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» 2018年03月01日 12時00分 公開

製造業IoT:IoTミシン、外観検査、自走する大画面――豊田の製造業とベンチャーがタッグを組むプロジェクト (1/3)

豊田市のモノづくり企業とベンチャーによる共同開発プロジェクトの成果発表が行われた。工業用ミシンのIoT化や低コストの外観検査システム、ロボットディスプレイの開発結果が発表された。

[加藤まどみ,MONOist]

 豊田市の「製造業とベンチャー企業とのマッチング事業」の成果発表会「DemoDay」が、2018年2月2日に「ものづくり創造拠点SENTAN」(愛知県豊田市)で行われた。この事業は、豊田市ととよたイノベーションセンターおよび豊田市から委託を受けた三菱UFJリサーチ&コンサルティングが一体となって実施したものだ。

 同事業は2017年6月にスタート。豊田市内の製造業者と全国のベンチャー企業を公募し、それぞれの企業同士をマッチングして連携プロジェクトを結成。その中から豊田市が「IoT」「AI」「ロボット」それぞれのテーマごとにプロジェクトを採択し、ものづくり創造拠点SENTANを活用しながら、プロジェクトごとに開発が進められてきた。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 経済政策部 研究員の北洋祐氏

 この事業の狙いは、市内製造業の新展開のきっかけにするとともに、全国のモノづくりベンチャーに豊田市の企業について知ってもらい、市への誘致を促すことだという。

 「最近、社外と連携してオープンイノベーションに取り組む企業が増えている。経営者に課題をたずねると必ず返ってくるのが、『事業変化が早くなり、自前開発では間に合わなくなっている』ということ」と三菱UFJリサーチ&コンサルティング 経済政策部 研究員の北洋祐氏はいう。

 そこで考えられるのが、スピードと行動力を併せ持つベンチャーとタッグを組むことだ。一方ベンチャーにとっては、ソフトウェアよりもハードウェアに取り組む方が難易度が高いといわれる。「今回はお互いが組むことでよい相乗効果が得られた。これらの成果を核に、さらなる事業展開も可能だと考える」(北氏)。

工業用ミシンをIoT化

 工業用ミシンのIoT化に取り組んだのは、豊田市のトヨタケ工業と東京のベンチャー企業であるロビットだ。

トヨタケ工業 代表取締役社長の横田幸史朗氏

 トヨタケ工業は、自動車のシートなどの製造を行っている。自動車のシートは素材を細かいパーツに裁断して立体的に縫い合わせることによって製作される。柔軟な素材で形状も複雑なため、そのほとんどは工業用ミシンを使い人の手によって縫製されている。

 同社の課題は、将来の人員を計画的に確保していくこと、そして多品種少量生産が増えていく中、限られた人員で対応できるようにすることだという。そのためにIoTを活用してデータを集約、分析する必要性を感じていた。

ロビット 最高経営責任者の高橋勇貴氏

 一方のロビットは、コンシューマー向けスマート家電などを提供する、2014年設立のモノづくりベンチャーだ。ベンチャー企業はプロトタイプの製作を外注するところが多いが、同社はハード、ソフト共に社内で手掛けられるのが強みだ。ヒット商品の1つが時間になると自動で開閉する目覚しカーテン「mornin'」だ。1年前の販売開始以来、3万5千台を販売しているという。

 同社は「国内の町工場の協力によって製品を生み出してきた。その中で、業務効率に関する悩みをよく耳にするようになり、何かできないかと思いこのプロジェクトに取り組んだ」(Robit 最高経営責任者の高橋勇貴氏)という。

制御盤に接続するだけでOK

 トヨタケ工業の使用する工業用ミシンは、そのままだとネットワークとつながっていない。ロビットと検討した結果、ミシンに個人のIDを読み込むリーダー、センシングユニット、テンキーのセットを追加し、クラウドにデータを蓄積、解析して可視化したデータをPCやスマホで閲覧できるシステムとした。手のひら大のユニット1つをミシンの制御盤に接続するだけでよい。現場を離れていても状況を把握することが可能だ。

工業用ミシンとIoTシステム。制御盤にセンシングユニットを接続する。足元に並ぶアクセル、糸切り、押さえのペダル操作などのデータが収集される。不良発生時にはテンキーでその種類を入力する。

 開発したシステムをミシン10台に試験導入した。その結果、スタッフの生産性や能力を可視化することができたという。例えば熟練スタッフによる作業の安定度や、付帯作業によりどの程度効率が悪くなるかなどが分かるようになった。

 トヨタケ工業 代表取締役 社長の横田幸史朗氏は、「長年やりたいことではあったが、これまでは進めることができずにいた。今回よかったことは、スマホや無線LANなどなじみのある要素で構成できたことだ。ロビットにはスピード感もあった」と語った。

 現状はデータ分析に、ある程度の知識が必要になることが課題だという。今は作業者にデータの意味を説明する人が必要となっている。専門的な知識がなくても、作業者が直接、必要な情報を効率良く得られるような見せ方を検討したいという。

 また、何本もの工程が並行して進められ、最終的に1つの製品に集約されるような作業があるが、各工程に時間差が発生すると作業中の山ができることになる。この解決に開発したシステムを活用して取り組みたいという。

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