「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

ラストワンマイルの移動を支えるバスとタクシー、「時代遅れ」から脱却するにはTDBC Forum 2018(1/2 ページ)

運輸業界のデジタルテクノロジー活用を推進する運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)は、「TDBC Forum 2018」を開催。特別講演では、“地域公共交通プロデューサー”として旧弊な交通事業・サービスの革新と公共交通の育成に取り組む名古屋大学大学院 環境学研究科 教授の加藤博和氏が登壇した。

» 2018年06月01日 06時00分 公開
[長町基MONOist]

 運輸業界のデジタルテクノロジー活用を推進する運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)は、「TDBC Forum 2018」(2018年4月25日、ベルサール秋葉原)を開催した。同イベントは、旅客・物流企業とIT関連企業が業界の枠を超えて課題や取り組みを共有するための活動の一環だ。

名古屋大学大学院の加藤博和氏

 特別講演では、“地域公共交通プロデューサー”として旧弊な交通事業・サービスの革新と公共交通の育成に取り組む名古屋大学大学院 環境学研究科 教授の加藤博和氏が登壇。「Mobility-as-a-Service(MaaS) リアルな交流をより楽しくするために−いまこそ頭をほぐし、舵を切れ!−」をテーマに国内の公共交通事業の現状と改善への取り組みを語った。

時代遅れのバス、タクシー

 「公共交通は危険な状況にある」と加藤氏は指摘する。利用者の減少は底を打ち、高齢者の運転免許返納や若年者の免許保有率の低下などにより、公共交通の必要性が低下したわけではないが、運転手など人手不足に関しては「手の打ちようがない」という。

 地方部は人口減少が課題となる一方で、都市部では超高齢化により交通のニーズが質・量ともに大きく変化している。こうした状況への対応が迫られている中、自動運転やシェアリングエコノミーという“未知との遭遇”が加わることで、今後の公共交通はより厳しい状況に置かれると加藤氏は予想する。

 タクシーやバスといった公共交通事業者の姿勢について、加藤氏は強く問題視している。「タクシー事業者は総じて時代から遅れていて、追い付こうという意思もない。多くの事業者が個人商店のレベルから脱却できておらず、データ経営に移れない状態だ。また、インターネットからの予約に対応できていないケースも多い」(加藤氏)という。タクシー待機のない駅が増え、どの駅にタクシーがいるか調べることが困難な場合もあると指摘した。

 バスについては、「お客さまを待たせることを当然と思っている」「遅れるのは仕方ないとしても、お断りやおわびがあまりない」「従業員の方が偉そうにしている」など10年以上前に指摘された内容が「いまだに新鮮に感じられる業界」(加藤氏)と辛らつだ。バス停も情報量が少なく、「路線図があればいい方。案内表示を作るような人手の余裕がないのが現状だ」(加藤氏)。

 公共交通の危機的状況の背景の1つには、「利用者は、不便だし、交通事業者に何かを言っても変わらないからクルマを使う一方、事業者は利用が少なくては経営できないし、便利にしても乗ってくれないと思う負のスパイラル」(加藤氏)がある。

 この解決策として、加藤氏は「ITによるコミュニケーション」と「地域コミュニティー」の2つを挙げた。ITによるコミュニケーションは、マップ作りなどで公共交通の存在に気付いてもらうための「見える化」、利便性をアピールする「魅せる化」、新たなニーズを創出するための「見直す化」の3段階で改善を進める。

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