「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像
インタビュー
» 2018年04月04日 06時00分 公開

つながるクルマ キーマンインタビュー:トヨタはモビリティサービスでどう稼ぐか、何を競争力にするか (2/3)

[齊藤由希,MONOist]

サービスでおカネをどうもらう?

MONOist モビリティサービス・プラットフォームとはどういうものでしょうか。

山本氏 一言でいえば、トヨタにとって将来のビジネスモデルの1つだ。新車販売は新興国では伸びるものの、先進国では頭打ちになるといわれている。また、電動化や自動運転技術が普及し、シェアリングの行動様式が広がっていく中で、どのようにビジネスを展開するかが課題になっていた。

 DCMから得た車両の情報をビッグデータとして活用し、新しいサービスを生んでいくというのが1つの答えで、モビリティカンパニーになるための方法論がモビリティサービス・プラットフォームだ。モビリティに関するビッグデータと、サービスに活用できるツールをトヨタが持ち、それを各種サービスの事業者に使ってもらい、サービス料をいただく。

モビリティサービス・プラットフォームの概要(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

MONOist コトづくりと値付けに対してどのように考えていますか。サービス事業者や最終ユーザーからどういった内訳でおカネをもらうのでしょうか。

山本氏 価格の付け方は、実証実験の中でも検証している。例えば、あるシェアリングサービスを10分200円とする。回転率とユーザー数でサービスの収入が、システム開発投資、人件費、固定費……と考えた上で価格のモデルが決まる。プラットフォームをこの額でいかがですかと提案するためにそういう検証が必要だ。無償の実証実験にはあまり意味がない。

 実証実験は、機能やプロセスを確かめるだけでなく、有償でどれくらいのお客さんに価値を認めてもらえるか、どれくらいの料金であれば持続的に事業ができるかトライするという意義もある。ノウハウを蓄積し、トヨタとして「こういうサービスはこうした方がいい」と提案できるようにしないと商売にならない。

MONOist コネクテッドカーからデータを取り続けるためにもコストが発生します。どのように負担していきますか。

山本氏 お客さまに通信費を払ってでも使いたいと思ってもらえる場合もあれば、必要なデータの規模のためにトヨタでコストを持つ部分もあるかもしれない。広告ビジネスは考えにくい。ディスプレイオーディオに広告を流したり、AIアシスタントが何か読み上げたりといった形態では嫌がられるだろう。

プラットフォームの提案力を磨く

MONOist カーシェアリングやタクシーの配車など、さまざまな協業の中でモビリティサービス・プラットフォームを活用しています。その狙いを教えてください。

山本氏 プラットフォームがさまざまなサービスに対応できないと、対価をもらうだけの価値を持たせられない。効率よく配車する技術や、カメラの映像からリアルタイムな状況を把握する技術と、スマートフォンで車両のドアの開閉を可能にする「スマートキーボックス(SKB)」のようなツールがあって、「これらを組み合わせるとビジネスにこう役立つ」と提案できるプラットフォームでなくてはならない。

 現在はツールのバリエーションや、データの量と質をそろえることに取り組んでいる。データの量や種類は、サービスによって意味のある規模が変わってくる。DCMは日米で400万〜500万台を普及させる目標だが、画像も含めればデータ量は膨大になる。コネクテッドカーはクルマ本体だけでなく、集めたデータをハンドリングするところまで含めて「商品」になるだろう。

MONOist トヨタ自動車はサービスにどこまで関与しますか。

「やってみないと分からないこと」をモビリティサービス・プラットフォームに反映させていくと語る山本氏

山本氏 B2Cで消費者と対面するサービス事業者と、トヨタの役割は違う。トヨタはDCMを普及させ、ツールを開発し、モビリティサービスプラットフォームを整備する。地域のニーズやお客さんの需要を理解しているサービス事業者が、トヨタのプラットフォームを使ってモビリティサービスを展開する。トヨタがB2Cのお客さまに接するところまではやらない。

 とはいえ、自分たちで実証実験をやってみないとコトづくりはできない。ハワイやサンフランシスコで現地のパートナーと協力して実施しているカーシェアリングもその例だ。ノウハウを蓄積し、モビリティサービス・プラットフォームに反映していく。どんな時にどのように使われるか、機能にどのような改善点があるか、予約のキャンセルなどサービスのルールをどう作ると使い勝手が良いかなど、実際にやってみないと分からない。

MONOist レンタカー会社とリース会社を統合した新会社「トヨタモビリティサービス」が2018年4月に発足します。狙いは何でしょうか。

山本氏 これから具体的に動き出すところだが、コネクテッドカーによってリースやレンタカーはさまざまなことができるようになる。例えば、SKBを使って物理的なカギの貸し借りなしに複数のユーザーが1台のクルマを使えるようにする。誰がどのように使ったかも把握できる。コネクテッドカーで何ができるか、具体的に考えていくための新会社だ。

MONOist 500万台分のビッグデータが得られれば十分な規模でしょうか。

山本氏 クルマの種類もバリエーションが必要だ。通行実績情報を基にした「通れた道マップ」を例にしても、乗用車が通れただけなのか、トラックも通れるのかということがポイントになる。商用車に関しては日野自動車も仲間なので、トラックのつながるデータが入ってくれば種類が充実する。

 データについて、どれだけのボリュームや種類が必要になるかというのはサービス次第だ。どうすればお客さまや社会に付加価値を提供できるかによって変わってくる。必要とされるサービスを探るのと、データの量と質の充実を、並行して進めなければならない。ここが差別化領域になる。いろいろなやり方を試して、どんな付加価値が出せるか探っていく。

 モノづくりであれば、どれだけのボリュームか、何をどれだけ用意するかを決めて進めることができる。しかし、コトづくりは他業種とアライアンスを組みながら、ノウハウやアイデアを素早く取り込んでいく必要がある。異業種との関わりを増やすことがコネクティッドカンパニーの役割だ。クルマのバリューチェーン以外のところでサービスを作るのは、われわれだけではできない。

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