でき、市場規模も確保できる場合は、あえて新たにIoT化を進める必要はないかもしれないわ。ただ、この場合、競合がビジネスモデル変革を仕掛けてきたときでも影響を受けないということが精査できた場合に限るけれど。


 現状のIoTおよび第4次産業革命を取り巻く環境は「過渡期」だということができます。そのため確実な正解は存在しません。その中で、大きなリスクをかけて投資を行うということは場合によっては企業の寿命を縮めることになりかねません。自社にとって意味のある領域を見極めて、それが見えた時点で投資をするというのも1つの手だといえると思うのです。

 さて、今回は「品質」について説明しようと思いましたが、その「品質」の前提にもなり前回との関連性も深い「モノの価値」についてあらためて解説したいと思います。

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