「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像
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» 2018年06月08日 06時00分 公開

和田憲一郎の電動化新時代!(28):MaaSを深掘り、新しい街づくりを起点にモビリティと都市交通の在り方を考える (3/4)

[和田憲一郎(日本電動化研究所 代表取締役),MONOist]

建築と土木の違い、縦割りの街づくり

 次に、建築家で都市問題・街づくりにも詳しい、SUEP.代表取締役の末光弘和氏にお話を伺った。

和田氏 モビリティにはクルマ、電車、バスなどいろいろあるが、建築家の目から見て、街づくりとのかかわりではどのような課題があるのか。

末光氏 昔は、建築家は街づくりからモノづくりまで手掛けている横断的な存在だった。例えば丹下健三さんは建築家でありながら、都市計画まで関わっていた。ただ、最近の例で言えば、東日本大震災直後に、建築家は復興の街づくりに参加させてもらえなかった。建築家は敷地の中を対象とした仕事であり、敷地の外は土木の仕事であるとされ、関わることができなかった。新しい街をどう描くかという時に活躍したのは土木コンサルティングであった。

 土木が区画整理事業をやり、道を引いて敷地を割っていった後、敷地の中で建物を建てるだけが建築家の仕事となった。私の例で言えば、仙台の南に位置する亘理郡山元町に小学校を建てた。海側の街が津波で流されたので、少し内陸部に移転し、土を3m盛ってその上に街ごと作ることとなった。常磐線の路線も引き直して、目抜き通りを作り、そこに住宅地と教育など公共の施設を作った。

 私としては、せっかく作るのであれば、駅から連ねて緑道を作り、施設作りも巻き込んで作ろうと提案した。しかし、敷地を横断することになり、提案したものの賛同していただけなかった。また、小学校の隣の敷地に、子育て施設と保育園を一緒に建てることとなった。せっかく一緒に建てるのだから両方をつなぐ緑道を作ろうとしたが、小学校は文部科学省系で教育委員会が、保育園などは厚生労働省管轄の福祉系で担うこととなり、そんなことすら難しかった。ある意味、縦割り社会の典型的な出来事であった。

 モビリティと街の話に戻すと、自動車と家の関係も敷地の外と内ということで、ものすごいハードルがある。道路1つとっても、道路と私有地や歩道の境界が非常に難しい。しかし、モビリティというのは基本的に動くものなので、要は横断していかなければならない。新しいモビリティを街づくりとともに考える時、道路にはEVがあり、そこから自転車に乗り換えたり、徒歩になったりするのではなく、EVがシームレスに家まで連れて行ってくれなくてはならない。しかし、現実には縦割り社会の壁があり、今後これを乗り越えることが一番大きい問題ではないのか。

モビリティを走らせる場所から街を考える

建築家の末光弘和氏(クリックして拡大)

和田氏 今のお話は分かったが、ではモビリティから見たとき、街づくりの対案もしくは計画案はどう考えるのか。

末光氏 実は今、パナソニックと一緒に街づくりを考えている。パナソニックの街づくりの最初の試みは湘南で行った。背景でいえば、もともと大手の企業は国内に多くの工場用地を持っていたが、アウトソーシングしたり、工場を海外に移設したりして、だんだん工場がいらなくなってきた。湘南の例も、もともと工場だった約19haの土地に、自ら、インフラと街づくりを行った。

 しかし、ことモビリティに関しては、道路を引き込み、道路交通法の中での道路にせざるを得なかった。つまり公道としてクルマを走らせるためには外部のメガインフラと接続しなければならず、消防車も入らなければいけないということで、結局公道にしなければならかった。公道になると道路交通法が関わってくるので、結局モビリティに関しては、規制の中での試みしかできなかった。

 しかし、私が今提案しているのは、私有地のまま街にしてはどうかという案である。そうすると、巨大な庭を走っているようなもので、その中には実験できるエリアができると考えた。つまり境界などなくした街ができるのではないかと。そうなると初めていろいろなことが横断的に起き出す。街とモビリティの関係とか、モビリティ自体のサービスの在り方などもできてくるのではないか。

 そして、私有地としてスタートし、そこで実験したものをちょっとずつ実際の街に広げていくことが良いのではないかと考えている。その根本にあるのは、先ほど説明した縦割りの弊害があり、特区であれば、そのような役割を果たせることができるように思われる。

 これをパナソニックと一緒に考えたのが「次世代ローカルコミュニティーモデル」というアイデアである。このアイデアは、私有地を緑道として活用した。現在の都市における道路比率は約20%あるが、今回のアイデアでは約8%に留めている。そのため、浮いた部分で緑地や公園を作ることができる。また街全体としては住居も大きくできる。

 さらに自動運転車がゆっくり走り、例えばキッチンカー、郵便局、荷物、買い物カーのようにモビリティがインフラを運んでくるというコンセプトも考えた。なお、救急車や消防車などはギリギリ奥まで入ってこれるように配慮している。

次世代ローカルコミュニティー(クリックして拡大) 出典:末光氏、パナソニック
道路の比率を減らしながら、土地の使い方を変える。自動運転車を走らせてインフラが運ばれてくる仕組みも(クリックして拡大) 出典:末光氏、パナソニック

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