特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

60台のロボットが自由に行きかうスマート倉庫、21万点の製品から自動ピッキング物流のスマート化(2/2 ページ)

» 2018年05月07日 07時00分 公開
[長島清香MONOist]
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60台のロボットと10台のポート、1万6000ビン以上の保管能力

 「AutoStore」は、「ビン」と呼ばれる専用のコンテナを高密度に格納し、ロボットが入出庫を行う自動倉庫型のピッキングシステムである。約1100m2の敷地内には1万6000個以上ものコンテナが収納可能で、60台のロボットを10台のポートで管理する。ボストン・サイエンティフィックジャパンの基幹システムと、スイスログの倉庫管理システム「SynQ」の制御によって約21万点の製品を保管し、1日1万4000件以上にも及ぶ製品出荷に対応する。「システム導入の結果として、在庫保管能力が35%向上した例もある」(三浦氏)という。

 ポートでは、バーコードのスキャンやタッチパネルなどでの簡単な操作で製品の格納や出荷準備ができる。製品ごとの使用期限管理も自動化しており効率的な在庫管理ができる他、棚卸しの際には不良品の検査なども行える。

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photophoto バーコードのスキャンとタッチパネル操作がメインとなるポート(左上)赤丸部分などの10台のポートで製品の格納や出荷、在庫管理などを行う(右上)製品やコンテナの情報はバーコードで管理(左下)、ポートからの指示を受けると、ロボットがレールに沿って走行する(右下)(クリックで拡大)

 敷地内にはコンテナが10段ごとに積み上げられ、60台のロボットがレールに沿って走行する。ロボットは時速10kmで移動し、21時間連続駆動が可能だ。出荷の際はロボットがコンテナを取り出し、ポートまで運ぶ。作業者はピックアップされた商品に間違いがないかをチェックし、箱詰めするだけだ。過去のデータから注文が多い商品などは上部に配置するなどし、取り出しの時間を短縮する。

photo 導入された「Autostore」の全体イメージ(クリックで拡大)

前工程や後工程の自動化も視野に

 「Autostore」は2018年5月1日から本格稼働を開始。三浦氏は「70年という節目の年を迎え、今後は100年継続する会社にしていくために、積極的にIT投資をしていく。AutoStoreは海外のスタンダートを知る良いきっかけになった」と振り返る。今後については「今回はピッキング部分のみの自動化だが、前工程や後工程の自動化も検討する」と抱負を述べている。

筆者紹介

長島清香(ながしま さやか)

編集者として地域情報誌やIT系Webメディアを手掛けたのち、シンガポールにてビジネス系情報誌の編集者として経験を重ねる。現在はフリーライターとして、モノづくり系情報サイトをはじめ、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。


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