特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2018年02月28日 10時00分 公開

IoT観測所(42):環境発電向け技術「EnOcean」のLPWA化は何をもたらすのか (1/3)

環境発電(エネルギーハーベスティング)の分野で知られる技術「EnOcean」だが、新たな規格の策定によってLPWAネットワークとしても利用可能になっている。今後の展開によっては、環境発電によるIoTをより広範囲に適用できるかもしれない。

[大原雄介,MONOist]

 今回ご紹介する「EnOcean」は、一応分類としてはLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークに属する通信方式ということになるのだろうが、実態としては通信方式というよりはエコシステムというか、インフラに近い。EnOceanが実現するのは、バッテリーレスの短距離無線ネットワークである。過去にもいくつか記事として取り上げられたこともあるから※1)、※2)、※3)、既にご存じの読者もおられるかと思う。

※1)関連記事:環境発電で照明を制御、電源と配線が不要な「EnOceanスイッチ」

※2)関連記事:電池いらず、環境発電EnOceanが農業のIT化を支える

※3)関連記事:住宅をIoTでスマートハウスに、電力の使用状況を無線で収集・管理

 EnOceanは2001年にドイツで創業されたベンチャーである。母体はドイツのシーメンス(Siemens)であり、EnOceanのコア技術はシーメンスの中央研究所で開発されたものだ。ただ同社自身ではその研究成果を利用する見込みが薄いということで、外部にこれを切り出してビジネスとしたものである。

 EnOceanの主な特徴は2つある。実用レベルとなる環境発電(エネルギーハーベスティング)技術と、これを利用した「超低消費電力」と「超高効率」の無線通信技術である。

 まず前者に関しては、EnOcean自身は電力源としてモーション(Motion)/光(Light)/温度(Temperature)の3つを挙げている。モーションは動きであり、EnOceanは直線運動を利用して発電を行う「ECO 200」というモジュールを提供している。このモジュールはスイッチなどに組み込むことで、「スイッチを押す」という動作で発電を行える。1回の押下に必要な力は2.7〜3.9Nで、これにより120〜270μJ(2V出力時)の出力が得られる。これがちょうど1回分の送信に必要なエネルギーになっている。同様に光では、13mm×35mmの太陽光セルを利用し、屋内の200lx(ルクス)の照度の環境があれば15分ごとに定期的な送信ができるとする。最後の温度だが、これは温度差を利用した発電方式である。同社の「ET 310」というDC-DCコンバーターを使うと、2℃の温度差で3Vの生成が可能であり、7℃の温度差があれば100μW程度の電力を生成できるとする。

 一方、後者の「超高効率」については、環境発電で得られる電力との関係もあって利用可能な電力量は1mW・secに満たない。この電力量で、実用的な距離(屋内で最大10m、屋外の見通し距離で300m)の通信を可能にしたのが同社の通信技術である。基本的な仕組みは以下の通りだ。

  • ISMバンドを利用:欧州向けは868MHz、米国向けは315MHzと902MHz、日本向けは928MHz(315MHzも利用可)の周波数帯域を利用
  • 1回の通信で最大14バイト(VLD telegrams)を送信できる。短いもの(1BS telegram)は、1回あたり1バイトのペイロードのみ(他に4バイトの4BS telegramもある)。その代わり1回の通信はおおむね1ms以内に完了する。信号の変調方式はASKまたはFSKを利用
  • 通信は片方向と両方向のどちらもサポート。ちなみに通信方式はP2P(メッシュではない)だが、リピーターを利用して到達距離を伸ばすこともできる
  • 確実な到達を担保するため、送信は複数回(最低3回)を一定期間(25ms)の間にランダムに繰り返す
  • 通信の傍受あるいは成りすましなどを防ぐため、最大24ビット長のRC(Rolling Code)とAES-128による暗号化がサポートされる
  • 全てのEnOceanデバイスは32ビットのユニークなIDを持ち、これで製品を識別することができる。このうちの24ビットはネットワークアドレスとして使われており、1万台を超えるノードを扱うことも可能である
  • 無線通信の規格そのものはISO/IEC:14543-3-10として標準化されており、誰でも利用可能となっている
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