特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

イノベーターをビジネスにどう生かすのか、求められる「出口」の戦略イノベーションのレシピ(1/2 ページ)

日本IBMは製造業向けイベント「IBM Industrial Forum 京都 2018」を開催。同社の製造業向けの取り組みを紹介するとともに、製造業が先進技術を活用してイノベーションを実現した事例などを紹介した。

» 2018年02月23日 11時00分 公開
[長町基MONOist]

 日本IBMは2018年2月15〜16日、京都市内で製造業向けイベント「IBM Industrial Forum 京都 2018」(京都フォーラム)を開催。「デジタル時代の製造業のモノづくり革新」をテーマに、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ロボットを使った企業変革の事例を紹介した。本稿では、日本IBMによる講演と「デジタル時代のイノベーター(革新者)の生かし方」をテーマとしたエグゼクティブディスカッションの内容を紹介する。

デジタル時代の製造業に求められる3つの変革

 初日の講演では、日本IBM 取締役専務執行役員 GBS事業本部本部長の山口明夫氏が登壇し、京都フォーラム全体テーマでもある「デジタル時代の製造業のモノづくり革新」をテーマに、製造業の変革とそれを支える基盤などについて語った。

photo 日本IBM 取締役専務執行役員 GBS事業本部本部長の山口明夫氏

 山口氏はまずデジタル技術の近年の大幅な進化について紹介。ネットワークにつながるデバイスの数は年々大幅に増加しており、2014年には100億個となり世界の人口を上回った。その背景にはクラウド、モバイル、IoTの普及がある。最近はAI、ブロックチェーン、自動化、5G、量子コンピュータが注目され、データの量も拡大。2020年には44ゼタバイトのデータが、世の中に氾濫すると予想されている。

 こうしたテクノロジーの進化を背景に産業やビジネスも大きく変化しようとしている。第4次産業革命といわれる新たな潮流が世界の主要国で生まれている。ドイツが推進する「インダストリー4.0」は生産拠点としての競争力確保を目指し、工場、サプライチェーンの自動化などを進めている。米国の主要企業が提唱する「インダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)」はインダストリアルインターネット(産業用インターネット)を活用した、革新的な新事業やサービスの創出に力を注ぎ、ビジネス化を支援する仕掛けを提供している。日本でも「Connected Industries」というコンセプトを打ち出し、産業の効率化と新たな付加サービスの創出に取り組んでいる※)

※)関連記事:日本が描く産業の未来像「Connected Industries」、世界に発信へ

 日本IBMでは、こうしたデジタル時代の製造業に求められる変革を「顧客体験の変革」「製品・サービスの変革」「ビジネスプロセスの変革」と定義。山口氏は「デジタル変革の動きは、ハードウェアに対して、ソフトウェアの比重が高くなる。その結果として、さまざまなデータをタイムリーに取ることができ、かつ、プラットフォームに集約できるようになった。そのため顧客の要望をより早く、正確に理解できるようになり、それを企業としての強みとできるようになる。それをいち早く、製造に反映させて、新しい製品やサービスに提供させられるようになる。日本IBMではこうした一連の動きをContinuous Engineeringと呼んでおり、今後こうした世界がさらに加速する」と述べた。

 「顧客体験の変革」および「製品・サービスの変革」の例としては、自動車の事例を示した。自動車を運転する場合、以前だとガソリンが少なくなれば、ガソリンスタンドを探して、給油した後、カードで支払うという流れだった。これが今ではガソリンが少なくなると、自動的にそれを教え、渋滞を避けてガソリンスタンドの最適ルートを指し示す。決済も車内のボードで簡単にできるという新たな世界が実現できつつある。つまり、ドライバーの状態、外部環境の状況に応じて移動時のパーソナライズされたコンテンツやサービスが提供されるということになる。

 車のシェアリングにブロックチェーンを使い、マイクロペイメントなども実現できるようになってきた。カーシェアリングや保険、充電、駐車料金支払いなど「ブロックチェーンテクノロジーを活用した新しいサービスが脚光を浴びている」(山口氏)という。

 「ビジネスプロセスの変革」では、数値データを活用した装置のダウンタイム予測などがある。これはセンサーデータと機械学習モデルを活用し、予定外のダウンタイム削減や、設備メンテナンスアドバイザーを活用したメンテナンス指示などを行うものだ。また、画像データや音響データを活用した品質検査などにも変革が起こっている。

変革を支える3つのアーキテクチャ

 日本IBMでは、こうした3つの変革を支えるものとして「ビジネス」「アプリケーション」「AI」「データ」「プラットフォーム」の5層で構成されたアーキテクチャを紹介する。これらの各層に対して日本IBMではさまざまなソリューションを提供する。

 「ビジネス」に対しては顧客とともに「デジタル戦略策定」集中的に実施する。その際にはデザイン思考で進めるために「エクスペリエンスデザイン」の技術を提供している。さらに、短期(1〜2日)で作り上げるプロトタイプのアプリケーション「Garage」「SaaS、BPaaS」の提案も行っている。

 「アプリケーション」に関しては「基幹システムアプリケーション開発」「クラウドアプリケーション開発」「S4/HANA」などで支援する。「AI」ではIBM Watsonを中核とするコグニティブ・ソリューションによりサポートする。「データ」は「データ・プラットフォーム構築」を用い、「プラットフォーム」に関しては「ハイブリッド・マルチクラウド基盤構築」により、クラウドベンダー全体の環境を効率よく運用して、管理するサービスを提供している。

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