特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2018年04月13日 11時00分 公開

スマート工場最前線:スマート工場化で起こり得る課題、カシオがタイ工場で得たもの(後編) (3/4)

[三島一孝,MONOist]

「部品の問題」「マシンの問題」「設計の問題」への切り分け

 「H28ライン」の本番運用に向けて、テストランと先行生産を繰り返して、量産化に向けた問題点の洗い出しに取り組んだが「当初は本当に量産ラインで活用できる時が来るのかと自信をなくすような状況だった」と臺場氏は振り返る。

 自動化領域を増やせば、人手による生産と異なり、教育によって徐々に精度を高めていくということができない。初期で発生していた不良や精度不足は悪化はするが良くはならない。そのために、1つ1つの工程での信頼性を高めることが条件となり、そこを高めることが重要になる。「量産ラインの歩留まりを安定して上げるには、小さなばらつきや不安定要素などを取り除く必要がある。小さな誤差でも積み重なれば大きな差になり、ラインの停止につながるからだ。工場稼働の全体的な効率としての観点でも工場側でなければ気付かない発想も多い」と語る。

 こうして気付いたさまざまな問題をQCDミーティングを重ね「部品の問題」「マシンの問題」「設計の問題」に明確化し、期日や部門を決めて対策を実施。徐々に生産ラインの質を上げていったという。

 例えば、「ボタンの裏に置くラバーキーを装着する」工程では、自動化によりラバーキーのセットマシンを活用。しかし、試験段階では問題ないものも大量に生産を行っていると、複数のラバーキー同士が張り付いて複数をセットしてしまう問題が発生。これは「部品の問題」「設計の問題」「マシンの問題」全てが関連する問題だったが、最も効率の良い対策として、ラバーキーを搭載前にエアーブローし、張り付きそのものを予防。さらに、自動化マシンにエアーブロー機能を付加し、ラバーキーの搭載前にエアーで浮かせることで隙間を作り、1枚ずつミスなく搭載できるようにしたという。

photo ラバーキーの設置工程。赤丸部のエアーで1枚1枚を浮かせることでミスなくピックアップできるようにしている(クリックで拡大)

 また、「ケースのビス締め」工程では、3台の自動ねじ締め機を導入し効率化を進めている。関数電卓では6カ所のねじ締め箇所があるが、3台で2カ所ずつ締めるという作業分担をし、全体的な生産スピードを維持していた。しかし、ねじ締め機は「マシンの問題」「部品の問題」などでトラブルが起こりやすい工程の1つだ。

photo 自動ねじ締めの様子(クリックで拡大)

 これらの課題は順次つぶしていくことになるが、トラブルが発生するたびに生産ラインのモノの流れそのものがストップする。従来はライン復旧までに数時間かかるケースも多く非常にロスが大きかった。そこで、1台がトラブルで止まってもプログラム変更で2台で3カ所ずつ締めるようにし、ライン停止なしで稼働を続けられるようにした。

 トラブル時は操作パネルからトラブル対応プログラムを選択するだけですぐにプログラム変更が可能となる。臺場氏は「実際の量産工場ではトラブルは必ず起こるもので、全てが計画通りに動くわけではない。そういう場合でも最適な効率を生み出す準備が必要になる」と述べている。

photo 3台の自動ねじ締め機。トラブル発生時はすぐに2台でも稼働できるようにプログラムを用意している(クリックで拡大)

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