特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

中国がバブル崩壊を防ぐ救世主として選んだIoTMONOist IoT Forum 大阪(後編)(2/3 ページ)

» 2018年02月13日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

IoT時代の共通課題となる「目的」と「セキュリティ」

 「MONOist IoT Forum in 大阪」では、ここまで紹介してきた基調講演、特別講演、ランチセッションに加え、6本のセッション講演も実施した。その様子をダイジェストで紹介する。

「目的」と「セキュリティ」を製造業のIoT活用のポイントとする富士通

 富士通は「IoTで実現する製造現場のデジタル革新事例」をテーマとし、AIやIoTの活用事例や、導入のポイントについて訴求した。

photo 富士通 ネットワークサービス事業本部 IoTビジネス推進室 インテグレーション部 部長の黒下和正氏

 富士通 ネットワークサービス事業本部 IoTビジネス推進室 インテグレーション部 部長の黒下和正氏は「独自調査によると89%の企業がデジタル革新に取り組んでいる。その中で価値をどう作るのかが大事だ」と述べ、製造現場の情報を「つながる」「集める」「分析する」「価値に変換する」「最適に制御する」という情報サイクルの重要性を訴えた。その中で特に「データ活用により得たい目的をどう位置付けるのかが重要となる」と強調した。

 また、現実的には「つながる」というところで課題が数多く存在する中、セキュリティの重要性を訴えた。これらへの対応として、富士通が展開するモノづくりデジタルプレースとして展開する「COLMINA(コルミナ)」の価値を紹介。さらに、これらを活用した事例として、工作機械大手のアマダの「V-factory」や中国のEMSの上海儀電(INESA)などでの取り組みを紹介した。

「つながる化」の課題とIoTセキュリティの意義を訴えた日立システムズ

 日立システムズは「IoTビジネスへの取り組み」をテーマに、IoTを実現するのに乗り越えなければならない6つの壁など、IoTを収益化する中での現実的な課題と対応策を紹介した。

photo 日立システムズ 産業・流通フィールドサービス事業グループ 産業・流通インフラサービス事業部 副事業部長の前田貴嗣氏

 日立システムズ 産業・流通フィールドサービス事業グループ 産業・流通インフラサービス事業部 副事業部長の前田貴嗣氏は「日本では中小企業のIT活用の進捗度は1%程度だとされている。一方でインダストリー4.0などを進めるドイツは40%前後だとされており、ここに大きな差が生まれている。現在ITが活用されていない領域での障壁をクリアしていくことが必要だ」と考えを述べる。IoT活用における6つの障壁としては「システムの壁」「データ定義の壁」「データ連携の壁」「会社組織の壁」「技術スキルの壁」「運用の壁」があるとし「これらを1つ1つクリアしていかなければ、IoTでの大きな成果を得ることができない」(前田氏)とする。

 またIoT化を進める上で、重要になるのがセキュリティだとし「セキュリティはBCP(事業継続計画)の一環で考えられる場合も多いが、災害対策のBCPとサイバーセキュリティのBCPは異なる。サイバーセキュリティでは、被害を受けた時に自社だけが稼働を止めることになり、競争力の面でも大きな影響がある」と前田氏は対応が必須である点を訴えた。

AI活用が既にビジネス価値にできることを訴求した日本マイクロソフト

 日本マイクロソフトは「データからビジネス変革をもたらすMicrosoft AI and IoT Platform」をテーマとし、AI活用が既に数多くのビジネスで簡単に成果を生み出している点を紹介。製造業にも多くの価値を提供している点を解説した。

photo 日本マイクロソフト コマーシャルソフトウェアエンジニアリング本部 Principal Software Development Engineerの畠山大有氏

 日本マイクロソフト コマーシャルソフトウェアエンジニアリング本部 Principal Software Development Engineerの畠山大有氏は「現在のデジタルトランスフォーメーションの動きはハードウェア、ソフトウェア、コンテンツの3つがそろって価値を生み出す」と述べる。これらのコンテンツとなる源泉がデータであり、データを活用する技術としてAIが盛り上がりを見せている。

 さらに、AIが一気に活用できるフェーズになったのには「コンピューティングパワーが上がりクラウド環境が出てきた点」「IoTなどで多くのデータが収集できるようになった点」「ニューラルネットワークの進化」の3つがあるとし「劇的に進化している」(畠山氏)としている。これらの環境は一部の研究機関だけではなく、既に一般でも使用できる形でコグニティブサービスとして提供している。畠山氏は「AIは万能ではないがデータの活用においては非常に便利な存在だ。『何を大量に自動処理したいのか』を考え、そこにAIが活用できないか考えることが重要だ」とAI活用について述べている。

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