「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

MaaSは鉄道など公共交通や都市計画にどのような影響を及ぼすか和田憲一郎の電動化新時代!(27)(2/5 ページ)

» 2018年04月23日 06時00分 公開

JR東日本が考えるMaaS

和田氏 ではJR東日本としてMaaSについては、どのように考えているのか。

中川氏 これまでは駅から駅までお客さまを安全にお運びすれば良いと考えていた。しかし昨今の情勢から、もう少し大きな範囲、つまりモビリティという概念で見なくてはいけないのではと思っている。

日高氏 これまで鉄道は駅から駅までだったので、Door to Doorのために足りないのは出発地から駅までと、駅を降りた後の目的地までのラスト1マイルだ。JR東日本グループではバス会社も所有しているが、やはり他の私鉄、バス、タクシーなど異なる事業体とも連携が必要となる。これらが連携することで、お客さまにとって一貫したサービスや、利便性の高いサービスが提供できないかと考えた。

 概念として振り返ると、2013年頃には公共交通の連携という名前だったが、昨今は海外でMaaSという、もう少し分かりやすいコンセプトワードが出てきた。われわれも欧州や米国ではどうやっているのかを調べながら、日本の中ではどのように進めていけば良いのかを、研究所として着目している。

図表2:Door to Door(クリックして拡大) 出典:JR東日本

和田氏 これはJR東日本の研究所だけの活動なのか、それとも総合企画本部も連携しての活動なのか。

中川氏 総合企画本部と研究所とは連携している。MaaSという言葉が生まれる前から着目して、情報による連携ができないかを研究してきた。

和田氏 自動車メーカーもサービスエリアに業務を拡大しようとしており、鉄道会社もMaaSでエリアを拡大しようとすれば、いろいろなところで輪が重なるところが出てくるように思える。これについてはどうか。

中川氏 今のところ、コンソーシアムでは連携を中心にやっていこうと思っているが、鉄道に限定しているのではない。例えば、東北の気仙沼線・大船渡線ではBRT(バス高速輸送システム)を採用している。このようにモビリティ全体をどうするかと、原点に立ち返って考えないといけない時代になっている。われわれは鉄道や駅という巨大なアセットがあることから、これを活用しながらJR東日本としてのMaaSを実現したいと思っている。

山口氏 先ほど、いろいろな企業が広がり重なっていくとの話があったが、むしろ連携していく方向性が強まるのではと思っている。お客さまにとっては広がるかもしれないが、われわれは鉄道事業を中心としてやっていきたい。そこにDoor to Door実現のために、駅というアセットと、自動運転車やバスなどとの連携があるのではと思っている。

和田氏 鉄道といっても、他のJRもあれば、メトロのような地下鉄もある。またカーシェアリングやタクシーなどもある。どこまでをカバーしたイメージを持たれているのか。

中川氏 例として挙げると交通系ICカードの「Suica」がある。われわれが最初に導入させていただいたが、現在は他の鉄道会社、さらにはバス、タクシーなど活用エリアが広がっている。そのように決済系はSuicaのようなICカードで連携ができている。今回のMaaSについても、気がついたらいろんな場所で使えるという状況が良いのではないか。

 MaaSも最初はJR東日本の一部エリアから展開していくかもしれないが、それが便利であると賛同していただければどんどん広がっていくと考えられる。MaaSは1つになるというより、いろいろなMaaSが存在し、それが連携して、最終的にはお客さまにとって使いやすいようになればと思っている。コンソーシアムにはJR西日本や東京メトロの方にもご参加いただいている。

日高氏 欧州におけるMaaSのアプリは、お客さまの利便性向上を目指している。さまざまなサービスの情報をつなげるだけであれば、ハードルはそれほど高くない。しかし、これで終わるのではなく、欧州はお客さまとの接点を持つことにより、どこからどこまで行こうとしたのかなどが分かると、ここに新しい線路や駅を作ろうなど、都市計画にまで及ぶこととなる。つまり鉄道だけの最適化ではなく、公共交通の最適化を行い、社会課題の解決を狙っているのではないだろうか。

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